新たなる医療資材「 Join Mobile Clinic 」で災害時の医療支援を強化する
7月26日、第15回災害ボランティア登録研修のリハーサルを実施しました。当部署スタッフだけでなく、新入職スタッフや更新ボランティアの皆様など総勢17名が参加して行われました。本番さながらに講義を受け、インストラクタースタッフもアドバイザーとして加わってグループワークも実施しました。
その中でも、2025年3月のミャンマー地震支援から導入した医療資材「Join Mobile Clinic(以降、JMC)」の研修は、ご参加いただいたボランティアの皆様、特に医師・看護師など医療職の方々から大変ご好評をいただきました。
JMCとは、株式会社アルムが提供する遠隔医療支援システムです。各種ポータブル医療機器を用い、病院外での診療や遠隔での判断をサポートすることができます。ポータブル医療機器のセットがスーツケースで持ち運べるため“動くクリニック”とも言われるJMC。ミャンマー地震支援では、発災直後からの巡回診療活動で活用されました。ジャパンハートでは、大規模災害時の迅速な診療活動のため、このJMCの医療トランクを日本国内の拠点に配備致しました。
連携したアプリを使ってポータブル医療機器で撮影・検査したデータをチーム内で共有したり、医師が現場に不在の場合にも遠隔で判断を仰ぐことができます。
研修に参加したボランティア医師からは、「緊急の現場で緊急性の高い病態を評価するための必須の器具がすべてコンパクトに入っている。エコー(超音波装置)に関しては、腹痛が評価できて、呼吸器や心臓が評価できて、血栓が飛んだかどうかというのがすべて評価できる。また、手に持ち上げられるレベルの軽さとスペースでレントゲンが全て取れるのはすごいですね。」との声が聞かれました。
私自身、能登半島地震での福祉避難所支援の際、誤嚥性肺炎が疑われる高齢避難者さんの搬送を医療機関に断られる経験をしました。地域診療医の先生が採血結果を添えて直接再度病院に掛け合ってくださり翌日無事に入院できましたが、やはり誤嚥性肺炎の診断でした。もし、あの時JMCがあれば胸部レントゲン写真を病院に連携し、高熱で苦しい思いをしていた避難者さんが早期に入院・加療ができ、安心と安楽をもっと早く届けることができたと感じました。また、災害関連死原因の多くを占める呼吸器系疾患(肺炎、気管支炎など)、循環器系疾患(心不全、クモ膜下出血、エコノミークラス症候群など)の早期発見、早期治療も期待できると感じています。
更に、JMCは災害時の避難所や臨時診療所、巡回診療時の医療支援だけでなく、無医村や離島での遠隔診療支援、医療格差の是正といった地域医療支援にも大きな役割を果たすことができます。能登半島地震の中長期支援に関わる身として実感しているのは、災害支援は、地域支援に繋がるということ。インフラは復旧しても、災害によって脆弱化した地域医療人材・環境が回復できるには多くの課題があり、とても困難な現状があります。
JMCを活用すれば、ジャパンハートの新しい災害支援の形として、モバイル診療/訪問看護を行い、急性期だけでなくその後も細く長く地域医療を支えていくことができるかもしれません。
「医療の届かないところに医療を届ける」。ジャパンハートの理念を叶えるための大きな可能性がまた一つ、拓き始めています。
災害支援・対策セクション
枡田 眞弓
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皆様のあたたかいご支援をよろしくお願いいたします。
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ジャパンハートの災害支援・対策(iER)
ジャパンハートの災害支援・対策iER(International Emergency Relief)では、国内外で発生した大規模災害に対応し、緊急医療支援を実施しています。
■2011年3月~2014年3月 東日本大震災緊急支援
■2016年4月 熊本地震緊急救援
■2020年4月~2022年9月 新型コロナウイルス感染症緊急救援
■2021年8月 令和3年8月豪雨災害緊急支援
■2022年9月 台風14、15号緊急支援台風
■2023年7月 令和5年九州北部豪雨緊急支援
今後も現場の支援ニーズを見極めながら、救援活動を継続的に実施していく予定です。
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