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【ラオス】「治療すれば助かる命」を、次へつなぐ―小児がんプロジェクト2025年11月 手術活動報告

up 2026.01.17

ラオスの国立子ども病院と協力し、ジャパンハートが進める「小児固形がん周手術期技術移転プロジェクト」。
本プロジェクトは日本の専門医と現地医療者がチームとなり、ラオス国内で小児がん治療を完結できる体制づくりを目指しています。

2025年11月、子ども病院において今年2回目となる手術活動を実施。小児固形がんを含む計5症例の手術を行いました。
今回はその活動の様子と現場で患者さんと家族に寄り添い続ける日本人看護師の想いをお伝えします。

【ラオス】「治療すれば助かる命」を、次へつなぐ―小児がんプロジェクト2025年11月 手術活動報告

▲手術に臨む川久保先生(右)と石本先生(左)

積み重ねの中で迎えた、11月の手術活動

11月の手術活動はこの数日間だけで成り立ったものではありません。
実際の手術機会が限られるラオスにおいて、その効果を最大化するため、私たちは事前準備を重ねてきました。

日本人医師・看護師から月1回、オンラインも活用しながら症例検討や化学療法、術中・術後の安全管理に関するレクチャーを実施。
活動直前には日本とラオスをつなぎ、今回手術対象となる症例について治療方針を共に検討しました。

また10月には、国立子ども病院の副院長、外科部長、腫瘍内科部長がプロジェクトパートナーである九州大学病院を訪問し、日本の病院における患者・医療者双方の安全を守る仕組みを見学。
この経験を踏まえ、プロジェクトを担当する根釜看護師は現地で外科チームとともに手術室に入り、ガーゼカウントなど日本で実践されている安全管理を11月の活動に向けて指導しました。

こうした積み重ねの上に迎えた11月の手術活動には九州大学病院から小児外科医の川久保先生と石本先生にお越しいただき、カンボジアのジャパンハートの病院からも日本人看護師2名が参加。
活動期間中は毎朝のカンファレンスや回診にも参加し、手術だけでなく術後管理や安全管理も含めた包括的な技術移転を実施しました。

さらに、九州大学病院訪問をきっかけに、デジタル技術を活用した支援や病理診断体制の強化の可能性についても検討を進めています。

【ラオス】「治療すれば助かる命」を、次へつなぐ―小児がんプロジェクト2025年11月 手術活動報告

▲オペ室内での安全管理のひとつ、タイムアウトの練習中

【ラオス】「治療すれば助かる命」を、次へつなぐ―小児がんプロジェクト2025年11月 手術活動報告

▲今回の活動期間中にビエンチャンにある病理センターを見学した

患者さんと家族のエピソード

手術を受けた5名の患者さんとその家族に共通するのは経済的な余裕がなく、首都ビエンチャンまでやって来て高額な費用のかかる手術を受けるハードルがとても高いということです。
ジャパンハートのサポートがなければ、治療を諦めていたかもしれない人たちばかりです。
今回はその中から2名の患者さんを紹介します。

多治療が取り戻した、家族の時間

最終日に手術を行った右卵巣腫瘍を抱える12歳のタイちゃん。
彼女が子ども病院を受診したのは8月頃のことです。診察を通じて手術の必要性が確認され、11月の手術活動での実施を待ちわびていました。

タイちゃんは既にお母さんを亡くしており、おばあちゃんに大切に育てられてきました。
子ども病院で初めて出会った際、付き添っていたおばあちゃんが私たちに「何とか助けてあげたい」と切実な思いを語ってくれたことが強く印象に残っています。

腫瘍は大きく、破裂のリスクを抱えた状態で日常生活を送らざるを得ませんでしたが、痛みや不安があったはずの入院期間中もタイちゃんはいつも明るく、笑顔で挨拶をしてくれました。

年齢以上に気丈に振る舞う姿の一方で、手術を目前に控えた頃にはさすがに緊張した面持ちを見せることもありました。
そんな彼女におばあちゃんも心配そうに寄り添います。

無事に手術を終えたあと、ほっと安堵の表情を浮かべるおばあちゃんの姿を見て、治療が病気を治すだけでなく、家族が安心して共に過ごす時間を取り戻すことにもつながるのだと、改めて感じさせられました。

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▲常に明るいタイちゃんはカメラを向けるといつもポーズをとってくれる

「手術すれば助かる」その言葉を信じて―

カフィーくんは生後3か月の男の子。左腎腫瘍の患者さんです。
ラオス北部のルアンパバーンにある病院から紹介され、いったんは子ども病院を受診したものの、地元に戻った後、連絡が途絶えてしまいました。

日本の医師からは「この病気は手術すれば助かる可能性が高い。何とか病院へ来てもらえないか。」との言葉がありました。
それを受け、一念発起した子ども病院の腫瘍内科部長やプロジェクトスタッフがあらゆる手段で家族への連絡を試み、ようやく再びつながることができました。

現地医療者の粘り強さと日本側の後押しが重なり、ついに手術が実現しました。
術後、ご両親は何度も感謝の言葉を伝えてくれました。

病気を早期に発見・診断し、子ども病院へ紹介してくれた地元病院の存在もカフィーくんの命を救った大きな要因です。
このような各地の病院との連携を増やしていくことが、更に多くの患者さんとつながるために重要であると考えています。

【ラオス】「治療すれば助かる命」を、次へつなぐ―小児がんプロジェクト2025年11月 手術活動報告

▲手術後のカフィーくんとお母さん

見えてきた課題と、次の一歩

今回の手術活動を含め、プロジェクト全体を通じて一貫して向き合ってきた課題があります。
それは治療すれば助かる可能性のある患者さんにこのプロジェクトの存在を知ってもらい、実際に治療へとたどり着いてもらうこと――。

ラオスでは医療環境や地理的・経済的な制約によって、治療につなげきれないケースがあるのが現実です。
「何とか治療をしたいのに、診断ができない」「診断できても、次につなげられない」――この状況をどう減らしていくかはプロジェクトが次の段階へ進むための重要なテーマであり続けています。

一方で、実績を積み重ねること自体が次の患者さんにつながっていくという、小さくても確かな手応えがあるのも事実です。

紹介元の病院との関係が深まり、現地医療者の中で「ここにつなげば治療できる」という認識が少しずつ共有されていく。
その積み重ねの先に、治療へとたどり着ける子どもが一人、また一人と増えていくことを私たちは願っています。

【ラオス】「治療すれば助かる命」を、次へつなぐ―小児がんプロジェクト2025年11月 手術活動報告

▲手術を終えた子どもを見守るご家族は、皆さんほっとして穏やかな表情

 
 
こうした現場での葛藤や希望、そして「それでも続けたい」という想いを、次に紹介する根釜看護師の言葉は、率直に語っています。

プロジェクト担当看護師の言葉

ラオスの人口は日本の愛知県ほどであり、私たちがサポートしている固形がんは日本でも症例が多くありません。
さらに、ラオスの医療環境や文化的背景などさまざまな課題がある中で、対象となる患者さんとつながること自体が容易ではありません。

ラオスで活動することには多くの困難があります。
一つの例として、ラオスの地方部では日々の生活を送るのが精一杯という現実があります。
土地を売って病院への交通費を工面しても、高額な治療費は払えず、帰宅を選択せざるを得ないご家族もいます。

「これがこの子の寿命だった」
「これ以上痛い思いをさせたくない」

そんな言葉の裏にある経済的困窮に、私は何度も葛藤してきました。

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▲プロジェクト担当の根釜看護師。「助かるはずの命」を救うために日々奮闘している

確かに、家族と寄り添い暮らす彼らは日本人の目にはとても幸せそうに映ります。
しかし、「治療すれば助かるはずの命」をそのままにはしたくない。
救われた命の先には新しい家族や次の世代への繋がりが待っているからです。

「この子の寿命を延ばしてくれてありがとう」

「ジャパンハートに出会わなければ、治療ができず助からなかったかもしれません。本当にありがとうございます。ラオスでは、いまだに助からない命がたくさんあります。この活動を長く続けて、一人でも多くの命を救ってほしい。」

手術を受けたご家族からいただいたこれらの言葉に、私たちがここで活動している意義を感じました。

私たちが初めてプロジェクトとしてサポートした腎芽腫の患者、ソンサイくん。
彼は化学療法と手術、そして術後の治療を乗り越え、約1年にわたる闘病生活を終えようとしています。

初めて出会ったときは、まだ生後2ヶ月でした。今では1歳を迎え、すくすくと元気に成長しています。
早期に治療を開始し、適切なケアを届けることができれば、救える命があります。
ソンサイくんとその家族のような笑顔を一人でも多く守れるよう、これからも私たちは全力を尽くしてまいります。

【ラオス】「治療すれば助かる命」を、次へつなぐ―小児がんプロジェクト2025年11月 手術活動報告

▲今回の活動で、7月に自ら執刀したソンサイくんと再会した川久保先生

「この活動を続けてほしい」というご家族の切実な願いが、今の私の原動力です。
一人の看護師としてできることは限られているかもしれません。
それでも、目の前の「助かるはずの命」を一つでも多く救うために、これからも真摯に活動に向き合ってまいります。

命をつなぐために、これからも

治療すれば助かる命がある――。

その命にたどり着くまでには、国境を越えた多くの人の連携が必要です。
ジャパンハートは現地医療者、日本の専門医、そして支援してくださる皆さまとともに、一人でも多くの子どもたちの未来を守るため、これからも歩みを止めずに活動を続けてまいります。

【ラオス】「治療すれば助かる命」を、次へつなぐ―小児がんプロジェクト2025年11月 手術活動報告

▲子ども病院の外科チームと

ラオスオフィス
松原 遼子

 

▼プロジェクトの詳細はこちらから
ラオス 国立子ども病院での小児固形がん周手術期技術移転プロジェクト

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