活動レポート

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熊本 国保水俣市立総合医療センター 橋本看護師からのレポート

up 2021.04.05

複数のクラスターが発生した熊本県からの要請を受けてジャパンハートは、1月26日に調整員1名と看護師3名が熊本入りし情報収集後、1月27日から医療機関と福祉施設の3ヶ所に分かれて支援を開始しました。

私は水俣市立総合医療センターの新型コロナウイルス陽性者を受け入れている病棟で、2月5日まで活動致しました。
コロナ病棟とは別の病棟でクラスターが発生し、院内の陽性者は全てコロナ病棟に移動され、重症者も増えているため人員補充がニーズとしてありました。

医療センターは急性期病院であり、感染管理認定看護師もいる感染対策が徹底されている病院です。新型コロナウイルスはこのような感染対策が万全なところにまでも入り込んでしまうのかと改めてコロナの脅威を実感しました。
しかし幸いにもクラスターの陽性者数は1桁台でした。もともと感染対策が徹底されていた病院であったからこそ、これ以上感染が拡大せずに済んだのではないかと思います。

コロナ病棟には院内や地域で感染した方が入院されており、軽症から中等症・重症までさまざまな患者がおりました。私の活動期間中に重症者は最大4名おり、人工呼吸器管理もしくはそれに準じる酸素投与がされていました。この病棟では昨年夏頃から陽性者を受け入れていたそうですが重症者が増えたのはここ最近だとのことです。

私の活動期間中に軽症者が重症化したこともありました。軽症者が急激に酸素化不良となり、挿管され人工呼吸器管理になった事例です。挿管時には医師、看護師も介助者、外回りなど多くの人手が必要です。

また、重症者のケアをする際にも看護師の人数は通常よりも多く必要で時間もかかります。重症者の体の向きを変えたり、全身清拭やオムツ交換などを行う際には患者の状態を観察しながら、生命維持に関わる管類が抜けないように細心の注意をしながら行うため1人の患者に対して3〜4人の看護師で対応しました。

重症者が増えたことにより看護体制も変える必要があり夜勤スタッフが増員されていました。私も夜勤に入りましたが支援が入ったことで、休みがとれていなかったスタッフに休みをあげることができたとお聞きしました。
これらのことから、クラスターが発生した病院の人員不足はどこでも課題となりますが、特に高度な医療を提供する病院では、クラスターとしての規模は小さくても医療の質や病院機能を維持していくために人員の確保が重要なことであると実感しました。

支援に入って数日、感染対策のため面会が制限されている中、オンライン面会の場に立ち合う機会がありました。その患者さんは重症から中等症に重症度は下がっていましたが入院が長期になっており、身体的・精神的に辛い状況から抑うつ状態となっていました。
しかし家族とタブレット越しでお互いの顔を見ながら会話し、嬉しそうに涙ぐんでいたのが印象的でした。

さらに、家庭内クラスターとなり家族で入院していた事例では、回復し先に退院した家族が主治医の許可を得て、防護服を着用した上で入院中の家族に面会をしていた事例もありました。個人防護服を着用した家族に見守られながら最期を迎えた方もいます。

医療センターでは制限がある中でも、一つひとつの事例で検討し感染リスクを最小限にした上で、できる限り患者や家族の思いに寄り添った看護が提供されていました。コロナ禍では感染対策のため、患者や家族の思いに寄り添いたくても普通の看護ができない悔しい思いがあったため医療センターでの対応を知ることで、制限がある中でもできることがある、と少し救われた気持ちになりました。

私のこれまでのクラスター支援活動の中ではコロナから回復しても、もともと寝たきりであったなどの理由から自宅に退院できた方を見たことはありませんでした。
しかし、今回の活動中には陽性患者が回復し、笑顔で退院されていく姿を何度か見ることができました。看護師にとって患者の回復は喜びであると改めて感じ、さらに頑張ろうと思うことができました。

そして、コロナ病棟のスタッフは重症者が増えた大変な状況の中でも明るく温かい雰囲気でチームワーク良く働いていたことが印象的でした。これまでも陽性者を受け入れ、また院内のクラスターが収束しても、これからも地域の陽性者の受け入れが続いていく病院だからこそ、強い使命感を持つスタッフばかりなのだと感じました。

私はジャパンハートが支援に入っている熊本県内の福祉施設から追加で人員が必要と要請があり、急遽そちらに異動することになりましたが医療センターのスタッフは快く送り出して下さいました。

医療センターとその施設は同じ圏域で、陽性となった施設の利用者も多く入院しており、施設が大変な状況になっていることは皆が理解していました。
私が医療センターから施設に異動した後も、陽性となった利用者の搬送や退院のお迎えで再び医療センターに行った時は信頼できるスタッフ達がみてくれる、と安心して行くことができました。
同じ圏域の施設でも活動することで、医療センターでコロナ陽性者を受け入れてくれていることはこの地域の方々の安心につながっていると実感しました。

短期間ではありましたが医療センターでの活動は、これまで経験したクラスター現場とは違った最前線のコロナ対応を学ぶことができ大変貴重な経験となりました。水俣市立総合医療センターの皆様に心から感謝申し上げます。

国際看護師研修56期 橋本

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国際緊急救援(iER) | 新型コロナウイルスと闘う人々を支え、医療崩壊を防ぐ

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