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【カンボジア医療活動】【嘉数真理子医師インタビュー・後編】患者と家族の「幸せ」を問い続けて―9年間の原動力と、これからの歩み

up 2026.05.04

長期ボランティア医師として約9年にわたり現場の最前線で無償の活動を続けてきた、嘉数真理子医師。
長きにわたるジャパンハートでの活動を終えた今、改めて自身の活動について振り返ってもらいました。

【嘉数真理子医師インタビュー・後編】患者と家族の「幸せ」を問い続けて―9年間の原動力と、これからの歩み

インタビュー前編はこちら

忘れられない患者たち

ー大変なことはたくさんあったと思いますが、特に記憶に残っていることはありますか?
小児病棟のオープン直後に受け入れた、腎腫瘍のシンホアちゃんのことは今でも覚えています。
全身麻酔をかけて生検を行ったのですが、お腹が大きく膨れて肺を圧迫しており、何時間も抜管ができなかったんです。
数時間後に無事に目が覚めて管を抜くことができ、本当に胸をなでおろしました。
バタバタするなかで十分なケアができないまま子どもが亡くなってしまうことやそのようなときにご家族への対応まで手が回らないことも多く、そのたびに辛さを感じていました。

【カンボジア医療活動】【嘉数真理子医師インタビュー・後編】患者と家族の「幸せ」を問い続けて―9年間の原動力と、これからの歩み

【カンボジア医療活動】【嘉数真理子医師インタビュー・後編】患者と家族の「幸せ」を問い続けて―9年間の原動力と、これからの歩み

シンホアちゃん

ーコロナ禍も大変な時期でしたね。
手術のタイミングをずらさざるを得ず、手遅れになってしまったケースもありました。
ただ、日本人医療者が渡航できなかった分、現地スタッフが医療職・事務職を問わず本当によく頑張ってくれて、「自分たちでやらなければ」という意識が芽生えたのはコロナがきっかけだったと思います。
その頃から、彼らの成長のスピードも上がりましたね。

【カンボジア医療活動】【嘉数真理子医師インタビュー・後編】患者と家族の「幸せ」を問い続けて―9年間の原動力と、これからの歩み

ー長年活動を続けてこられた原動力はどこにあるのでしょうか?
ボランティアをしているという意識はあまりなく、やりたいことをやらせてもらっているという感覚が強いです。
ジャパンハートの病院があるおかげで、子どもの命を助けることだけに集中できる環境がある。
患者さんやご家族、スタッフが信頼して付いてきてくれることも大きな支えです。
助けられた子の笑顔はもちろん、「最期まで見てくれてありがとう」というご家族の言葉が、何よりの原動力になっています。

【カンボジア医療活動】【嘉数真理子医師インタビュー・後編】患者と家族の「幸せ」を問い続けて―9年間の原動力と、これからの歩み

リマちゃんが教えてくれたこと

ー活動のなかで特に印象に残っているお子さんはいますか?
再発後も治療の選択肢はあったのに、家に帰ることを選んだリマちゃんという子のことが忘れられません。
終末期ということもあり、私たちも気になってお家を訪ねることにしたのですが、車で3時間、さらにフェリーで1時間かかる場所で、電気も水道も通っていない家に暮らしていました。

家を訪れた日にリマちゃんはすでに亡くなっており、ご家族はお葬式の準備をしているところでした。
「わざわざ来てくれてありがとう」と喜んでくださったのですが、そのときになって初めて、あれほど遠い場所から病院へ通い続けてくれていたこと、お母さんが小さなきょうだいの世話をしながらリマちゃんの治療を支えてくれていたことを知りました。
「何かあったら来てください」と気軽に言っていたことをとても反省しました。

医療を提供するだけでなく、その子の暮らしや家族の状況まで想像しなければ、本当の意味で患者さんを幸せにはできない——そのことを、リマちゃんが教えてくれました。

スタッフとともに歩んだ9年間

ーカンボジア人スタッフたちと働くなかで、苦労したことはありましたか?
文化や感覚の違いもあって、活動当初はよく衝突しましたね(笑)。
患者さんが待っていても決まった時間に休憩を取るのがカンボジアの文化で、「昼の休憩中に患者さんを診ることはできない」とはっきり言われることもありました。
当時のドクターたちはみな新人で頼りなかったのですが、そのなかで今も活躍しているのがシーパン医師です。
今では新病院を担う医師にまで成長しており、本当に心強い存在です。

【カンボジア医療活動】【嘉数真理子医師インタビュー・後編】患者と家族の「幸せ」を問い続けて―9年間の原動力と、これからの歩み

シーパン医師(左)と嘉数医師

ーシーパン医師がここまで成長した理由は何だと思いますか?
素直さが一番の強みだと思います。指摘されたことを素直に受け止めて吸収するので、教える側もやりがいを感じられます。
ただ従うだけでなく、しっかり自分で勉強して、違うと思ったときは自分の意見を言える。
そのバランスが彼の成長を支えているんだと思いますね。

9年間で変わったこと、これからのこと

ージャパンハートでの活動を通じて、ご自身に変化はありましたか?
医療者・非医療者を問わず、志をともにする仲間にたくさん出会えたことが、何より大きな変化です。
変化が激しくイレギュラーなことばかりの環境だったからこそ、柔軟性が身につき、さまざまなことへの寛容さも増したように思います。

ージャパンハートで働くことの良さは何でしょう?
日本で医療をしていると、医療者以外の方と関わる機会はなかなかありません。
でもここでは、さまざまな想いを持って支援してくださる方々と交流でき、多様なバックグラウンドを持つスタッフやインターン、学生の話を聞ける。そういった機会が本当に貴重です。
支援者の方とお話しすると、応援してくださっている気持ちがひしひしと伝わってきて、世の中の優しさを感じます。

ー今後のジャパンハートに期待することは?
カンボジアでの活動も10年目を迎え、知名度も上がり、スタッフも育ってきました。
これからも活動を続けて発展してほしいですし、スタッフには自分たちの仕事に誇りを持って取り組んでほしいと思います。
そして、患者さんとご家族に最期まで寄り添う——日本の医療の良さをこの病院で届け続けてほしい。
「生まれてきてよかった」と思えるケアができているかを常に自問自答しながらやってきたので、その姿勢をぜひ受け継いでいってほしいです。

【カンボジア医療活動】【嘉数真理子医師インタビュー・後編】患者と家族の「幸せ」を問い続けて―9年間の原動力と、これからの歩み

ー日本に戻ってからはどんなことをされる予定ですか?
カンボジアでは医療費が無料でも、家族が付き添うと生活が成り立たなくなるために治療を途中で諦めてしまうケースを何度も目にしました。
医療だけでは患者さんを本当の意味で幸せにはできない——そのことを骨身にしみて感じています。

日本でも同じことをやりたいと思っていて、まずは地元・沖縄で小児クリニックを開く予定です。
沖縄は子どもや女性の貧困率が高い地域でもあるので、クリニックを拠点に行政と連携しながら福祉や教育ともつなげていきたいと考えています。
カンボジアに滞在することは難しくなりますが、遠隔で現地の医療者のサポートを続けて行きたいと思います。

ーありがとうございます。最後に、支援者の皆さんへメッセージをお願いします。
まさかこんなに長く続けることになるとは思っていませんでしたが、約9年にわたり活動できたのは、応援してくださった皆さんのおかげです。
私はジャパンハートから離れることになりますが、カンボジアで築き上げてきたものはこれからも続いていきます。
これからも変わらず応援していただけたら嬉しいですし、私自身もずっと応援しています。
本当にありがとうございました。

【カンボジア医療活動】【嘉数真理子医師インタビュー・後編】患者と家族の「幸せ」を問い続けて―9年間の原動力と、これからの歩み

▼プロジェクトの詳細はこちらから
https://www.japanheart.org/tag/cambodia/

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