活動レポート

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栃木 とちのみ学園クラスター支援 長尾看護師からのレポート

up 2021.02.15

栃木県の佐野市にある社会福祉施設「とちのみ学園」で新型コロナウイルスのクラスターが発生し令和3年1月15日から2月2日までの期間、支援活動を行いました。

栃木 とちのみ学園クラスター支援 長尾看護師からのレポート ジャパンハート

活動開始時はクラスター発生から約1週間が経過しておりICNや行政の介入によりゾーニングや職員への感染予防策は徹底されていました。しかし、栃木県内のコロナ病床が逼迫しているため今後、万が一治療が必要となれば、本来は生活の場である施設内で医療提供をしなければならないという厳しい状況に直面しており、その要員として支援活動を開始しました。

初日に施設の方からクラスター発生直後から今までの経過をお聞きすると
「本当につらかった。今も不安しかない。だから支援に来てくれて本当に心強いです」
と話され、ニュースでみるより現場は想像以上に過酷でその状況の中、やるしかないと必死に戦っておられる職員の皆様の姿に胸が締め付けらました。

私は今回初めてクラスター支援に入ったので、自分に何ができるか不安もありましたが、実際現場に来て現状を目の当たりにし、この施設のために自分ができることは精一杯全力でやろうと覚悟が決まりました。

まずは、万が一治療が必要となった場合、施設内でできる最大限の医療を提供していくために医師と治療方針や連絡体制の確認、夜間急変時の対応、必要物品の確保、看護師間での役割分担を明確にし、多忙で中断していた他職種も含めた全体ミーティングを再開しました。ミーティングのなかで、現状の把握や統一事項を共有したり、今困っていることなど意見を出し合い解決策をみつけることで、少しでも不安が軽減し利用者さんや自分の身を守ることにつながるため日々の連携の大切さを実感しました。

職員の方たちは常に自分や周りに感染させたらどうしようとの不安を抱きながらも、利用者さんが普段とは違う環境に少しでも安心して過ごせるように明るく声をかけたり、大好きなおやつやジュースを提供したり、入浴できない日がつづくためドライシャンプーを提案し、不快感を取り除くケアにつなげていたりと、限られた環境のなかでも利用者さんにできることを第一に考え関わっており、相手を思いやる心に触れ、私も普段とは違う環境での活動で緊張感もありましたが、看護師として大切なことを忘れず支援していこうと改めて気づかせていただきました。

栃木 とちのみ学園クラスター支援 長尾看護師からのレポート ジャパンハート

少しずつ体制も整ってきて、職員一人一人が今自分にできることを懸命に奮闘している中、利用者さんの容態が急変し亡くなられました。何十年も一緒に過ごしてきた家族のような存在である利用者さんが目の前で急変し、突然、死にたちあわなければならない職員さんの心情を思うとただただ背中をさすることしかできず、看護師としてどうすれば一番良かったのか、辛くて悲しい思いにもっともっと寄り添うべきだったと自分の無念さとコロナウィルスの脅威を痛感しました。

後日職員さんから「はじめは突然すぎて受け止めきれなかったけど最期にエンゼルケアを一緒にできて気持ちの整理がつきました。悔いはないです。また今日から頑張ります!」「コロナウィルスは絶対許せないけど、病院に入院していたら最期会えなかったから◯◯さんが住み慣れた一番安心できる場所で、みんなで見送れて良かったです」と声をかけていただき、大変な中でも死を受け止め前に進もうとされている職員さんの姿をみて、私も今できることを、前を向いてしっかりやりきっていこうと奮起できました。

この施設で活動をしていて一番強く感じることは職員同士の団結力が強いことです。一人一人性格や環境、職種が違っても、「コロナ終息のために!」という同じ目標ゴールに向かって同じ方向に進んでいるので、ぶれずに確実に終息に向かっており、団結力に勝るものはないと改めて学ばさせていただきました。

栃木 とちのみ学園クラスター支援 長尾看護師からのレポート ジャパンハート

こちらの綺麗で美しいお花の写真は、支援員さんが生けたお花です。夜勤前にお花をもっておられたので声をかけると「玄関先に綺麗なお花があったら、しずんだ心も少しでも明るくなればなーと思ってねー、お花は自腹だけどねー!あははー」っと笑いながら答えくださり、過酷な夜勤前に自分以外の人を少しでも励ましたいとの想いでお花を生ける姿をみて心が温かくなりました。団結と励ましあいの心は困難を乗り越えていける力になることを身をもって感じました。

クラスター支援を通して、私自身与えることより与えられることの方がたくさんあり、とちのみ学園の皆様と一緒に活動した時間や経験は、今後も続く支援活動を行っていくうえで大切な原点になりました。職員の皆様や利用者さんが少しでも安心でき心が軽くなれるように、そして笑顔につながる支援ができるように、これからも原点を忘れず、活動していきます。

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ジャパンハート看護師 長尾範子

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国際緊急救援(iER) | 新型コロナウイルスと闘う人々を支え、医療崩壊を防ぐ

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