活動レポート

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【カンボジア医療活動】産後の危機を越えて ーカンボジアと日本人医師が紡ぐ「母のいのち」ー

up 2025.12.15

2025年11月21日から23日までの3日間、消化器外科を専門とする外村修一医師による集中的な手術活動(ミッション)が行われました。
今回は「乳房腫瘍」や「胆のう結石」の除去手術を中心に緊急性や難易度の高い症例を含む計13件の手術が実施されました。

カンボジア医療へ貢献し続ける医師の姿

【カンボジア医療活動】産後の危機を越えて ーカンボジアと日本人医師が紡ぐ「母のいのち」ー

今回の手術活動を率いた外村医師は消化器外科を専門としながら、甲状腺から肛門まで幅広い領域の手術経験を持つ医師です。
外村医師は2020年までの5年間、カンボジア・プノンペンにある日系病院に勤務し、医療支援活動に従事してきました。

また、その期間中は週に1度ジャパンハート子ども医療センター(JHCMC)を訪れ、手術活動にも参加。
今回は2年ぶりとなるジャパンハート医療センター(以下、JHMC)への訪問となりました。

早朝の到着後すぐに現地の医師と連携し、患者さんの情報を短時間で共有した上で手術活動に参加くださいました。
外村医師のカンボジアでの豊富な医療経験が今回の手術活動の完遂の大きな支えとなりました。

家族がつないだ受診への一歩

今回のミッションで手術を受けた患者さんの一人に、33歳の女性・スレイニットさんがいます。
彼女は来院する少し前に、おなかに新しい命を授かりました。
無事に出産を終えたものの、その後、発熱や強い倦怠感、腰の痛みといった体調不良が続くようになりました。

最初に受診した病院では「デング熱」と診断され、処方された薬を服用しましたが、症状は一向に改善しませんでした。
不安を感じたスレイニットさんは、医師として働く弟に相談します。

その弟こそが、ジャパンハートで勤務するホクレン医師でした。話を聞いたホクレン医師はすぐに受診するよう勧めます。
スレイニットさんは「ここなら原因不明の症状が改善するかもしれない」と信じ、家から3時間かけてJHMCを訪れました。

【カンボジア医療活動】産後の危機を越えて ーカンボジアと日本人医師が紡ぐ「母のいのち」ー

JHMCで行われた検査の結果、「後腹膜膿瘍」と診断されました。腹膜の後ろに広がる空間に膿がたまり、炎症が全身に及んでいる状態でした。
診断がついたタイミングは偶然にも日本人医師がJHMCに滞在している期間でした。
早急に手術が必要と判断され、すぐに手術を行うことが決まりました。

手術を前にスレイニットさんは「このまま良くなるのだろうか」と不安な思いを抱えていました。
家から遠く離れた病院で大きな手術を受けることへの緊張もあったと話します。

そんな中、入院生活で彼女が何より心強く感じたのは医療者たちの献身的な姿勢でした。

「みなさんがとてもよくしてくれて、安心して治療を受けることができました。病院の環境も整っていて、ここで治療できて本当に良かった」と振り返ります。

また、スタッフが誰に対しても分け隔てなく接し、貧富の差に関係なく同じ姿勢で向き合ってくれたことにも、深く感謝していると話してくださいました。

【カンボジア医療活動】産後の危機を越えて ーカンボジアと日本人医師が紡ぐ「母のいのち」ー

手術後には、ご家族がお見舞いに訪れました。
術前は体の状態もつらく、表情が硬かったスレイニットさんでしたが、家族に囲まれると、ほっと力が抜けたような穏やかな笑顔が戻りました。
ご家族も状態が改善したスレイニットさんの姿を見て安堵の表情を浮かべ、病室は温かな雰囲気に包まれていました。

ジャパンハート医療センターのこれから

【カンボジア医療活動】産後の危機を越えて ーカンボジアと日本人医師が紡ぐ「母のいのち」ー

今回の外村医師によるミッションを通して、JHMCにはさまざまな背景やニーズを持つ患者さんが訪れていることを改めて感じました。

来院される方の多くは糖尿病に関連する合併症、乳腺疾患、甲状腺の病気など、生活習慣や慢性疾患に関わる症状を抱えています。
これらの疾患はいずれも、早期発見や定期的なフォローが重要であり、地域における医療アクセスの課題も反映しているといえます。

また、JHMCを訪れる患者さんの多くが口コミをきっかけに来院されています。カンボジアにおいて、医療を受ける決断の背景には“医療への信頼”が大きく関わっています。

「親切に診てもらえた」
「長年悩んでいた症状が改善した」

こうした声が少しずつ地域に広がり、遠方から3時間以上、時には8時間ほどかけて来院される患者さんもいます。
スレイニットさんのようにご家族や知人の紹介をきっかけに受診につながるケースも少なくありません。

今後、JHMCに求められる役割の一つが地域の中にさらに深く入り込んだ医療の提供です。
病院まで来ることが難しい方や症状があっても受診を迷っている方へ、より確実に医療を届けていく取り組みが求められています。

今回のインタビューからは患者さんが医療を受けるまでに感じる不安や葛藤、そして適切な治療につながったときの安心や喜びが伝わってきました。
JHMCはこれからも地域に寄り添いながら、一人でも多くの方に医療を届け続けて参ります。

カンボジア長期学生インタ-ン 駒場万由子

▼プロジェクトの詳細はこちらから
カンボジア ジャパンハートアジア小児医療センター

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