活動レポート

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【ラオス】「つながる医療」への挑戦―ラオス小児がんプロジェクト地方連携の取り組み

up 2026.04.11

サバイディー!(ラオス語で「こんにちは!」)ラオスオフィスの松原です。
2026年2月、私たちはラオス国立子ども病院と連携して進めている小児がんプロジェクトの一環として、ラオス南部地域の県病院を訪問しました。

「届かない医療」があるという現実

本プロジェクトでは、ラオス国内各地から対象となる患者さんを受け入れ、首都ヴィエンチャンの国立子ども病院にて治療を行っています。一方で、プロジェクトの認知はまだ十分とは言えず、特に地方では、地理的・経済的な要因などにより、患者さんが適切なタイミングで専門的な治療につながらないという課題があります。

首都よりも“近い外国”という選択

ラオス南部は交通網が限られており、空港がある都市は一部に限られ、飛行機は一般の人々にとって高価な移動手段です。また鉄道は通っておらず、自家用車や乗り合いバス、トゥクトゥクなどが主な交通手段となっています。ヴィエンチャンから南部の主要都市へは国道が整備されつつあるものの、その国道沿いの都市に出るまでに、何時間もかかる村や集落に住んでいる人も少なくありません。
さらに、中南部の主要都市の多くはメコン川沿いに位置しており、首都ヴィエンチャンへ向かうよりも、川を渡ってタイへ行く方が距離的に近い地域もあります。実際に、一部の県病院ではタイ側の病院への搬送体制が整備されていますが、タイでの治療費は高額であり、十分な治療を受けられずに帰国するケースも多いのが現状です。

ジャパンハート ラオス 医療 小児がん

11月に手術を受けた南部在住の患者さんご自宅を訪問。山に囲まれた未舗装の細い道の先にあった。

10時間以上の道のりの先にあるもの

こうした背景を踏まえ、今回の訪問では、南部地域の県病院との連携を強化し、対象となる患者さんが見つかった際にスムーズに紹介してもらえる体制づくりを目的に、複数の病院を訪問しました。
訪問はヴィエンチャンから車で国道に沿って各都市を巡る形で実施しましたが、最南端の県までは約670km、直接移動する場合でも10時間以上かかる道のりです。道路状況は改善されつつあるとはいえ、患者さんやご家族にとって、首都まで移動することの大きな負担を改めて実感する機会となりました。
一方で、がん治療は長期にわたることが多く、国外での治療は経済的・精神的な負担も大きくなります。私たちのプロジェクトでは、治療費だけでなく交通費や生活費の支援も行っており、国内で治療を受けられる選択肢があることを知っていただくことも重要だと考えています。
訪問には、プロジェクトパートナーである国立子ども病院より、腫瘍内科部長のソンペット先生にもご同行いただきました。各病院では、ソンペット先生自ら小児がんの対象疾患や早期発見のポイントについてレクチャーを行うとともに、現地の医療者の方々と意見交換を行いました。

ジャパンハート ラオス 医療 小児がん

ソンペット先生によるレクチャーには、どの病院でも大勢の医療者が参加した。

地道な訪問が、ひとりの子どもにつながった

訪問先では、現地病院の医師が熱心に耳を傾けてくださる様子や、具体的な質問が多く寄せられる場面もあり、今後の連携につながる手応えを感じる機会となりました。
そして実際に、訪問の翌日、レクチャーにも参加していた現地医師から「入院中の患者さんが対象疾患の可能性がある」との連絡を受けたのです。私たちはヴィエンチャンへ戻る途中でしたが、急遽病院へ立ち寄り、ソンペット先生とともに診察を行いました。
その後の検査の結果、腎芽腫が強く疑われ、患者さんとご家族も治療を希望されたことから、国立子ども病院へ転院し、治療が開始されました。
これまでであれば、こうした患者さんが専門的な治療につながらず、選択肢を持てないまま治療を諦めざるを得なかった可能性もあります。今回のように、現地の医療機関とのつながりを通じて、ヴィエンチャンでの治療という選択肢が現実のものとして届き始めていることは、私たちにとって大きな意味を持つ出来事でした。

ジャパンハート ラオス 医療 小児がん

現地医師から紹介された患者さんを診察するソンペット先生。

現場で奮闘する医療者の声

プロジェクト担当 根釜看護師

 

ジャパンハート ラオス 医療 小児がん
これまでの活動を通して、ラオスの広大な国土や交通・経済的な制約の中で、すべての地域をカバーすることの難しさを痛感しました。そのため、県病院までたどり着いた患者さんを、いかにヴィエンチャンでの治療につなげていくかが重要だと感じています。
一方で、地方の医療者の方々に対象疾患やプロジェクトの支援内容をお伝えすることで、実際に治療につながる可能性があることを実感しました。どの病院でも限られた資源や環境の中で患者さんに真剣に向き合う姿勢があり、今後は情報共有と連携のあり方が鍵になると感じています。
また、今回の訪問をきっかけに実際に患者さんの治療につながったことは非常に印象的でした。もし出会えていなければ治療につながらなかったかもしれない子どもが、今ヴィエンチャンで治療を受けていることを思うと、大きな意味を感じています。
今後は、オンラインレクチャーなども活用しながら地方病院との関係性を維持し、疑いの段階でも相談・紹介いただける体制づくりを目指していきたいと考えています。

国立子ども病院 腫瘍内科部長 ソンペット医師

 

ジャパンハート ラオス 医療 小児がん
今回の訪問を通して、プロジェクトチームと地方病院との連携がより深まり、相互理解が進んだことを大変嬉しく思います。こうした協力関係を重ねることで、より多くの患者さんを適切な治療につなげることができると感じています。
また今回の訪問では、手術後に元気に生活している患者さんや、新たに腎腫瘍が疑われる患者さんとも出会いました。こうした出会いは、支援の必要性を改めて実感する機会となりました。
病気は誰にでも起こり得るものですが、治療できる可能性のある病気もあります。地方で患者さんが見つかった際には、ヴィエンチャンでの治療という選択肢があることを知っていただき、適切なタイミングでつなげていくことが重要です。今後も連携を強化しながら、より多くの子どもたちに治療の機会を届けていきたいと考えています。

これからにつなげていくために

ラオスのように交通や医療資源が限られる環境では、すべての医療機関を網羅的に訪問することは容易ではありません。だからこそ現時点では、各地域の中核となる県病院との連携を強化し、少なくともそこにたどり着いた患者さんが適切な診断と紹介につながる体制を築くことが重要だと考えています。
今後も引き続き、地方の医療機関との連携を深めながら、より多くの子どもたちに適切な医療が届くよう取り組んでまいります。

ジャパンハート ラオス 医療 小児がん

ラオスオフィス 松原遼子

 

▼プロジェクトの詳細はこちらから
https://www.japanheart.org/tag/laos/

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