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カンボジアの食文化と栄養課題
up 2020.06.23

カンボジアの食文化と栄養課題

カンボジア料理と聞くと、どんなものを思い浮かべるでしょうか。
東南アジアの暑い地域、ということで米や南国フルーツなどが印象として挙げられるかもしれません。

私も初めてこの国に足を踏み入れた時、インターネットでカンボジア料理を検索してもあまり情報が得られず、「特徴がわからないなあ」と思いながら過ごしていたことを覚えています。

私が栄養管理部に赴任して3カ月、毎日カンボジア人スタッフが料理を作る様子を見ながら、次第に独特で豊かなカンボジアの食文化に魅せられている毎日です。

カンボジアは、日本と同じく米を主食としています。そのお米は、実は国際的な米の品評コンクールWorld Rice Conferenceでも近年高順位を取り続けているほど。2012-2014年にかけては1位を取得していたことからもわかるように、世界に認められているお米です。

そのように白米産業が主流となっているこの国では、日々の食事も大量の白ごはんと少しのおかずが定番となっています。
おかず、と言っても日本のように主菜・副菜やスープがあるわけではなく、白米+塩辛い魚を焼いた組み合わせを良く見かけます。一汁一菜、もしくは一菜、といったところでしょうか。

国全体がトンレサップ湖を囲んでいることもあり、日本では見慣れない淡水魚を主なタンパク質源としています。クメール語標記しかないその魚をなんと名付ければいいかわからず、いつも「ナマズ」とまとめてしまっています。鯖と鯵は、味付けされた状態で売られていることがあるので、少し離れた沿岸の街から遥々送られてきているのかもしれません。

他にも、暑くて湿度の高い環境下で食材が無駄になってしまわないよう、さまざまな保存食・調味料に加工されています。
日本は大豆を発酵させた味噌がありますが、こちらには生魚を発酵させたプロホックと呼ばれるペーストがあります。
スープのうま味に使ったり、野菜に直接付けて食べます。

カンボジアの食文化と栄養課題

また、臭みを消すために日本では見慣れない香草を多く使用しているのも特徴で、毎日キッチンに多種多様な香草が並んでいるのを見ると非常に興味深いと感じます。
独特の苦みや香りこそありますが、その味も慣れてくると「落ち着く味」と思えるようになるので不思議です。日本人が味噌汁を飲んで落ち着くように、カンボジア人にとってはプロホックや香草、タマリンド(梅干しのような酸味を持った調味用果実)の味がほっとするのかもしれません。

このように、カンボジア特有の地理的背景や歴史、文化によって生み出された現在の食の形態は美しく興味深い一方、栄養状態においては国際社会との格差を広げてしまう一因ともなっています。

「食事はおなかを満たすため」という意識が強い本国では、上述したような食生活を続けていることも影響し、妊産婦の微量栄養素欠乏や子どもの慢性低栄養が未だに報告されています。特にヨウ素、ビタミンAや鉄分は国が補助強化の取り組みを行っている話は聞くものの、まだまだ浸透していない様子です。

一方で他諸国と同じように生活習慣に関連する疾患は増えてきており、農村部では失調障害が多い一方、都市部になると過栄養の課題が見えてくる、いわゆる栄養失調の二重負荷、三重負荷が生じています。私たちの活動する地域は首都から1時間と都市部に近いこともあり低栄養児は比較的少ないですが、農村部や特にタイ・ラオス国境の地域ではその割合がぐっと高くなっています。

その解決の一つの糸口は、食の多様性Food Diversityを日々の生活の中で増やしていくことにあるのではないかと見ています。
「様々な食に触れる機会をここから増やしていきたい」
私たち給食室では、毎週カンボジア人スタッフと共に献立を作成し、毎日様々な食事を楽しんでもらおうと工夫しています。
カンボジア語、日本語に翻訳したものを掲示し、デザートには旬を盛り込みながら「懐かしい味」と「新しい発見」を楽しんでもらう機会を提供しています。

まだ栄養士養成機関もなければ、栄養管理部門が置かれている病院もほとんどないカンボジア。
保健機関の取り組みを見ても、そこまで積極的に栄養介入がなされているとは言いにくい状態です。

自国には一定水準を満たした農業環境を備えているものの、多くの野菜やたんぱく源をベトナムやタイなどの近隣国に頼っている状況です。
そのため、野菜や肉類を高級品と捉える家庭も多く、今回のコロナウイルスの影響では価格が高騰し、給食センターでも安定供給に苦労したほどです。ウイルスだけでなく食糧アクセスなど様々な影響が世帯を直撃したことが想像できます。

農業面、流通面といった幅広い方向性にアプローチする段階には至っていませんが、日々3度の食事を通じ、子どもたちやその家族、ここのカンボジア人医療スタッフが食の多様性に触れ、それを家に帰って家族に、コミュニティに広げていくことで 少しずつ様々な栄養を取り、豊かな食生活を営むきっかけづくりになっていってほしいと思いながら過ごしています。

栄養管理部 川合

▼プロジェクトの詳細はこちらから
医療支援 | カンボジア ジャパンハートこども医療センター 栄養管理部

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