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【カンボジア】医療を届け、医療を育てる ― 2025年 カンボジア事業の振り返り ―

up 2025.12.29

ジャパンハート カンボジア 医療

2025年を振り返ると、まず思い浮かぶのは、多くの方々の支えの存在です。 2025年は、ジャパンハート全体にとってはもちろん、カンボジア事業にとっても大きな節目の一年であり、同時に、多くの方々に支えられながら歩んできた一年でもありました。

私たちがこの国で活動を続け、医療を届けてこられた背景には、常に皆さまの存在がありました。日々の診療や手術、新たな取り組みの一つひとつは、決して現場だけで成り立つものではなく、皆さまからの継続的なご支援の上に築かれています。

この一年を振り返ることは、決して簡単ではありません。
それほどまでに多くの出来事があり、多くの挑戦と積み重ねがありました。

本レポートでは、その中でも新病院の開院、出張手術活動、人材育成の三点を中心に、2025年の歩みを振り返ります。

三年の歩みが形になった一年

ジャパンハート カンボジア 医療

2025年を振り返るうえで、最も象徴的な出来事は、ジャパンハートアジア小児医療センターの開院です。
10月31日、新病院の開院式を無事に終え、本格始動からまもなく2か月が経とうとしています。

3年前に始動した新病院プロジェクトは、生まれ育った国や環境にかかわらず、すべての子どもが平等に医療を受けられるように。 その思いと今も向き合い続けながら歩んできた取り組みです。2025年に入り、工事が段階的に進むのと並行して、病院として命を支えるための準備が本格化しました。

電子カルテの導入に向けたトレーニング、実際の診療を想定したワークフローのシミュレーション、新病院開院に伴う引っ越し作業。目に見える建物の完成の裏側では、日々の診療を止めることなく新たな環境へ移行するため、細かな調整と試行錯誤が幾度となく重ねられてきました。

開院式から本格始動までの期間には、小児がん病棟の患者さんの移転、外来診療の開始、新病院で初めて行われる手術など、一つひとつの判断に慎重さが求められる場面が続きました。どの工程も、「当たり前に安全であること」を実現するための大切な一歩でした。現在活動しているスタッフに加え、これまでセンターに関わってきたOB・OGも集い、「この病院をよりよい場所にしていきたい」という共通の思いのもと、チーム一丸となって病院づくりが進められてきました。

開院当初は限られていた外来患者数も徐々に増え、現在では多い日には50〜60名、平均して30名ほどの患者さんが来院しています。12月半ば時点で、外来患者数は累計1081名、手術件数は25件に達しました。数字の一つひとつが、新病院が確かに地域の中で役割を担い始めている証でもあります。

病院は「箱」が完成して終わりではありません。ここからが本当のスタートです。
三年の準備期間を経てようやく動き出したこの場所が、子どもたちと家族にとって安心できる拠点となるよう、これからも一歩ずつ、確かな歩みを重ねていきます。

医療の届かない場所へ、原点をつなぐ活動

ジャパンハート カンボジア 医療

私たちが日々カンボジアで活動を続ける中で、出張手術活動は大きな役割を担っています。
新病院が開院した現在もジャパンハート医療センターでの診療は継続して行われており、出張手術活動は、医療を必要とする人のもとへ直接医療を届ける重要な取り組みの一つです。

医療にアクセスできる人はいまだ限られており、患者さんの中には数時間、時にはそれ以上の時間をかけ、「最後の砦」としてジャパンハート医療センターにたどり着く方もいます。こうした背景の中で、医療の届かない地域へ医療を届けると同時に、その地域の医療者を育成していくことは、持続的な医療体制を築くうえで欠かせません。

私たちのこの活動は、2009年にジャパンハートがカンボジアでの活動を開始した当初から、出張診療という形で続けられてきました。現在では、当団体の現地スタッフが連携病院の医療者とともに手術に入り、指導を行いながら経験を共有し、将来的には連携病院の医療者が主体となって手術を担える体制づくりを進めています。

2025年は、出張手術活動を合計5回実施し、約90件の手術を行いました。この90件の手術は、それぞれの地域にとって貴重な医療の機会であり、確実に次につながる一歩となっています。また、出張手術活動に加え、団体として初めての乳がん検診も実施され、より多くの人に医療を届ける体制が広がった一年となりました。

医療を未来へつなぐ、人材育成の取り組み

ジャパンハート カンボジア 医療

(腹腔鏡手術に取り組むラタナ医師)

ジャパンハート カンボジア 医療

(平松医師と共に手術を行うシーパン医師)

2025年は集中的な手術活動を約30回実施しました。これらの手術活動を通して、現地医療者は日本人医療者から多くの学びと経験を積み重ね、着実なスキルアップにつなげています。その結果、現地医療者が主体となって判断や対応を担う場面も増え、通常の診療体制では対応が難しい、より高度な医療を患者さんに届けることが可能となっています。

その一例として、2024年に団体内で初めて実施された腹腔鏡手術は、2025年に入り、実施できる回数が少しずつ増えてきました。こうした取り組みを通して、カンボジア人医師のラタナ医師は、より多くの患者さんが安心して手術を受けられる環境を整えるため、腹腔鏡手術を広めていくことを一つの目標として日々活動しています。また、シーパン医師は、日本人医療者と共に長年診療に携わる中で技術面を中心に多くの経験を積み重ね、現在では、新病院を国内で広く信頼される小児専門病院へと成長させることを目標に掲げ、主体的に日々の診療に取り組んでいます。

2025年12月末時点で、ジャパンハート医療センターおよびアジア小児医療センターを合わせた合計外来件数は約21,000件、手術件数は約1,800件でした。こうした規模の診療体制は、継続的な人材育成の積み重ねによって支えられています。

一つひとつの手術、一つひとつの現場経験を通じて、スタッフは自信を深め、それぞれの役割を担いながら、次の世代へと医療をつないでいきます。
その歩みは、この取り組みが「今」だけでなく、「未来」へと続いていることを感じさせます。

支えに支えられて歩んだ一年

私たちが2025年も無事に活動を続けることができたのは、日頃よりご支援くださる皆さまの存在があってこそです。
新病院の開院という大きな節目を迎えたことで、その支えの重みを、現場に立つ一人ひとりが改めて実感する一年となりました。

皆さまからのご支援は、建物としての病院だけでなく、患者さんを迎える準備、医療を届ける体制、そして人を育てる時間として、確かに現場に息づいています。
それは、患者さんの安心した表情であり、手術を終えたあとの家族の安堵の声であり、学びを重ねるスタッフの成長した姿として、日々目の前に現れています。

その温かい支えが、私たちの背中を押し、迷いながらも前へ進む力となっています。
心より感謝申し上げます。

これからも、皆さまから託された想いを大切にしながら、確かな医療と人材育成を通じて、カンボジアの地で歩みを続けてまいります。

カンボジアスタッフ 髙橋明日香

▼プロジェクトの詳細はこちらから
カンボジア ジャパンハートこども医療センターでの医療活動
カンボジア ジャパンハートアジア小児医療センター

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