活動レポート

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宮城 福祉施設クラスター支援 鈴木看護師からの活動レポート

up 2021.05.06

新型コロナウイルスの急速な感染再拡大を受け、宮城県と仙台市は4月18日独自の緊急事態宣言を出しました。
その約10日後、宮城県からの要請を受け、ジャパンハートは仙台市内でクラスターが発生した福祉施設および新型コロナウイルス感染症の陽性患者を受け入れている重点医療機関で活動を開始しました。

初動としてロジスティック1名と看護師1名が派遣された場所は福祉施設でした。

■3月31日活動開始時の施設の状況
はじめての陽性者が発覚してから10日過ぎた時期で2回目のスクリーニングを終えた頃でした。
既にゾーニングやPPEを着用し対応できていましたが、現場は乱雑ぎみで職員の方々は余裕がなく1週間寝ずに頑張ってきた疲労感がみえる状況でした。
陽性者は施設全体の約2割、重症者は入院し、職員は休職しておりましたが、受け入れ病院が逼迫しているため施設での陽性者対応と治療をせざるを得ない上に、さらに新たな陽性者がまだ発覚する可能性もある状況でした。

■現場のニーズ
現場で働く人たちが目の前の対応に必死で、俯瞰して全体をみる余裕がなく、今後の見通しをたてられない状況ででした。まずはマンパワーが第一のニーズでした。
マンパワーとして活動しながら、全体状況を把握してゾーニングの見直しや整理などを他支援団体とともに行っていく必要がありました。

■実施したこと
ロジスティック:
現地本部指揮所で活動。厚労省、DMAT、施設側、介護支援団体、キーパーソンとなる関係者とともに、これまでの経過、感染状況把握、現状分析、課題の抽出、対応方針を毎日の会議で検討していきました。

看護師:
マンパワーとして一看護師業務を一任。
陽性者発覚1〜2週間頃からその他の陽性者の状態悪化が日々続いていました。
受け入れ病院逼迫状況の中、毎日1件の救急搬送はできていましたが、その他は施設での対応であり、嘱託医の電話指示のもと酸素・点滴投与まではおこないました。
ただ治療薬の使用は施設ではおこなわない方針でしたので、早期に状態変化に気づき対応する必要性がありました。
通常看護師の夜勤業務はなくオンコール対応でしたが、特に夜間帯の状態変化に早期対応できるよう、また介護員の負担軽減のために、ジャパンハートが夜勤業務も一部担いました。

DMAT医師の協力があり、受け入れ病院との調整をおこなっていただいたため毎日1件でも搬送できたことは、その方の命を守る面でも、職員を守る意味でも大変有り難いことでした。
3週間を過ぎた頃から陽性者の状態も少しずつ回復傾向にありました。
ゾーニング解除ができるフロアも増え、それとともに職員の表情も少しばかり緩やかになっていきました。

ただ食事を再開することで再び状態低下していく方も数名おられ、慎重にケアを進めていく方針を確認して対応していきました。
活動開始から15日目(発覚から約25日)に休職していた全ての看護職員の復帰を確認したため、16日目を活動最終日とし、ジャパンハートは施設での活動撤退に至りました。

■クラスター現場と災害現場
コロナウイルスの流行自体を災害とみなし、災害医療団体なども多く関わっていました。
クラスター現場でも、発覚と同時に状況が変わって混乱もある中、日々状況が変化していくその状況は本当に災害であると感じました。
当事者は被災者であり、支援する職員も被災者になります。
職員一人ひとりにも家族がおり、家族のために離れて寮やホテルで生活をしながら対応している方々が多くいました。

災害現場では、時間・人材・資機材が限られた状況下において内因・外因を問わず様々な対応が求められます。
そのため職種に関係なく、必要なことをできる人が行うことが活動の基本です。
ただ今回は介護要員として他団体が関わってくださったこともあり、看護師である私は看護業務に専念することができました。
また業務に専念できたのはロジスティックとして活動する人員もいたためです。
適材適所でそれぞれが最善に業務遂行できたことは施設全体の復興のために、スムーズであったと感じています。

■気づき・学び
・クラスター現場では、はじめての陽性者が発覚しスクリーニングをかけていくと、陽性者が増加していきます。
その増加とともに混乱、業務整理、状況把握、陽性者の状態低下など様々な出来事とやるべき事が同時に起こってきます。
現場にいる方々は必死に一つずつ目の前のことをこなし対応していくため、外部から支援する際は、その状況を客観的にみてスピード感をもちつつも冷静に対応していく力が求められると痛感しました。
ただ対応する上で、外部の支援者が一方的にではなく、カウンターパートとともに背景を理解しながら一緒に力を合わせて活動することが重要であると再認識しました。

・混乱時においては、「今後の見通しを立てる」ことが重要であることもわかりました。
陽性者の経過をまとめた一覧表を視覚的にみることで、ゾーニング解除までの道筋ができてきます。
「有症状者の場合、発症から10日経過し、かつ、症状が軽快して3日経つこと」「無症状者の場合、検体採取から10日経過していること」など、数字で見通しをたてることは、現場で働く方々の希望となっていました。
そして実際に、ゾーニング解除を目の当たりにすることで、「ここまできた、もう少し頑張ろう」と職員みんなのモチベーションに繋がっていることがわかりました。

・今回、物資不足やインフラの途絶えなどはありませんでしたが、受け入れ病院が逼迫している中、入院のために調整をしてくださったのは外部支援の方々でした。
その場で柔軟に対応していくこは大切ですが、連携や繋がりの大切さも痛感しました。

・東北の方々の県民性でもあると思いますが、内側に抱え込んでしまい、特にリーダーとなる方やその身内で頑張りすぎてしまうことが起きていた様子も見受けられました。
「助けて」と発信すること、これはクラスター、災害、どの場面でも一番に大切なことではないかと考えさせられました。

最後に
初動で活動した福祉施設は、収束傾向であり現場スタッフの復帰もみられたためジャパンハートの活動は終了し、撤退いたしました。
しかし、陽性患者を受け入れている重点医療機関で活動や、新たに発生したクラスター施設での活動は現在も継続中です。
日本全国では、高齢者のワクチン接種がはじまりましたが、まだまだ新型コロナウイルス感染者数は増加傾向にあります。
一日でも早く収束に向かうよう、「医療の届かないところに医療を届ける」活動をジャパンハートはこれからも続けていきます。
今後も現場での状況を発信していきますので、引き続き、ご支援・ご協力の程よろしくお願いいたします。

ジャパンハート看護師 鈴木綾

▼プロジェクトの詳細はこちらから
国際緊急救援(iER) | 新型コロナウイルスと闘う人々を支え、医療崩壊を防ぐ

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