こんにちは、栄養管理部の須賀です。
ジャパンハートアジア小児医療センターが開院してから、まもなく5ヶ月が経とうとしています。新しい環境の中で試行錯誤を重ねる日々ですが、私たち栄養管理部が大切にしている想いは変わりません。それは、病院給食が入院する子どもたちの治療や成長を支える重要な役割を担うという認識を、現場に着実に根づかせていくことです。
現場での実践を重ねる中で、私たちは日本とカンボジアにおける病院給食の捉え方の違いにも気づき始めました。今回は、その違いを踏まえながら、子どもたちの治療を支える食事について考えていきます。
病院給食の仕組みと考え方の違い
日本の病院給食は、患者一人ひとりの年齢や病状、治療内容、咀嚼・嚥下機能に応じて提供される治療の一部として位置づけられています。配膳は個別配膳が基本で、患者ごとに食札を載せたトレーに、適切な量と形態の食事が用意されます。このような仕組みがあるからこそ、患者一人ひとりに合わせた栄養管理が可能となっています。
一方、カンボジアでは病院給食という仕組み自体が一般的ではありません。当院では、料理が入った鍋を病棟の廊下に運び、調理スタッフがその場で盛り付け、付き添い家族が受け取りに来るというスタイルです。カンボジアでは、食事を「皆で分け合うもの」と捉える価値観が強いように感じます。カンボジア人の調理スタッフが、善意から量を多く盛り付けてしまう場面も見られ、給食が配給に近い形で提供されるように感じることもあります。

子どもたちと付き添い家族が床にござを敷いて、一緒に食事をとる様子(カンボジアの伝統的な食事風景)
治療と発達の視点から食事の摂取状況をどう捉えるか
こうした背景のもと、子どもが食事を十分に食べられなかった場合に、付き添い家族が給食の残りを食べてしまうという状況も観察されます。これは「余った食事を無駄にしない」という生活文化に基づく行動で、決して悪意によるものではありません。しかし医療の文脈においては、子どもが食べなかったという事実そのものが重要な情報になります。給食は患者の治療への寄与を目的として提供されるものであり、摂取状況は治療の評価にもつながります。
また、食事を介助するにあたり、子どもの発達段階への配慮が十分でないケースも見られます。噛む力が育ち始めている年齢であっても、食べさせやすいことを理由に、付き添い家族があえてペースト状の食事を与え続けてしまう例があります。子どもたちは治療を受けながらも、咀嚼や嚥下といった摂食機能を少しずつ獲得していく発達過程にあります。「食べる力を育てる」という視点を持つことが、小児への栄養支援には欠かせないと考えています。

1歳の患者の付き添い家族がペースト状の食事を用意する様子(子どもの歯の萌出状況にあわせ、歯茎で噛める食形態で、咀嚼の練習をするようすすめました)

スプーンで食事介助をする様子
食と栄養を通じて、子どもの治療と成長を支える
私たちは、病院給食が入院する子どもたちの治療や成長を支える重要な役割を担うという認識を、現場全体に浸透させていくことを目指しています。
新たな環境の中で、子どもたちにとってより良い食事のあり方を探りながら、食と栄養を通じた支援をこれからも着実に積み重ねていきます。
栄養管理部 須賀智絵
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