活動レポート

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【ミャンマー】生まれた国による不平等を少しでもなくしたい! ーミャンマー小児心臓病プロジェクトー

up 2025.11.09

 生まれつき心臓病を持って生まれてくる赤ちゃんは、およそ100人に1人と言われています。
日本であれば胎児健診や乳幼児健診などで病気が見つかり、早い段階で治療に繋がるケースが多いですが、健診などの保健制度の整わないミャンマーでは、明らかな症状が出て初めて病気が見つかるケースがほとんどです。もしくは心臓病があるどうかも分からないまま、生命を落としているケースも多いと思われます。

心臓病を持って生まれてきた子どもにとっては、厳しいミャンマーの現実

 しかも今のミャンマーで子どもの心臓病の専門治療ができるのは、ヤンゴンにある子ども専門病院たった一つだけ。日本の1.8倍もの国土を有する上に、道路などの交通機関やインフラも整っておらず、日本のような医療保険制度のないミャンマーでは、心臓病を持った子どもが治療にたどり着くまでにはたくさんのハードルが待ち構えています。
 またひと言で心臓病と言っても様々であり、日本では治療できても、現在のミャンマーでは治療ができないケースもあり、生まれる国によって子どもの運命が大きく変わってしまうのが現実です。

ジャパンハート ミャンマー 専門医療 小児心臓病

【心臓病の診断に必須の心臓エコー検査】

心臓病の子どもたちを救うための私たちの挑戦

 そこで2023年度より「生まれた国による不平等を少しでもなくしたい」との想いから、日本から小児循環器の先生にお越し頂き、現地の医師たちと共に心臓カテーテル治療(細い管を血管から心臓まで通し、画像を見ながら心臓の狭いところを拡げたり、穴を塞いだりする治療)の実施に取り組んでいます。
 実はジャパンハートとしては2015年より、先天性心臓病に苦しみながら経済的事情などで手術が受けることが出来ない子どもたちを救うために設立された日本の基金「あけみちゃん基金」と共に、ミャンマーでの心臓病に苦しむ子どもの治療や現地の医療者の育成に取り組んできましたが、2020年度のコロナ禍とそれに続くミャンまー国内の情勢不安によって、残念ながら活動が休止となっていました。
 そのような中で、ミャンマー国内の心臓病の子どもたちが置かれている子どもたちや、それを何とか救いたいと奮闘する現地の医療者の熱意を知る私たちとしては、「何とか力になりたい」との想いも相まってジャパンハート独自でこのプロジェクトをスタートする事としたのです。

ジャパンハート ミャンマー 専門医療 小児心臓病

【ミャンマーでの心臓カテーテル治療の様子】

このプロジェクトによって救われた生命

 カテーテル治療室の前でおばあちゃんの腕に抱かれながらスヤスヤと眠る男の子。
「やっと治療を受けさせる事ができる。この子の事が本当に可愛くて、私が大事に大事に育ててきたの。」と、おばあちゃんは涙を流しなから話をしてくれました。今から孫を治療室に送り出す不安と、やっと治療を受けさせられるという安堵感の入り混じった涙でした。

 ヤンゴンから約650km離れたミャンマー中部の都市からやって来たカウン君(3歳)。生まれてすぐから、原因がよく分からないまましょっちゅう体調を崩していたそうです。生後8ヶ月の時に、心臓の部屋を隔てる壁に穴が空いている心房中隔欠損症という心臓病がある事が分かり、ヤンゴンの専門病院への受診を勧められましたが、その時は経済的な問題でヤンゴンまで行く事が出来ませんでした。
 カウン君のお母さんはシングルマザーで、遠く離れたタイとの国境の街で働きながら、おばあちゃんと一緒に暮らすカウン君とお兄ちゃんの生活を支えています。ヤンゴンに行くための費用をコツコツと貯めて、3歳になってようやくヤンゴンの子ども専門病院を受診し、カテーテル治療を受ける事ができたのです。治療の翌日には、ベッドの上で車のおもちゃで遊ぶカウン君を、愛おしそうに眺めるおばあちゃんの姿がありました。

ジャパンハート ミャンマー 専門医療 小児心臓病
ジャパンハート ミャンマー 専門医療 小児心臓病

協力してくださる日本の専門家と共に描くミャンマーの未来

 今回は富田英先生と藤井隆成先生(昭和大学 小児循環器・成人先天性心疾患センター)にお越し頂き、2日間で14名の心臓の子どものカテーテル治療を実施しました。治療を受けたカウン君や他の13人の子どもや家族も、それぞれの困難や背景がある中でそれを乗り越えてここまでやって来ました。治療を終えた後の子どもたちやご家族みんなの、穏やかな笑顔がとても印象的でした。

ジャパンハート ミャンマー 専門医療 小児心臓病
ジャパンハート ミャンマー 専門医療 小児心臓病

【左:治療後の患者さんの診察を行う富田医師と藤井医師】【右:治療後の患者さんとご家族】

でもミャンマーでは、まだまだここまで辿り着けない子どもたちもたくさんいます。
その子どもたちにアプローチするため、私たちは治療をサポートしながら現地の医療者を育成し、1人でも多くの子どもが治療を受けられる体制を作ることを目指し、これからも事業に取り組んでいきます。

ジャパンハート ミャンマー 専門医療 小児心臓病

【治療後の患者たち】

 

▼プロジェクトの詳細はこちらから
ミャンマー 専門医療プロジェクト

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