31日に無事に開院式を終え、ジャパンハートアジア小児医療センター(以下、ACMC)は、7日に予定されたジャパンハート医療センター(以下、JHMC)からの小児がん患者受け入れ、そして外来診療開始に向けて、本格的な準備期間に入りました。
新しい病院の立ち上げという大きな節目の中で、この期間には、設備の最終調整や動線確認、医療機器の設置、電子カルテの導入など、細やかな準備が次々と進められていきました。時には課題に直面することもありましたが、スタッフ一人ひとりが「この病院を、子どもたちとご家族にとって安心できる場所にしたい」という共通の思いを胸に、力を合わせて歩みを進めてきました。
新たな一歩、動き出す現場

開院式を終えた翌日。お祝いの余韻がまだ残る中、病院内は早くも次の目標に向けて動き始めました。小児がん病棟をはじめ、一般病棟や外来、手術室など、それぞれの場所で新たなスタートに備えた最終準備が進められます。
同時に、JHMCに入院している小児がん患者さんたちの「安全な引っ越し」を行うための工夫にも取り組みました。JHMCからACMCまでの長時間移動、緊急時に迅速な対応を行うための物品準備など、綿密な計画が求められる中、日本人・カンボジア人スタッフが協力し、最善策を模索し続けました。この準備期間を通して、誰もが「より良い病院をつくりたい」という同じ願いを共有し、その一体感がチームの大きな力となっていきました。
子どもたちの笑顔とともに、新しい病院へ
そして迎えた7日の引っ越し当日。
約15人の患者さんと付き添いのご家族、医療スタッフが2台のバスに分乗し、いよいよ新病院へ向かいます。朝早くから病院のエントランスには、期待に胸をふくらませた子どもたちの姿がありました。中には、出発の2時間も前から待ちきれずに集まっていた子も。そんな微笑ましい光景に、見送るスタッフの間にも自然と笑顔がこぼれました。

一方その頃、新病院では患者さんたちを迎えるための最終確認が進められていました。スタッフたちは一丸となって医療機器のチェックや病室の点検を行い、準備は万全。バスが到着すると、子どもたちは期待に満ちた表情で窓の外を見つめ、新しい環境へと足を踏み入れました。
目の前に広がるのは、緑鮮やかな芝生、太陽の光が差し込むセンターサークル、そして清潔で快適な病室。子どもたちは目を輝かせながら病院内を探検し、特に広々としたプレイルームは大人気でした。窓からはセンターサークルを見渡すことができ、まるで新しい冒険の始まりのように笑顔があふれます。

5歳のラチャナちゃんも、すぐにプレイルームのとりこになりました。
「本を読んだり、おままごとをしたい」と少し照れながら話してくれる姿に、そばで見守るお母さんも思わず笑顔に。「この病院に来てから、以前よりもずっと楽しそうで元気に過ごしているんです」と話してくださいました。
子どもたちが心からはしゃぐその姿に、私たちスタッフも胸が熱くなりました。

ここから紡がれる、新たな日常
そして、ACMCに移動してきても、子どもたちとスタッフの日常は続いていきます。医師による回診、看護師による採血やバイタルチェック。いつもと同じように一日が流れていきます。その日常を支えるために、医療者たちはこれまで何度もトレーニングを重ねてきた電子カルテを実際の現場で使いながら、安全で質の高い医療の提供を目指して取り組んでいます。新しいユニフォームに身を包んだスタッフの姿からは、これまで積み重ねてきた努力と誇りが確かに感じられました。

新しい物語のはじまりに
開院式を終えてから約10日。
まだ新しい環境の中で試行錯誤を重ねながらも、子どもたちの笑顔と安心のために、スタッフ一人ひとりが力を合わせて歩みを進めています。
病院としての新たなスタートは、決してゴールではなく、これから始まる長い道のりの第一歩です。
私たちはこの地で、より多くの子どもたちに希望と治療を届け、家族に笑顔を取り戻すための挑戦を続けていきます。
ジャパンハートアジア小児医療センターの物語が、ここから始まります。
カンボジアスタッフ 髙橋明日香
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カンボジア ジャパンハートアジア小児医療センター

