サバイディー!(ラオス語で「こんにちは!」)ラオスオフィスの松原です。
ラオスでは朝晩は涼しさも感じられるようになり、季節の移り変わりを実感する毎日です。
2025年10月、ラオス国立子ども病院の副院長・外科部長・腫瘍内科部長の3名が九州大学病院を訪問しました。
本研修はジャパンハートがラオスで進める「小児固形がん治療技術移転プロジェクト」の一環として実施されたもので、日本の小児がん医療の現場を多角的に学ぶことを目的に行われました。
九州大学病院はラオスでの手術活動をはじめ、教育・医療技術面で幅広くご協力をいただいているプロジェクトのパートナーです。

▲今回の研修に参加したラオス国立子ども病院の3名の医師。
小児がん治療を支える“医療の仕組み”に触れる
今回の研修では手術室、集中治療室(PICU/NICU)、薬剤部、病棟、外来、病理診断、さらには滅菌処理を担うサプライセンターや栄養部まで、幅広い部署を見学しました。
ラオスの医師たちが特に関心を寄せていたのは「医療の安全をどう守っているのか」という、日本の病院全体に共通している考え方でした。
手術前に行われる入念な確認手順、スタッフ間の情報共有の仕組み、抗がん剤調製の安全体制、チームで患者さんを支える文化など、現場で働く多くの方々から学びを得ることができました。
また、技術の高さそのものに加え、「患者さんや医療者の安全を守るために何ができるか」という根本的な視点に触れる機会が多くありました。
参加したラオス人医師の皆さんも、自院でどのように生かせるかを前向きに考えはじめていることが伝わってきました。

▲NICUでの処置を見学。副院長は帰国後に、小さな命を守る医師の熱意が強く印象に残っていると語ってくれた。

▲栄養部見学の様子。ラオスにはない管理栄養士の仕事にも関心を持ち、多くの質問が投げかけられた。
多職種が連携して治療に向き合う姿からの学び
九大では外科・内科・麻酔科・看護部・薬剤部・病理など、多職種が情報を共有しながら治療方針を決めています。
院内カンファレンスや各部署での説明を通して、「小児がん治療はチームで行うもの」という考えがラオスの医師たちに強い印象を与えていました。
外科手術の流れだけでなく、術前・術後管理、感染対策、病理診断、薬剤管理といった“周辺の医療の質”が治療成績に直結していることを再確認する機会となりました。

▲手術室では、子ども病院でも2025年4月に九大医師の指導で初めて実施した針生検を見学。
新たな連携の可能性が広がった時間に
今回の研修では九州大学病院の先生方、ラオス国立子ども病院の医師、そしてジャパンハートの三者が、対話を通じて互いの考えや課題を共有し、理解を深める貴重な時間となりました。
治療方針の考え方や人材育成に対する姿勢、病院組織として目指す方向性など、幅広いテーマについて意見交換が行われ、「一緒に前へ進むパートナー」としての関係がより強まったと感じています。
また、この対話をきっかけに、遠隔医療支援についても将来的な可能性を探る話題があがりました。
具体的な協議が始まったわけではありませんが、手術の学習や病理診断など、ラオスの医療現場でどのように日本の知見を活かせるかを考える入り口となり、今後の協働の幅が広がるきっかけとなりました。

▲いつも多くのサポートをいただいている小児外科 田尻教授と。
研修で得た学びを、ラオスの現場へ
11月には第2回手術活動を予定しており、今回得られた学びを現地での診療や教育に生かしていく予定です。
「今回見たことをそのまま持ち帰ることはできなくても、“安全を守るための考え方”をどこまで自分たちの現場に取り入れられるか考えていきたい」と、参加した医師は語っています。
ジャパンハートは、これからもラオスの医療者とともに、子どもたちが安心して治療を受けられる未来を目指して歩んでいきます。
▼プロジェクトの詳細はこちらから
ラオス 国立子ども病院での小児固形がん周手術期技術移転プロジェクト

