サバイディー!(ラオス語で「こんにちは!」)ラオスオフィスの松原です。
ラオスの首都ビエンチャンで推進中の小児固形がん周手術期技術移転プロジェクト(以下、小児がんプロジェクト)。
手術における技術や安全管理の指導だけでなく、術前・術後の化学療法も指導範囲に含まれています。2025年6月には、長年カンボジアのジャパンハートこども医療センターで小児がん治療に取り組んでいる嘉数真理子医師が、プロジェクトパートナーである国立子ども病院(以下、子ども病院)を訪問し、化学療法の指導や、現在サポート中の患者さんの診察を行いました。今回はその活動の様子をご報告します。
ラオスの医療者に広がる意欲と関心
子ども病院の腫瘍内科では、既に多くの種類の小児がんに対する化学療法を自ら実施しています。しかし、外科と緊密に連携しながら、病気の状態がより手術に適した状態になるよう、治療のスケジュールを柔軟にコントロールするやり方はほとんど経験がなく、嘉数医師には昨年からオンラインレクチャーなどを通じて、ご自身のカンボジアでの経験も踏まえた指導を継続的に実施いただいています。
今回の活動においても化学療法に関するレクチャーを対面で実施したところ、腫瘍内科の医師・看護師を中心に多くのスタッフが参加してくれました。中には「ぜひ聞きたかったので、夜勤明けでいったん帰宅してから来ました。」というモチベーションの高い看護師も。質問もたくさん飛び交い、非常に充実したセッションとなりました。
また、腫瘍内科部長のソンペット医師と、患者さんの治療方針や化学療法のスケジュールについてディスカッションを行いました。お二人は普段はチャットグループでコミュニケーションを取っていますが、対面ではより活発に意見交換をされており、治療に関する今後のやり取りが更に円滑になることが期待されます。
▲ 嘉数医師によるレクチャーの様子。参加者は過去最大人数で、質問も多く寄せられました。
▲治療方針についてディスカッションする嘉数医師とソンペット医師。
手術を待つ患者さんの笑顔のためにできること
7月の手術活動に向けて、ジャパンハートで治療サポート中のソンサイくんの診察を行いました。ソンサイくんは2月に子ども病院を訪れた腎芽腫の患者さんで、手術に向けて化学療法を頑張っています。嘉数医師へニコニコと笑いかけるソンサイくんに、周囲も思わずほっこり。嘉数医師から治療が順調に進んでいることを伝えると、ご両親もほっとした表情を見せてくれました。
また、プロジェクト開始当初から、子ども病院からはミキシング業務(輸液や薬剤を混合して抗がん剤を準備すること)が安全に行えているか確認してほしい、との要望が上がっており、今回の活動でも嘉数医師にミキシングルームを視察いただきました。今後、化学療法を実施する環境や体制についてのサポートも充実させていきたいと考えています。
レクチャーや診察の合間には、ビエンチャン市内にある輸血センターと、国立健康科学大学内の検査センターを訪問しました。検査センターはラオス国内で数少ない生体検査を実施できる機関です。小児固形がんの治療においては、生体検査で診断を確定させて治療内容を決定することも多く、今後ラオス国内で小児固形がんの治療を完結できるようにするためには、生体検査による診断技術向上が不可欠です。小児がんプロジェクトでは検査センターに対する直接的な支援は対象となっていませんが、ラオスの小児がん治療に必要な機関として、どのように継続的に関与していけるか模索中です。
▲ 嘉数医師の診察中、終始ご機嫌のソンサイくん。
▲ 抗がん剤を準備するミキシングルーム見学の様子。
▲ 検査センターの設備を視察。
限られた環境で最善を尽くす彼らに敬意を
最後に嘉数医師からのメッセージの一部をご紹介します。
「子ども病院の医療者たちと話していてわかったのは、彼らがとても熱心に治療に取り組んでおり、既にがんの治療をしっかり行っていることです。限られた環境の中で、最善を尽くしているのがよく理解できました。
まだ治療ができていない部分に対して私たちがサポートをし、ラオスで治療が完結できるようにしていきたいと考えています。」
▼ 嘉数医師へのインタビュー動画全編はこちら ▼
(ジャパンハートラオスFacebookページ)
https://www.facebook.com/share/v/1AqkZn1N1y/
小児がんプロジェクトは、日ごろからご支援くださる皆様のおかげで、一歩ずつ、しかし確実に成果を出し始めています。
今後もラオス事業への応援をよろしくお願いします!
ラオスオフィス 松原遼子
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