活動レポート

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沖縄 アラ還の初めてのクラスター支援

up 2021.04.05

アラ還の私が2021年2月8日~26日まで沖縄県うるま市の医療機関で、初めてのジャパンハートの活動、初めての新型コロナウィルス感染症のクラスター支援活動に参加させていただきましたので、体験したことや感想を記します。

本題に入る前に、何故、私がクラスター支援に参加したか、その動機について書きます。
コロナ感染症が世界的に流行し始め、日本でも多く方々が感染し、お亡くなりになられた方もたくさんいます。著名人がコロナ感染症でなくなったというニュースには、何故か気落ちすることもあります。
ですが、それはちょっとの間のことで、私自身も周りの人たちも幸い感染しておらず、濃厚接触者でもない状況の中で、どこか他人事と、遠巻きにしている自分がいました。

そんな状況が続く中、コロナの現場で働く医療従事者が疲労困憊している、風評被害を受けている、疲弊しているというメディア報道を見聞きするたびに、他人事と思っている自分が『とても冷たい非情な人間』『医療従事者として恥ずべき人間』じゃないかと思うようになりました。
また、現場で奮闘する看護師さん達の映像をみると『私には到底できない、無理!』とも思っていました。

人としての、看護師としての、色々な感情が沸いては消え、湧いては消えを繰り返している時に、クラスター支援への参加可否を問う声をジャパンハートからかけていただきました。悶々と自己卑下をしていても、何も解決しませんし、後退するばかりです。

差し伸べられた手を取ることで一歩を踏み出せます。その先で、失敗することも、人に迷惑をかけてしまうことも間違いなくあると思います。それらの経験を自分の糧とすることができれば、人として、看護師として、少しは成長できるかなと思い、今回の支援活動に参加させていただくことにしました。

前置きが随分と長くなってしましましたが、ここから本題です。

活動先は、沖縄県うるま市の病院の病棟。1月下旬、スタッフ1名の陽性が判明。
これを受け全患者・職員のスクリーニング実施。
結果、患者:66名中31名陽性、看護師:3名陽性、濃厚接触3名が判明。加えて、社会的理由等で出勤できない職員が出て、看護師18名と看護助手22名が欠員の状態で、他病棟から看護師5名、県庁から看護師2名が病棟に入っている。
これが支援要請時の状況です。
この情報を元にジャパンハートから看護師2名と調整員1名が派遣されました。メンバーと構成は、活動先の状況等で毎回変わり、看護師1名が先乗りという場合もあるそうです。

初めての経験 その1:新型コロナウィルス感染症対策本部 県&病院
沖縄到着の挨拶と現状把握のため県の本部を訪問。体育館ほどの大きな会議室に所狭しと机が並び、スクリーンやパーテンションでいくつもの区画が作られ、県庁職員だけでなく自衛隊、DMATほか多くの外部支援の人たちがそれぞれの活動をされています。休憩する間も惜しく活動されている様子が、会議室のいたるところで伺えます。本部の規模が、その自治体の感染状況を反映しているとも推測されます。

病院の本部でも20名以上の外部支援の方々が作業分担、協働しながら活動されていました。病院でクラスターが1か所発生すると、如何に他の部署に拡大させないかが重要なカギの1つとなります。
そのため、当該病棟だけでなく、他病棟の患者さんや職員の健康状態も把握しつつ、当該病棟の管理運営を本部が指揮する形で支援をしていきます。外部支援の人たちがクラスター終焉を目指して一致団結して活動されています。
普段、一緒に働くことがない見知らぬ人たちとの連日の活動で疲れが蓄積されていると思われますが、明るく元気で、時には笑顔、時には真摯な態度で活動されている姿に感銘です。

初めての経験 その2:PPE装備
急性期の医療機関を離れ、20年以上も慢性期、療養期、在宅医療に携わっていた私。急性期病院にいた時でさえ、PPEはなかった(20~30年前の大昔のことです)と記憶しています。
クラスター支援はレッドゾーンでの活動になると聞き、ネットでPPE着脱の手順を何度か見て、頭の中でシミュレーションしてきました。
順番を思い出しながら、他の看護師さんのやり方を見ながら順に着けていくのですが、サイズ感が小柄な私には兎に角大きい!
N95マスクも何種類かが用意されていましたが、いずれも大きく、ゴムひもを短くしてきつくしても空気が漏れているようで、どんどんきつくなっていました。耳が痛いったりゃありゃしない!
その上、飛沫や体液に接触する恐れのあるケアの時にはフルPPEにビニールエプロンと手袋追加し、患者さんごとに交換します。
この着脱でケアには通常の倍ほど時間がかかり、30人ほどのオムツ交換を3~4人で行って1.5時間、2人では2時間以上かかります。終わった時には、汗だくで髪はシャワーした後のようにびっしょりです。N95 マスク着けて、動き回るのはホントにしんどい!

レッドゾーンにいる時間が長いほど感染リスクが高くなると言われていますが、体力的にも精神的にも長時間滞在は危険を感じます。
頭が回らなくなって集中力が低下して、つい触れてはいけないところを触ってしまったり、エプロンをつけ忘れてベッドサイドに立ったりと危険行動をしていることも中と外の職員が連携し時間管理をしながら、お互いで声かけあって、自分たちの身を守ることの大切さを実感しました。

初めての体験 その3:介入される現場
外部支援の看護師たちが入る所には、もともとそこで勤務されている看護師さんが当然います。当該病棟でもクラスターになる前は、看護師さん達と看護助手さん達で66名の患者さんの看護ケアを自分たちの看護観に基づいて行っていたのです。
それが、クラスターとなって勤務できる職員が数名になってしまうと、残された職員が連続勤務となり、休息の場である自宅に帰ることさえ自粛せざるを得ない人もいます。

心身ともに疲れている中で、感染対策も講じなければならず、疲労は募るばかり。そうなってくると、今ある人材でやりくりできる方法に変更するほかありません。
それが看護方法の変更!患者さんの状態が悪化することのないよう方策を講じて変更していきます。

今回の1つの例が使用するオムツの変更と交換回数の減量でした。患者さんはほぼ全員が寝たきりで四肢拘縮・硬直が強く、意思疎通できる方も僅かです。私は初めてオムツ交換した時、オムツかぶれがないことと、褥瘡がほぼないことに驚き、看護ケアの手厚さ・的確さに感服しました。
このようなすばらしい看護を行ってきた看護師さん達にとって「吸収量は今までの何倍もあるオムツを使うから、交換回数を大幅に減らす」ことは看護の心が蝕まれるように感じたのではないでしょうか?

他にも、今までは当たり前にしていた・できていた看護が、できない・手が回らない 状況の中で、患者さんに対して申し訳ないとの思いを持ち続けていたのだと思います。身体的にも精神的にもつらい日々を送る中で、支え・原動力となっているのが看護師一人一人の根底にある看護の心だと思います。
その看護の心が押しつぶされてしまわないよう外部支援の看護師たちが時にはマンパワーとなり、時には助言者となることで、現場で奮闘する看護師さん達が体を休め、心を癒すことができ、明るい未来を見据えて進めるのだと実感しました。

今回、初めて体験したことのうち、特に印象深かったことを書きました。
最後に、私は本当に多くの方々にご指導・支援をいただきました。一緒に参加したジャパンハートのメンバーはもちろん、他の外部支援の方々にも温かな言葉をかけていただきました。
また、一緒に働いた病院職員の方々には、ご自身たちが大変な状況であるにもかかわらず、多大なお気遣いをいただきました。
心から皆様に御礼と感謝を申し上げます。ありがとうございました。

ジャパンハート看護師 大橋久美

▼プロジェクトの詳細はこちらから
国際緊急救援(iER) | 新型コロナウイルスと闘う人々を支え、医療崩壊を防ぐ

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