活動レポート

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【カンボジア医療活動】医療の質向上を支える現場看護師たち ― ワーキンググループの挑戦 ―

up 2026.03.02

病院における看護師の仕事は多岐にわたります。入院患者さんの健康状態を把握し、些細な変化も見逃さないように観察すること、注射や点滴、採血などの医療行為を行うこと、医師の診察や処置を補助することなどが挙げられます。さらに、治療の説明や相談対応を通して、患者さんの不安や気持ちに寄り添うことも重要な役割です。

ジャパンハート医療センター(以下、JHMC)においても、看護師たちは365日、昼夜を問わず、外来や病棟、手術室などそれぞれの現場で、患者さんの安全で健やかな暮らしを支えています。

こうした日々の業務に加え、患者さんに質の高いケアを提供できる病院環境を整えることも、看護師の重要な役割です。JHMCでは、看護師が中心となり、5つのワーキンググループ(特定の課題やテーマについて改善や検討を行うために、医師や看護師などの多職種が集まって活動する実務中心のチーム)を構成し、それぞれの分野で取り組みを行っています。

現在は、救急救命(ER)、院内感染対策(ICT)、手術部位感染症(SSI)、糖尿病(DM)、早期離床(early mobilization)のグループが編成されています。いずれのグループも、患者さんの生命と健やかな生活を守り、質の高い医療を支える重要な役割を担っています。

ジャパンハート カンボジア 医療 看護師

本レポートでは、この中から糖尿病(DM)チームと手術部位感染症(SSI)チームの2つを取り上げ、それぞれの活動をリードする日本人看護師とカンボジア人看護師の声をご紹介します。

糖尿病チームを立ち上げた井口看護師

カンボジアでは、糖尿病が診断されないまま進行し、合併症を伴って入院に至る患者さんが少なくありません。糖尿病を抱える患者さんは傷が治りにくく、入院が長期化する傾向があります。JHMCに来院する患者さんの約半数も糖尿病を抱えています。一方で、これまで糖尿病について学ぶ機会が十分でなかったことから、病気の理解や自己管理が難しく、入退院を繰り返してしまうケースもみられます。

また、以前のJHMCでは、糖尿病を抱える患者さんに対して医療者による処置や血糖値管理が中心となっており、患者さん自身の生活習慣の改善やセルフケアを支援する体制は発展の途上にありました。

こうした背景を踏まえ、井口看護師(昨年8月よりJHMCで1年間の活動に参加)は、昨年11月に糖尿病チームを立ち上げました。

現在は、医療者自身が糖尿病について学びを深めるとともに、入院中の患者さんに対して、糖尿病の基礎知識や具体的な栄養の摂り方、運動方法についてのレクチャーを行っています。今後は管理シートを作成し、入院中から退院後のフォローアップに至るまで、栄養摂取や運動量を可視化しながら継続的に支援していく体制の構築を計画しています。

ジャパンハート カンボジア 医療 看護師

井口看護師は、糖尿病チームでの活動を通して、「共に考える」ことを大切にしていると語ります。その先には、帰国後もカンボジア人医療者が自ら考え、主体的に行動していけるようなチームづくりを見据えています。

患者さんの健やかな生活を想うソクヘン看護師

手術部位感染症(以下、SSI)チームは、JHMCで多く見られていた乳がん手術後の創部感染を防ぐために発足しました。昨年度は、乳がん手術におけるSSI発生率の目標値であった20%を大きく下回り、9%を達成しました。

JHMCで4年目を迎えるソクヘン看護師は、SSIの発生によって入院が長期化し、苦しむ患者さんの姿をこれまで数多く目にしてきました。SSIはなぜ発生するのか、どのようにすればその発生を減らし、少しでも早く患者さんが元の生活に戻れるのか。こうした思いから、彼女はSSIチームに加わりました。

ジャパンハート カンボジア 医療 看護師

現在はチームリーダーとして、今年度の目標である「SSI発生率0%」および「乳がん以外の疾患におけるSSI発生率の低減」に向けてチームを牽引しています。

ソクヘン看護師のお話から感じられたのは、患者さんの健やかな生活をまっすぐに願う、看護師としての真摯な姿勢です。彼女は「患者さんに健康で安心して過ごしてほしい」と繰り返し語ります。

SSIチームの目標達成には、チームメンバーだけでなく病院全体を巻き込む必要があり、その難しさを感じることもあるといいます。それでも、ワーキンググループ同士が連携することで、JHMC全体の医療の質がさらに高まっていると力強く語ってくれました。

ジャパンハート カンボジア 医療 看護師

国境を越え、ともに築く医療のかたち

今回、日本人看護師とカンボジア人看護師のお二人にお話を伺い、強く感じたのは、国籍が異なっても「患者さんに寄り添い、患者さんを想う気持ち」は変わらないということです。お二人の活動の原点には、患者さんの入院生活に伴う痛みや苦しみを少しでも軽減したい、そして入退院を繰り返すことなく安心して生活してほしいという共通の思いがありました。

国籍の異なる看護師が共に働く現場では、言語の壁や医療のスタンダードの違いといった課題も存在します。しかし、目指す方向は同じです。患者さんが安心して日々を過ごせるよう、それぞれのグループや個人が多様な視点から医療の質向上に取り組み、互いに協力し合っている姿が印象的でした。

ジャパンハート カンボジア 医療 看護師

JHMCのワーキンググループは、カンボジア国内の病院が二拠点に分かれた後、新たな体制のもとで再始動したばかりです。どのチームも、医療の質をさらに高めるために「自分たちにできることは何か」を問い続けながら、挑戦を重ねていきます。

 

長期学生インターン 駒場万由子

 

▼プロジェクトの詳細はこちらから
https://www.japanheart.org/tag/cambodia/

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