
2025年10月31日、多くの方々に見守られながら、ついに「ジャパンハートアジア小児医療センター」が誕生しました。式典には、駐カンボジア日本国特命全権大使・植野篤志閣下、カンボジア王国保健省大臣・チアン・ラー閣下をはじめ、日本とカンボジア両国から約300名が出席しました。当院のスタッフ、現地の医療関係者、支援者や支援企業など、さまざまな立場の人々が一堂に会し、国や職種を越えて、この日を迎えられた喜びを分かち合いました。温かな拍手に包まれながら、病院の新しい門出をともに祝い、その瞬間、会場には安堵と喜びが広がり、多くの人がこの日を迎えられたことへの感謝を噛みしめていました。
希望と挑戦のスピーチ
式典では、現地僧侶による祈祷ののち、ジャパンハート創設者であり、新病院の院長に就任した吉岡秀人医師がスピーチを行いました。病院の誕生が単なる建設の完成ではなく、“未来への挑戦”であることを語り、次のように力強く宣言しました。

「私たちが2018年にカンボジアで小児がんの治療を始めたとき、
助かる子どもは一割ほどしかいませんでした。
努力を重ね、今では五割が助かるようになりました。
しかし、先進国では八割の子どもが助かっています。
まだ三割の差があります。
私たちは、この差をなくし、八割の子どもが助かることを達成したいと考えています。
2025年、この新しい病院の開院は、ジャパンハートにとっても大きな節目です。
日本とカンボジアの医療が、新しい段階へ進む象徴でもあります。
“救える命”がある限り、私たちは前に進み続けます。
この病院で生まれる経験と学びが、カンボジア全土へ、そしてアジアへと広がることを願っています。
私たちは、この病院をアジアで、そして世界で最も尊敬される病院にしたいと思っています。
世界のお手本になるような病院を目指します。」
(※スピーチより一部抜粋)
この言葉は、吉岡医師一人の思いにとどまらず、ここに集ったすべての人の願いと希望を映し出しているようでした。
祈祷の静寂、リボンカットの瞬間、そしてあふれる笑顔——会場全体が温かな祝福に包まれ、長い年月をかけて積み重ねられてきた努力が実を結んだことを実感する時間となりました。

すべての子どもに、平等であたたかな医療を
このジャパンハートアジア小児医療センターの開設は、「アジアの生存格差(サバイバルギャップ)をゼロにする」という目標のもと始動したプロジェクトの集大成です。カンボジアの首都プノンペン近郊に位置する当院は、200床規模を有し、4室の手術室を備えた小児専門の医療センターです。
「すべての子どもたちに平等な医療を」という理念のもと、医療の機会や質における地域格差をなくし、アジアの開発途上国と先進国の間に存在する“生存率の差”を埋めていくことを目指しています。
このセンターは、今後アジア地域における高度小児医療の拠点としての役割を担い、現地の医療発展に貢献していきます。
11月半ばより本格稼働を開始し、国内の患者受け入れを順次拡大していく予定です。あわせて、現地医療者の育成にも力を入れ、将来的には現地人材が主体的に医療を提供できる体制の確立を目指しています。さらに、近隣諸国からの患者受け入れも視野に入れ、支援に依存しない、持続可能な医療の仕組みづくりを進めていきます。

また、この病院は単なる治療の場ではなく、「子どもが来たくなる病院」という想いを形にした場所でもあります。長期入院を余儀なくされる子どもたちが、少しでも穏やかに、前向きに過ごせるよう、院内の空間には遊びや学びの要素を取り入れていきます。さらに、治療を支えるご家族への心理的ケアにも力を入れ、医療の枠を超えて「ここで過ごす時間そのものが支えとなるような病院」を目指しています。
支えてくださったすべての方へ、心からの感謝を込めて

この日の喜びは、これまで支えてくださったすべての方々のおかげです。
多くのご支援と温かな想いが積み重なり、この病院の誕生が実現しました。
ここに込められた「子どもたちのいのちを守りたい」という願いを胸に、
ジャパンハートはこれからも、カンボジア、そしてアジアの子どもたちの未来のために歩みを続けていきます。
カンボジアスタッフ 髙橋明日香
▼プロジェクトの詳細はこちらから
カンボジア ジャパンハートアジア小児医療センター

