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災害医療支援
ジャパンハートは、国際医療NGOとして、大規模災害の緊急事態下においても医療を届けてきました。より被災地に求められる医療チームになるために、「国際緊急救援(iER)」として、国内外の被災地に駆けつけられるよう準備を進めています。その特徴は4点です。
亜急性期以降を中心とした医療支援
私たちの災害医療支援とは
「医療の届かないところ」。災害時にはそれが被災地であると捉え、地震・津波をはじめ、台風・サイクロン・洪水といった気象災害、新興感染症の拡大も含めた緊急事態において、医療を届ける活動を実施します。その対象は、被災を受けた全ての人びとや、被災者に対して手を差し伸べる支援者の方々です。
ジャパンハートの緊急支援は、「外部の支援者として現場の代弁者であれ」というモットーを掲げています。本当の医療の手が必要になる「亜急性期」以降を中心に、地域保健師の方々や、医療従事者の皆さんをサポートしながら、中長期にわたって息の長い支援を繋ぎます。私たちは、すべての被災者が免れ得た災害関連死を防ぐことを目指し、「支援者支援」を念頭に活動を続けます。
医療者ネットワーク
中長期にわたって息の長い支援を繋げることができる理由は、ジャパンハートのもつ医療者ネットワークにあります。
医療者をはじめとする災害医療専門チームである、登録制ボランティア「iER災害ボランティア」には2022年7月現在、医師・看護師を中心に、約150名がボランティアとして登録されています。
また、国際看護師研修出身の看護師約260名をはじめ、海外事業地(カンボジア・ミャンマー・ラオス)への医療活動へ参加した医療者・非医療者のボランティア約5000名とのネットワークを活用し、災害医療支援にアプローチします。
海外事業地では、平時より医療活動をともにする現地人医療者(医師・看護師)が100名以上在籍しているため、国外への出動に際してもボランティアと協同し、円滑かつ適切な支援を届けることが可能です。
国内災害へのアプローチ
都道府県・自治体との協定
災害時に、円滑かつ迅速な支援活動を実施する上で、平時からの関係自治体との連携が大切です。
災害時には、自治体の災害対策本部や保健医療調整本部、災害派遣医療チームDMAT(Disaster Medical Assistance Team)、日本赤十字社、医師会・看護協会などの様々な関係組織との情報共有のもと、現場活動を行います。
佐賀県「佐賀県及び公益財団法人佐賀未来創造基金と進出協定」
2020年11月、ジャパンハートは災害時の医療支援体制を強化するために佐賀県と進出協定を結びました。協定締結にともない、佐賀県をハブとした災害支援体制の強化、新型コロナウィルス感染症対策および医療従事者のグローバル人材育成のため、佐賀県内に新事務所を設置しました。
今回の協定締結により、CSO(Civil Society Organizations市民社会組織)活動に積極的な佐賀県との連携を強化し、佐賀県はじめ九州方面の災害支援団体との積極的対話機会を樹立します。
熊本県「大規模災害時等における支援活動に関する協定」
2021年3月、ジャパンハートは、熊本県での災害発生時等の医療救護活動において、自治体との連携をさらに推進していくことを目的とし、2021年3月8日に熊本県と「大規模災害時等における支援活動に関する協定」を締結いたしました。
熊本県では、2016年の熊本地震や2020年7月の豪雨時、県内の避難所にてジャパンハートのボランティアを派遣し、支援を実施して参りました。
また2020年以降は、新型コロナウイルス感染症のクラスター発生施設に対して医療チームの派遣を全国的に実施する中、熊本県内の福祉施設3か所および医療機関1か所にて医療支援活動に従事いたしました。
今回の協定締結により、ジャパンハートは熊本県での大規模災害や感染症拡大等の有事において、医療福祉機関および避難所等への医療支援および衛生管理等の支援活動を熊本県と共により円滑に実施することが可能になります。
過去の出動事例
令和2年7月豪雨
2020年7月、熊本県内を中心に九州全域において7/3から7/31までの間続いた豪雨災害。
線状降水帯が熊本県付近に形成・停滞したことから、7/4には、熊本県内では6時間で450~500ミリを超える記録的な大雨となり、死者・行方不明者67人、家屋全壊1489棟、半壊3097棟などの甚大な被害をもたらしました。
ジャパンハートは7月7日より医療チームを派遣し、熊本県八代市及び人吉市の避難所計3ヶ所で約2ヶ月間継続支援を実施しました。
プロジェクト名:令和2年7月豪雨緊急救援
実施地域:熊本県 八代市 人吉市
実施期間:2020年7月7日〜9月3日
実施内容:ニーズ調査、避難所における救護活動、医療支援、被災者の健康管理、感染症対策
2016年熊本地震緊急救援
2016年4月、最大震度M7.3の地震が発生。余震の恐怖に多くの人々が身を寄せ合う避難所をめぐり、巡回診療を実施しました。
2016年4月14日夜間に発生した大きな前震(M6.5)の後、16日深夜に本震(M7.3)を経験すると言う、過去例を見ない災害に見舞われた熊本地震。
インフラの寸断や家屋の倒壊に加え、避難生活中の災害関連死なども大きな課題になりました。そのような中、ジャパンハートは20日に先遣隊を派遣、熊本市南区の医療巡回支援と南阿蘇の福祉避難所支援を行いました。
プロジェクト名:2016年熊本地震緊急救援
実施地域:熊本県 熊本市南区、南阿蘇郡南阿蘇村
実施期間:2016年4月20日~5月10日
実施内容:被害状況・ニーズ調査、避難所巡回診療、福祉避難所医療支援(地域行政へのリンク支援含む)
東日本大震災緊急支援
2011年3月11日、岩手県、宮城県、福島県に未曽有の被害をもたらした大地震が発生。地震に次いで、三陸大津波と福島原発事故により、その被害は拡大しました。
3月17日に被災地へ入り、全国から医師・看護師、一般ボランティアを募り、ジャパンハートとして国内初の緊急医療支援活動を行いました。
避難所等へ約450名のボランティアを派遣した他、亜急性期を中期的に支えるため、石巻市にジャパンハート独自の小児クリニックを開設。地域の開業医を支えるため土日のみ開業し、3年間の運営を継続しました。
プロジェクト名:東日本大震災緊急支援
実施地域:宮城県気仙沼市本吉町、本吉郡南三陸町戸倉、登米市米山町、仙台市宮城野区、石巻市雄勝町大須・渡波・桃生町・広渕字町
実施期間:3/17~6月初旬
実施内容:避難所の巡回診療、医療物資の運搬、被災者の心のケア、ボランティアの派遣等
国外災害へのアプローチ
事業3カ国との出動体制
サイクロンによる被害を含む大規模災害発生の脅威に晒されるミャンマーでは、過去にも幾度となく災害医療支援を実施してきました。
事業3ヵ国(ミャンマー・ラオス・カンボジア)では、日頃より、医療活動を共にする現地人医療者(医師・看護師)が約50名在籍している他、カンボジアでは病院を運営しているため、災害時の拠点として、円滑かつ適切な医療を提供することが可能です。
また、各国保健省をはじめ、ミャンマーでは社会福祉・救済復興省との平時から連携を深めております。今後は更なる出動体制強化を見据え、赤十字社等、外部団体との合同訓練等を計画しています。
カウンターパートとのネットワーク
事業3ヵ国をはじめ、ASEAN諸国への災害出動にも関わってきました。
ASEAN諸国での大規模災害発生時には現地のカウンターパートの存在が大切です。現地のカウンターパートに正確な現地の情報を速やかに提供してもらい、本当に必要とされている支援とは何か、実現可能な支援とは何かを協議し、限られた時間で正確な判断をします。
ジャパンハートは、インドネシア・フィリピンではカウンターパートと協同での災害出動を行なってきました。タイとも連携を深め、今後のASEAN諸国での出動体制強化を行なっています。
過去の出動事例
2020年カンボジア台風
2020年10月、台風ナンカの発生に伴い、13日から16日にかけてベトナム・ラオス・カンボジアなど東南アジア各地で断続的な大雨に見舞われました。
この影響で複数の州で洪水が発生し、カンボジア国内だけでも20万人以上が被災し、4万8000世帯が被害を受けているといわれ死者数は25名(大人18名、こども7名)になりました。
ジャパンハートは、10月24日から27日までの4日間洪水被害のあった被災地のうちポーサット州Svay Dong Kev地区へ緊急医療支援活動を行いました。
診療を受ける患者が訴える症状として、主に下痢、便秘、風邪、腹痛、吐き気など洪水による影響があると考えらえる症状のものが多いほか、不安感で夜眠れないなど精神的にも影響を与えていることがわかりました。
また、この地区にはこれまで外国の医療系NGOが入ったことがないということもあり、洪水に関連する病気以外でも慢性的な疾患で診察に訪れる人が後を絶ちませんでした。今回は4日間で小学校・売店前・お寺など6か所の活動地を回り、488名の住民に向けて診療活動を実施しました。
2018年インドネシア地震
2018年9月28日にインドネシアのスラウェシ島中部スラウェシ州ドンガラ県・パルの北78kmを震央として発生した地震災害。
世界でも例にない大規模な液状化現象による大規模な被害が発生し津波災害も併災となりました。
ジャパンハートは、10月9日から看護師およびコーディネーターによる初動チームを被災地へ派遣し、3月31日までの144日間支援活動を実施しました。
避難生活を余儀なくされているパル市、シギ地区、ドンガラ地区の住民に対して、巡回診療を中心とした医療支援活動を実施し、10ヶ所の拠点にて770名への診療を行いました。その後、被災者の生活基盤再建のため、物資配布、仮設住宅資材配布の支援を行い、144日間の支援活動を行いました。
2015年ミャンマー台風
2015年7月26日にベンガル湾で発生した台風は、ミャンマー北部に集中的な豪雨をもたらし、洪水が発生しました。SNSの普及により被害情報が国外へ拡散、支援の手が入るようになったとされています。
広域被害をもたらしたこの洪水ですが、ジャパンハートは被害が大きいと報告があったザガイン管区とマグエ管区に調査チームを派遣し、緊急医療支援を行いました。また、被害は南部にまで及び、エーヤワディー地方からの直接支援の要請を受け、そちらにも医師・看護師を派遣しました。
ジャパンハートの支援国と言うこともあり、調査には現地人スタッフが活躍してくれました。洪水は被害が広く、被害やニーズの把握には体系的な介入が必要となります。また、今回は報道で大きく名前の出た地域はすでに洪水の被害からは脱しており、被害者のかたが直接事務所に窮状を訴えに来て下さった経緯でニーズにこたえることが出来ました。
支援に入ったワッチェ村の看護師によると「水の中で怪我をしたり、蛇にかまれたりした人が診察を受けに来た」とのことでした。その他、洪水で孤立状態になり、薬を調達できずに具合の悪くなった人や、上気道炎などの感染症に罹患した人もいました。
今後もミャンマーにおいては、洪水支援を想定に要れ、的確な情報収集とロジスティックスを確立し、出来るだけニーズの高い地域に入れるようにしたいと思います。
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