クーデターからもうすぐ5年となるミャンマー。
日本国内でのミャンマーに関する報道はほとんどなくなり、「少しは落ち着いてきているのかな?」と思われている方も多いかもしれません。
でも実際はと言うと、落ち着くどころか情勢は少しずつ悪化し、人々の生活は徐々に厳しくなってきているのです。
それは医療に関しても同様です。
医療チームとして、私たちに何ができるのか?
多くの国民の最後の砦である国公立病院では医療者不足によって今でも十分な治療が提供できない状態が続いています。
そして私たちは多くの患者さんが治療を求めて彷徨っている状況を知っているからこそ、周辺の情勢が悪化しつつある中でも休む事なく、ワッチェ慈善病院での活動を続けているのです。
…にも関わらず、ワッチェ病院のあるワッチェ村も含めて、病院周辺の情勢は悪化の一途を辿っており、治療を受けにワッチェ病院まで辿り着ける患者さんの数も減っているのが現状です。
医療が必要な患者さんがいて、「医療の届かないところに、医療を届けたい」とスタッフたちが心から願っているにも関わらず、なかなか難しいといった状況に陥っています。
どうやったら必要な人々に医療を届けられるのか?を、医療者として模索しています。
避難民の子どもたちに医療を届ける
11月中旬、ワッチェ医療チームは車で1時間半ほどのチャウセーという街にあるお寺に出張診療に向かいました。
以前にも何度か出張診療に伺ったことのあるお寺ですが、国内情勢の悪化によってここの状況も一変していました。
もともと少数民族地域の孤児や貧困家庭の子どもたち300人ほどが生活していましたが、今はその数が倍以上の700人ほどまで膨れ上がっていました。
聞くと、ミャンマー中部の情勢悪化によって発生した避難民の子どもたち400人ほどが新たに加わったそうです。

この子どもたちの住む地域では村の中で衝突が頻繁に発生するようになって身の危険も迫り、学校も閉鎖され学びの場も失くなってしまったため、多くの子どもたちが親元を離れてここにやって来ていました。
今回はそんな子どもたちに対して出張診療を実施しました。

子どもたちは基本的には元気な様子なのですが、大人数の密着状態でも集団生活を送っていることによる感冒症状や皮膚疾患を持つ子が多くが見られました。
そのため、ワッチェ医療チームは必要な薬の処方や消毒と共に生活の場の換気や掃除、特に寝具やタオルの洗濯や天日干しの方法についてのアドバイスも行いました。

ここに暮らす子どもたちの様子
ここに暮らす約700人の子どもたちの背景は様々。
臍の緒が付いたままで道端に置かれていたという赤ちゃんから、勉強を続けたいと自らの意思で親元を離れてやって来た高校生まで、みんなが慎ましくも協力しながら生活しています。

「ここでは突然の衝突で避難する必要もないし、ゆっくり勉強が続けられて嬉しい。」と、高校生の女の子は話してくれました。
代表のお坊さんからは「これだけ多くの子どもがいると、ちょっと体調を崩したからと言って病院に連れて行くことも難しい。これからも定期的に子どもたちの健康を一緒に見守ってほしい」と依頼されました。
困難な状況にありながらも、未来のために前を進もうと頑張る子どもたちを、私たちは健康管理の面でこれからも支え続けます。

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ミャンマー 専門医療プロジェクト

