2025年3月に大地震に見舞われたミャンマー第2の都市・マンダレー。
ミャンマー国内で小児外科の専門治療を受けられる3つの子ども専門病院のうちの1つが、ここマンダレーにあります。
逆にいうと、国土は日本の1.8倍と広く、人口も日本の約半分で子どもの数も多いにも関わらず、病気を持った子どもたちが手術を受けられる専門病院がたった3つしかない、というのが ミャンマーの小児医療の厳しい実情です。


しかも2021年のクーデターから約3年半もの間、ここマンダレーでは医療者不足によって子どもの手術は完全にストップしていました。手術を受けるにはヤンゴンにある子ども専門病院に行くしかなかったのですが、経済面や治安面の問題でそこに辿り着くことすら難しい人が多いのが現状です。そのため、断腸の思いで治療を諦めざるを得なかった子どもやご家族も多かったはずです。
病気に苦しむ子どもたちを救うため、活動地を拡大
そして2025年9月、日本より小児外科の中原康雄医師(岡山医療センター)にお越し頂き、マンダレーの子ども専門病院での手術活動を実施しました。実は、今年6月の手術活動を予定していたのですが、3月に発生した大地震の影響で3ヶ月遅れてのスタートとなりました。


病院を訪れると、たくさんの手術を待つ子どもとご家族が、私たちの到着を首を長くして待っていてくれました。
今回は3日間という限られた日数の中で、中原先生には緊急症例も含めて9件の手術を実施いただきました。そして3日間の滞在中にも次々と患者さんがやって来て、次回11月の再渡航の際の手術リストも埋まりつつあるといった感じです。
現場の厳しい現実と私たちに出来ること
今でも特にここマンダレーの医療者不足は深刻で、約1年前からこの病院のたった1人の小児外科医として厳しい環境で奮闘してきた現地医師からは「1人だけで出来る手術はどうしても限られる。こうやって一緒に手術に入ってもらって患者さんに今まで出来なかった手術をできたことが嬉しい。本当に感謝しているし、今後もぜひ手伝ってもらいたい」と。
これらの言葉と共に活動している際の様子から、どれだけ患者さんを助けたいと思っても1人だけではどうしても限界があったんだろうな…と、厳しい環境で奮闘してきた現地医師の苦悩を垣間見ました。


そして今後は、病気を持った子どもたちとともに、こうやって患者さんと共に闘っている現地医療者たちのサポートもしていきたいと考えています。
ご協力頂いた中原医師からのメッセージ
マンダレーは政治的問題に加えて大地震の影響もあり、以前のような活気を失っているのではないかと想像していました。ところが実際訪れてみると、表面上かもしれませんが、人々は逞しく日の暮らしを営んでおり、街を彩る道路沿いの緑豊かな大きな木々は変わらずきれいに整えられていました。こうした光景に触れ、マンダレー意外と元気じゃないか、と感じました。
マンダレー小児病院は、ミャンマー北部·中部の小児医療の主要中核病院です。小児外科疾患に対する治療も数多く実施されていたと聞いています。現在、現地の小児外科専門医は1人で、日々次々に来院する手術を必要とする子どもたちをできる範囲で治療しているという状況でした。今回の手術予定は3日でしたが、手術室の使用時間を最大限利用して手術を行いました。膀胱外反、ヒルシュスプルング病、副腎腫瘍、十二指腸閉鎖、小腸閉鎖、尿道下裂、水腎症などになります。いずれも問題なく手術は遂行できましたが、ヤンゴンの病院と比較しても「手術室環境、手術機材、縫合糸などすべてに制約があり、今後手術支援を継続するにあたっては様々な医療物資の供給も必要であると感じました。
理想的には、現地の小児外科専門医の育成が進み、自国医師のみでもっと多くの子どもたちの手術を行えるようになることでしょうが、マンパワーの不足は大きな障壁となっています。現状では治療が必要な患者は増える一方ですが、状況が好転することを信じつつ、現地医療者、病気の子どもたちの支援を微力ながら維続したいと思います。次は11月、長時間立っていると腰が痛いですが、できるだけ頑張ります。
ここマンダレーの活動はスタートしたばかり。
すぐに解決することは難しい課題も多くありますが、それらを協力頂く日本人専門家の先生方や現地医療たちと共に、患者さんや家族の笑顔のために1つ1つ乗り越えながら進んでいきたいと思っています。
▼ ミャンマープロジェクトの詳細はこちらから
https://www.japanheart.org/tag/myanmar/