活動レポート

← 活動レポート:トップへもどる

【カンボジア医療活動】つなぐ技術、通わせる心 ― カンポントラベック病院 初の出張診療活動、同行記 ―

up 2026.02.09

1月24日から27日までの4日間、ジャパンハート医療センター(以下、JHMC)から車で約3時間。プレイベン州にあるカンポントラベック(KT)病院にて、ジャパンハートによる出張診療活動が行われました。2009年からカンボジア各地で出張診療活動を続けてきたジャパンハートですが、このKT病院での活動は今回が初めてとなります。記念すべき第一歩となるKT病院での初ミッション(集中的な手術活動)は、消化器外科を専門とする認定医・遠藤俊治医師を中心としたチームで編成されました。

ジャパンハート カンボジア 医療 出張診療活動

新装した病院で初めてのミッション

KT病院は、一般・外科・救急・小児・周産期病棟を有する、地域の中核を担う公立病院です。多数の診療科を備える病院ではありますが、スタッフは1日あたり約20名程度。地方病院特有のどこかゆったりとした時間が流れている一方で、スタッフ一人ひとりが複数の役割を担い、少人数ながらも活き活きと働く姿が印象的でした。

近年、カンボジア政府の取り組みにより、公立病院の医療設備は新しく整備が進められています。KT病院の手術室もその一環として、真新しい設備へと一新されました。今回のジャパンハートの活動は、この新手術室で行われる初めての手術活動となりました。

4日間の活動期間中に実施された手術は、計18件。内容は主に、成人の鼠径ヘルニアや良性腫瘍の摘出などです。出張先での手術は、単に件数を重ねることを目的とするのではなく、その技術を現地病院のスタッフへ伝え、将来的に自分たちで実施できるようになることも大きな目的としています。

ジャパンハート カンボジア 医療 出張診療活動

現場を支える縁の下の力持ち ― 藤井看護師の仕事

今回私はインターンとして、ミッション数日前の準備段階から、すべての活動終了後の術後ケアに至るまで、計8日間同行させていただきました。この滞在の中で見えてきたのが、長年出張診療活動を支えてきた藤井看護師の、熟練した実践者の姿でした。

ジャパンハート カンボジア 医療 出張診療活動

藤井看護師は、2016年からジャパンハートの出張診療活動に携わっています。今回のKT病院との連携においても、最初の連絡段階から関わってきました。

異なる組織が協働する際には、必ず「文化」や「ルール」の違いが存在します。病院ごとの運営方針の違いはもちろん、異なる国で行われる医療には、根底にある医療観や習慣の差も生じます。

私は当初、こうした活動はジャパンハートが「一方的に教える」形になるのだろうと、どこかで想像していました。しかし、藤井看護師の姿を通して、その認識が誤りであったことに気づきました。

ジャパンハート カンボジア 医療 出張診療活動

出張診療活動において「相互の同意」が不可欠であると語る藤井看護師は、一つひとつの方針や手順、動線を丁寧に確認し、時間をかけて共通認識を築いていました。術後フォローの方法についても、現地医療者と共有しながら、共通点と相違点を擦り合わせていきます。

長年の現場経験から、現地医療者の特性や、日本の基準では想定しにくいリスクまで見据えるその姿には、積み重ねてきた経験の重みがにじんでいました。

今回、藤井看護師の仕事を間近で見せていただいたことは、異国かつ外部拠点で医療活動を行うとはどういうことなのかを、実感をもって学ぶ貴重な経験となりました。「相手の病院にとって最も良い方法は何か」を共に模索する姿勢こそが、こうした活動の本質なのだと深く認識しました。

ジャパンハート カンボジア 医療 出張診療活動

また藤井看護師は、ふとした空き時間にも現地医療者や患者さんにクメール語で声をかけ、自然と輪の中に溶け込んでいきます。現地スタッフは皆、親しみを込めて「Fujii」と呼んでいました。こうした日常的な関係づくりが、実際の業務における円滑な連携につながっていることを実感しました。

今回の活動が滞りなく終了し、KT病院との間に確かな信頼関係を築くことができたのは、藤井看護師の入念な事前準備と、ミッション中の細やかな配慮、そして地道な関係構築という縁の下の力持ちとしての働きがあってこそだったのだと思います。

ジャパンハートの一員としての誇り

今回のミッションに参加して、もう一つ強く感じたことは、ジャパンハートチームの結束の強さです。
活動期間中は、毎食をともにし、食後には近くのカフェに立ち寄ることもありました。こうした何気ない時間が、チームの距離を自然と縮めているように感じました。

ジャパンハート カンボジア 医療 出張診療活動

また、遠藤医師のミッションでは恒例となっているたこ焼きを現地スタッフに振る舞う場面もあり、KT病院を巻き込んだ交流のひとときは、チーム全体の一体感をより強める機会となっていました。

しかし、ひとたび現場に戻れば、空気は一変します。医師、看護師、通訳、ドライバーがそれぞれ異なる役割を担いながらも、全員が「ジャパンハートの一員」としての責任と誇りを持って行動していました。

誰かの指示を待つのではなく、それぞれが状況を見て判断し、声を掛け合い、互いを補い合う。その洗練された技術と献身的な姿勢、そして確かなチームワークは、KT病院のスタッフや患者さんに安心と信頼をもたらしていたと感じます。

短い期間ではありましたが、インターンとしてこのチームの一員として活動できたことを、私は誇らしく思いました。

KT病院から始まる新たな一歩

ジャパンハート カンボジア 医療 出張診療活動

「活動開始当初、医学生だったカンボジア人医療者が、今では指導者となり、現地医療者同士で技術が受け継がれる循環が生まれている。」

遠藤医師は、今回のミッションを振り返り、このように語りました。この言葉は、今後の出張診療活動を支える大切な指針となるものです。

今回のKT病院でも、スタッフ一人ひとりが主体的に学び、得た知識や技術を互いに共有しようとする姿が見られました。

また、院長をはじめとするKT病院スタッフの「より良い医療を届けたい」という向上心と、温かな協力体制も強く印象に残りました。本ミッションは、KT病院が今後、ジャパンハートの出張診療活動を支える重要な拠点となり得る可能性を感じさせる、新たな一歩となりました。

これからもジャパンハート医療センターは、現地医療者とともに歩みながら、技術が受け継がれ、地域に根づく医療の実現を目指してまいります。

 

長期学生インターン 駒場万由子

 

▼プロジェクトの詳細はこちらから
https://www.japanheart.org/tag/cambodia/

Share /
PAGE TOP