活動レポート

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海外大学院との連携:栄養啓発で待ち時間を有効活用。

up 2020.10.23

こんにちは!カンボジア栄養管理部の川合です。
カンボジアは10月に入り、ぐっと涼しくなってきました。日本の秋のような気候で、懐かしく感じると同時に、秋の味覚が恋しい毎日です。

栄養管理部では、フィンランドのヘルシンキ大学の協力を得て、栄養啓発動画の制作を進めています。
病院を訪れる患者さんの待ち時間に見てもらえるよう、様々なトピックで動画を作っています。
内容は、各栄養素の説明から栄養バランス、衛生、母乳育児や離乳食、そして栄養の偏りが影響する疾病対策など多岐に渡る予定です。

ジャパンハート カンボジア 海外大学院との連携:栄養啓発で待ち時間を有効活用。

動画の中で説明をするのは、栄養管理部のカンボジア人スタッフたち。
日々調理業務を中心に行うスタッフは、これまで栄養の知識を得る機会がなかったことに加え、文字を書いたり読んだり、人前で話したり…という機会も多くはありませんでした。
栄養、たんぱく質、カルシウム…私たちにとっては聞きなれた言葉でも、それって何?という疑問から始まり、さらに全ての患者さんたちがわかりやすいように、言葉をかみ砕いて説明する必要があります。

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基準がない国での教育モデル作成

数分の動画を作る中でも、栄養教育の基準がない国では様々な過程が必要となります。
まず、どこの国のモデルを基準にするのか、様々な国の栄養教育例や国連組織の介入例を元にここで伝える内容を決め、英語→わかりやすい日本語→さらにわかりやすいクメール語へと翻訳し、聞きなれた単語に言い換え、カンボジア人にとって見慣れない食べ物や高いものは、似たような栄養成分の食品に置き換えたのちにレコーディングに入ります。

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栄養支援が盛んな欧米組織の介入は東南アジアでは比較的少ないこともあり、実は東南アジアよりもアフリカ圏の方が資料や研究例が多かったりします。ここは使えそう、この視点はアジアの文化的視点を基にしたい、などとバランスを考えながらカンボジアオリジナルのものを作る必要があると感じています。

カンボジアは、国内で栄養について学ぶ機会は多くなく、クメール語で発信されている栄養関連の情報もとても少ないです。また、カンボジアの栄養事情に感じして英語やフランス語で発信されている文献もあまりなく、海外組織と連携する際には、驚かれることがたくさんあります。私もカンボジア人ではないですが、この国で栄養に携わる一員として、エビデンスを基に情報提供ができるようにしていきたいと感じます。

日本の栄養教育は、何十年と長い時間をかけ、様々な専門分野の知見を重ねて今の形になりました。病院で当たり前に栄養士が栄養指導をできること、教育施設で出る給食は栄養バランスが整っていること、栄養士でなく一般の人たちも「タンパク質」「鉄分」「ビタミン」などを理解し、時には考慮しながら自分の食生活を営んでいること。これらは決して当たり前ではないということを、カンボジアに来て強く実感しています。

難しいことを言っている、わからない。そんなものはうちでは買えない。で終わってしまうのではなく、これなら手に入る。出来そうだ。と行動に繋げてもらえるには、どんな工夫ができるのか。日々試行錯誤しながら活動を進めています。

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直接・間接両介入の必要性

これらの活動を通じて、いつも大切にしたいと思っているのは、自分がいなくなった後もカンボジア人スタッフが自主的に活動を続けていってくれるか。日本人が言ったから、とりあえず言われたから、ではなく、自分たちで必要性を理解し、ずっと続けていってほしいと思っています。

途上国の栄養支援にはNutrition Specific Approach(直接介入)とSensitive Approach(間接介入)という二つの分野があり、食糧支援や栄養供給などの活動は前者、栄養教育やスタッフの育成は後者に当たります。持続的・自発的な活動が行われるためには両者のバランスが必要となるため、今後は少しずつ教育・啓発面にも力を入れていきたいと考えています。

栄養概念の基盤が整っていないこの地で、どこまでできるのかと先が見えない部分もありますが、一つ一つの出会いと学びを大切に、今より少し良い変化をもたらすことができればと思っています。

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栄養管理部 川合

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▼プロジェクトの詳細はこちらから
医療支援 | カンボジア ジャパンハートこども医療センター 栄養管理部

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