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【ラオス】対話と信頼の先にある支援を ― 小児がんプロジェクト最新レポート

up 2025.11.10

サバイディー!(ラオス語で「こんにちは!」)ラオスオフィスの松原です。
ラオスの首都ビエンチャンにある国立子ども病院では、2024年からジャパンハートが取り組む「小児固形がん周手術期技術移転プロジェクト(以下、小児がんプロジェクト)」のもと、化学療法と手術を組み合わせた治療体制の構築に向けた活動が続いています。
2025年10月には、カンボジアのジャパンハートこども医療センターで長年小児がん治療に携わる嘉数真理子医師が、国立子ども病院を訪問しました。6月の初回訪問に続く第2回の化学療法支援として、院内でのレクチャーや現場でのディスカッション、患者さんの家庭訪問などが行われました。現場のニーズに根ざした今回の取り組みは、信頼関係を土台にした新たなステップでもありました。

ジャパンハート ラオス 医療 小児がんプロジェクト

▲病院で嘉数医師と対面しご機嫌のソンサイくん

医療者に伝える、安全な治療のための一歩

今回の訪問では、プロジェクト担当の根釜看護師が事前の病棟滞在中にヒアリングした現地スタッフの声を受けて、「抗がん剤ミキシングの安全性確保」をテーマに2回のレクチャーを実施しました。
ラオスでも抗がん剤治療は日常的に行われていますが、その準備や投与中における手技、被曝防止策などについて、体系的に学ぶ機会はまだ多くありません。嘉数医師は、自らの経験をもとに具体的な場面を取り上げながら、実践に活かせるよう丁寧に解説。スタッフは真剣な表情で耳を傾け、レクチャー後には提示された資料やプロトコールを熱心に読み込む姿も見られました。
また、院内では腫瘍内科のソンペット医師と患者さんの治療方針をめぐって、活発なディスカッションが行われました。日常的にはチャットグループを通じて連絡を取り合っていますが、顔を合わせての対話を重ねてこそ、微妙な判断や考え方の違いをすり合わせることができる——そんな実感のあるやり取りでした。

ジャパンハート ラオス 医療 小児がんプロジェクト

▲子ども病院の看護師が抗がん剤を準備する様子

ジャパンハート ラオス 医療 小児がんプロジェクト

▲レクチャーを実施する嘉数医師

ジャパンハート ラオス 医療 小児がんプロジェクト

▲嘉数医師から提示された資料に興味津々の看護師たち

家庭という場が、医療者と家族をつなげる

訪問中、治療を支援している2人の腎芽腫の患者さん、ソンサイくんとヌナちゃんのご家庭を訪問しました。医師による家庭訪問は今回が初の取り組みで、衛生環境の確認に加え、ご家族と向き合いながら不安や疑問に耳を傾ける時間となりました。
病院では見せなかったリラックスした表情を浮かべながら、嘉数医師の「何か不安なことはありますか?」という問いかけに対し、ご家族が小さなことも遠慮なく話してくださったのがとても印象的でした。
医療者が家庭という空間を訪ねることで、ご家族の安心感につながる——そんな手応えを感じる、あたたかなひとときでした。

ジャパンハート ラオス 医療 小児がんプロジェクト

▲ソンサイくんもお父さんもリラックスした様子。

ジャパンハート ラオス 医療 小児がんプロジェクト

▲恥ずかしがり屋のヌナちゃんも嘉数医師にしっかりと挨拶してくれた。

外科との連携強化に向けて

今回のレクチャーや指導は化学療法分野に関するものでしたが、嘉数医師は常に手術を見据えたチーム医療の視点を持って現地の医療者と向き合ってくださっています。
小児がん治療においては、化学療法と外科手術のタイミングや内容を柔軟に調整しながら、より安全で効果的な治療を提供していくことが重要です。しかしラオスでは、診療科の垣根を越えた協力体制がまだ十分に確立されていないのが現状です。だからこそ私たちは、プロジェクトを通じて内科と外科の緊密な連携を後押しすることを、今後の大きなテーマとして位置づけています。
2025年11月末には、九州大学病院の小児外科医2名を招聘し、第2回目の手術活動を予定しています。化学療法と手術の連携をさらに強化し、現地でより多くの子どもたちに確かな治療を届けられるよう、引き続き努力を重ねていきます。

ジャパンハート ラオス 医療 小児がんプロジェクト

▲外来で患者さんを診察しながらの指導も実施

ジャパンハート ラオス 医療 小児がんプロジェクト

▲治療方針を議論する腫瘍内科部長のソンペット医師(左)、嘉数医師(中)、根釜看護師(右)

信頼が積み重なっていくプロジェクトへ

2回目の訪問を通じて感じたのは、信頼関係の積み重ねが支援の質を高めていくということでした。
今回のレクチャーや家庭訪問が実現したのも、日々現場で関係づくりを続けてきたスタッフの努力、そして前回の手術活動を経て深まった現地チームとのつながりがあってこそです。
プロジェクトはまだ道半ばですが、確かに前へ進んでいると感じられる手応えがあります。
これからも現地の声に耳を傾けながら、チーム一丸となって取り組みを続けていきます。

ラオスオフィス
松原 遼子 

 

▼プロジェクトの詳細はこちらから
ラオス 国立子ども病院での小児固形がん周手術期技術移転プロジェクト

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