活動レポート

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兵庫 クラスター支援 ~ニュースで流れてくる数字の裏には~

up 2021.08.09

クラスター支援を初めて1か月強が経過し、私は兵庫県の高齢者施設2施設で支援をさせていただきました。その中で印象に残ったエピソード、そして私が感じたことを記します。

兵庫 クラスター支援 ~ニュースで流れてくる数字の裏には~ 看護師

とある高齢者施設に入居されていたそのAさんは、とても穏やかにお話しされる笑顔の素敵な方でした。
しかし残念ながらコロナ陽性となってしまいました。この方のご家族は「状態が悪くなったら、大変だと思うが施設で看取ってほしい」とのご希望でした。

陽性が判明した数日は元気にしておられましたが、3日目くらいから一気に病状が悪化し、40℃近い発熱、大量の痰、そして酸素化の悪化がみられました。私達から見ると明らかに呼吸は苦しそうなのですが、本人はあまり辛くないとおっしゃっていました。提携病院からの指示で各種薬剤を投与しますが、効果は芳しくありません。そ介護スタッフのみなさん、施設の看護師さんも、苦しそうな姿に心を痛めており、また状態が悪い中介護を続けていくのに不安を感じている方がおられました。

「予後は厳しいのかもしれないけれど、ここで穏やかに過ごせるように、現場のスタッフさんと一緒に支援ができたら」と思いました。

現場の看護師さんと話しながら、少しでも呼吸が楽になるように姿勢を調整したり、クーリングをしたり、食事の時間に少しでも熱を下げて何か口にできるように解熱剤のタイミングを調整したり…些細ですができそうなことを1つ1つやりながら、介護のスタッフの方にも情報を共有していきました。介護スタッフの方も姿勢をこまめに調整したり、夜勤は一人で大変お忙しい中、状況を細かく観察して教えてくださいました。そして調子がよい日はとてもうれしそうに報告してくださいました。Aさんも、ケアをする介護士さんや私たちに「ありがとう」と繰り返し言ってくださいました。

数日たって、残念なことに病状は悪くなっていき、呼吸状態が悪化し食事もとれなくなってしまいました。お部屋に伺うと、「1口でいいからお水をもらえませんか」と息絶え絶えに伝えてきました。もしかしたらなんとか飲めるかもしれないと思い、誤嚥しないようにトロミをつけた水を用意しました。SpO2モニターをつけ、本人の呼吸の状態を見て休憩をはさみながら、少しずつスプーンで飲んでもらい、なんとコップ1杯分飲むことが出来ました。「本当においしかった、生き返った、ありがとう、ありがとう」と繰り返し伝えてくれました。介護スタッフの方も、施設の看護師さんも、本当に喜んでおられました。

本当に大変な状況でしたが、しっかりとAさんに向き合ってみんなでケアを行い、Aさんにも届いていたな、と感じる日々でした。

私は、この支援に入るまではコロナ患者の対応がない病院で勤務をしていました。TVで流れてくる「本日の陽性者は〇〇人です、死者は〇人です、重傷者は〇人です」というニュースをぼんやりと見つめて、「今日は感染者が多いんだな」「友人の病院は大変なのかな…」程度の認識しか持っていませんでした。

 しかし、この活動を通して、ニュースで流れてくる数字の裏には、その命や生活を苦悩しながら支えている、2倍、3倍、それ以上のたくさんの人がいることに、初めて気が付きました。
そうした医療現場、介護現場の方々は、自分がかかるかもしれない恐怖を抱える一方で、状態の悪い利用者さんに心を痛め、それでも毎日この状況が少しでも好転するように、と働いていらっしゃいます。

ジャパンハートは「支援者支援」を大切にしていますが、ここまで、自分の中で「支援」ということを落とし込めていなかったように思います。今回の事例を通して、スタッフの方々の心身の負担や、感染に関する不安を少しでも軽減し、利用者さんに向かい合うつながる時間やパワーに繋がれば、と強く思いました。そうした時間が、利用者さんへの良いケアや穏やかな時間になり、たとえ厳しい中でもスタッフの方々の希望や喜びになっていくことを実感したからです。

まだまだ、駆け出しの身ではありますが、これからも「支援とは何か」ということを考えながら、日本でも、海外でも活動を続けていきたいと思います。

兵庫 クラスター支援 ~ニュースで流れてくる数字の裏には~ 看護師

ジャパンハート看護師 髙田 奈緒

▼プロジェクトの詳細はこちらから
国際緊急救援(iER) | 新型コロナウイルスと闘う人々を支え、医療崩壊を防ぐ

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