活動レポート

← 活動レポート:トップへもどる

ジャパンハートが届ける医療とその現場

up 2022.07.20

活動レポートをご覧いただき、ありがとうございます。
東京事務局 広報・ファンドレイジング部の中山です。

私は先月ラオスにて約2年半ぶりに行われた手術活動に、広報部門の代表として参加いたしました。
このレポートでは、手術活動への参加を通じて見た現場の光景や感じたことなどを皆様にお伝えいたします。
手術活動に参加したのは今回が初めてです。
普段画面を通してしか知らない手術活動に参加することに少々不安を覚えながら、日本にいる間に現地スタッフとの入念な事前準備を済ませ、5月下旬に私はラオスに飛び立ちました。

現地での私の主な役割は、SNSなどでの広報活動と活動のサポートです。
広報活動に関しては、現地にも広報スタッフがいるため、ある程度の分担をして作業を進めました。
私がメインで行ったのは、準備工程から活動中における写真撮影です。
首都ビエンチャンにある事務局での準備作業から、活動地であるウドムサイの病院での患者さんの受入準備、手術の実施まで、あるゆる場面で写真や動画を撮影しました。

作業はすべて自分たちで

活動中毎日撮影をしている中で、特に印象に残ったことが2つあります。
一つは、病棟の準備から手術まで、すべて自分たちで行うこと。
ラオスでの手術活動は、前述の通りラオス北部のウドムサイ県にあるウドムサイ県病院で行います。
ラオスにはカンボジアのようなジャパンハート自前の病院はありません。
そのため、手術活動で使用する手術室と患者さんの病室は病院から「借りている」のです。
(月に一度行っている診療活動もこちらの病院で実施していて、病室の一角を借りています。)

私たちが借りた病室は、普段は個室で療養されたい患者さんが使用するところで、そのうちの何室かはしばらく使われていない状況でした。
そのためウドムサイ病院に着いたその日は、スタッフ全員で病棟の掃除からスタート。
医療を届けるためには単に医療行為をすれば良いわけではない。
現場の掃除などの医療提供環境の整備から必要だということを、ここで体験しました。

ちなみに今回の活動は、8日間で計20名(予定)の患者さんを手術するという、ラオスにおいては比較的長い日程だったため、たくさんの必要物資を東京やビエンチャンから運び入れました。
これらの物資は、以前ご寄付により購入することのできたバンの座席いっぱいに詰め込み、約18時間ほどかけて病院に持っていきます。
手術で使う器具や滅菌機、薬類はもちろん、手術前診療で使うエコーなども運びました。
運転してくれるのは、ジャパンハートがラオス北部で活動する際にここ6年ほど協力してくれている現地の方です。
準備から後片付けまで、医療者・非医療者を問わず、全員で取り組むのがジャパンハートの特徴の一つです。

スタッフ全員で病棟の準備

   

必要物資の積み込みの様子

 

「人生の質を上げる瞬間」に立ち会っている

印象に残ったことのもう一つは、手術室で自分が今、患者さんの「人生の質を上げる」瞬間に立ち会っているのを感じたこと。
甲状腺の疾患は死に至るものではないことがほとんどですが、腫瘍がどんどん大きくなると日常生活に様々な支障をきたします。
今回手術を行った患者さんの多くは、20年以上甲状腺の疾患を抱えられてきた方たちです。
コロナウイルスの感染拡大によりなかなかラオスでの手術活動が叶わなかったため、大きな腫瘍をもつ患者さんたちは今回の手術を待ち望まれていました。

家族に付き添われながら緊張した様子で手術室に入る患者さんを見届けた後、私も撮影のため人生で初めて手術室に入りました。
独特の空気感のある手術室での撮影に、非医療者である私は緊張を覚えながら撮影をします。
この空気感や手術室での医師・スタッフの動きにほんの少し慣れてきたとき、ふと、“この手術で長い間この疾患を抱えてきた患者さんたちの人生が変わるのだな”と、今まさに患者さんの「人生の質を上げる」瞬間に立ち会っていることを感じ取りました。

これは、これまで画面越しにラオスやカンボジア事業部などから報告を通してのみ見ていた患者さんと直接お会いし、医療を提供するその場にいたからこそ感じることができたのだと思います。
正直なところでは、手術室に入って撮影をすることに恐怖もありましたが、実際にその現場にいられたことで、ジャパンハートが大切にし届けているものを身をもって体験できました。

患者さんに寄り添う家族の姿

手術を終えた患者さんは術後すぐは少し辛そうなものの、回復が早い方は腫瘍を摘出できたことを喜んでいました。
患者さんの隣にはいつも家族が付き添っています。
手術室に向かう際は大切な家族がこれから手術を受けることに対し不安そうな表情を見せていましたが、無事に手術が終わると少し安心した様子でジャパンハートの医療者同様に熱心に患者さんのサポートをしてくれたのが家族でした。

時折心配なことなどがあると、ジャパンハートのスタッフを呼びに来てくれる家族の方々。
今回の活動で最初に手術を受けられた患者さんにはご主人とお孫さんが付き添っていて、病棟での術後の療養中、私たちスタッフのところにご主人が来てくれたことがありました。
ご主人の手を見ると、患者さんが手術を受ける際に来ていた手術着が握られています。
その時は通訳ができるラオス人スタッフが近くにおらず、ご主人の身振り手振りをみて何とか理解するしかありませんでした。
私が理解できない様子を察してか、持っていた手術着をご主人が私に渡してくれたとき、受け取ったその手術着は濡れていて洗剤の香りがしました。
ご主人は、患者さんが着ていた手術着を洗って返しに来てくれたのです。
多少は安心できる状態であったとしても、手術を終えたばかりの家族のそばを離れるのは不安だったと思います。
洗濯している間はお孫さんが患者さんであるおばあさんを見守っていてくれたのでしょうか。
私たちを思い、洗濯をして返してくれたその優しい気遣いにとても心が温まった出来事でした。
その患者さんは退院も一番早く、帰る日はずっと笑顔で、ご主人とお孫さん3人そろってとても嬉しそうな様子で帰って行かれました。

医療を届けるために必要なこと

手術活動を行うにあたり、私のような非医療者でもできることはたくさんありました。
例えば、オペ用のガウンを畳む、手術室で履く靴を洗う、病棟の掃除。
今何をすべきで、何ができるのか。
周囲の状況を見て、自分ができることを探しました。
ガウンの用意一つとっても、安全でスムーズな手術を行うため、畳み方やまとめ方などにそれぞれ決まりがあります。
私にとってはそれらすべてが、初めて触れることで、尚且つ勉強でした。

一件の手術は、このような非医療者でもできる作業などたくさんの準備工程を経たうえで、やっと成り立ちます。
「医療の届かないところに医療を届ける」ためには、すべての人・すべての作業が必要であり、医師・看護師が手術や患者さんのケアに集中できる環境を作ることが私のような非医療者の最大の役割なのだと、今回の手術活動に参加して認識しました。

活動の進行状況について打ち合わせするスタッフ

翌日の手術の準備をする看護師

 

最後に

いつもジャパンハートの活動にお心をお寄せいただき、誠にありがとうございます。
ご支援くださる皆様に、改めて深く感謝申し上げます。
また、今回の手術活動の実施にあたりスケジュールの調整から患者さんたちの退院まで尽力したジャパンハートの医師・看護師・現地スタッフ、私たちの活動を理解し協力してくれたウドムサイ県病院の医師・看護師・スタッフにも心から感謝しています。

引き続き「すべての人が‟生まれてきて良かった“」と思う社会を実現するため、ジャパンハートの広報活動に邁進してまいりますので、今後ともあたたかくお見守りいただけますと幸いです。

広報・ファンドレイジング部 中山佳子

 

▼プロジェクトの詳細はこちらから
ラオス | 北部・ウドムサイ県での甲状腺疾患治療事業並びに技術移転活動

Share /
PAGE TOP