活動レポート

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小さな命と向き合った1カ月 〜現地助産師の教育〜

up 2020.06.05

私が活動するカンボジアの病院には、隣接する現地の病院で分娩したお母さんと赤ちゃんが産褥入院をできるように受け入れています。
その中には、日本ではNICU(新生児集中治療室)やGCU(新生児回復室)などで注意深くケアする必要がある2000g以下の小さな赤ちゃんもいます。
これまで、そのような赤ちゃんのケアについてジャパンハートで働くカンボジア人助産師たちは少しずつ知識を得て、ケアをしてくれています。

今回は以前お伝えした活動レポートの続きを助産師教育という視点でお伝えします。

1700gを下回り、呼吸の状態も安定していない赤ちゃんを見るとなった時、前回もお伝えしたように、私自身とても不安でした。それと同時に気になったのが、カンボジア人助産師たちの反応でした。

入院したその日、不安を抱えながらケアする私たちをよそに、彼女たちは心配する様子を見せる気配がありません。最初の2日は、呼吸の不安定さからカンボジア人助産師では管理が難しいと判断し、私を含め2人いる日本人助産師が中心となってケアをしていました。

数日して、少し落ち着いてきたところで、夜勤前日のカンボジア人助産師をメインにケアに参加してもらうようになりました。授乳のケアやポジショニングなどを一緒にやり始めると、少しずつですが、SpO2を気にしたり、ポジションが崩れているのをきにしたりするようになりました。

カンボジア 助産師 ボランティア 小さな命と向き合った1ヶ月 〜現地助産師の教育〜

ケアを進める中で、徐々に小さい子を見るに当たりカンボジア人助産師たちにおける知識の程度が見えてきました。

例えば、保育器には保温だけでなく、音の遮断、風を起こさない、湿度の調整など、赤ちゃんに与えるストレスを減らすためのたくさんの機能があります。ですが、普段使っていない保育器の機能をしっかりと理解できていないことがわかりました。保育器は、赤ちゃんの保温をするということしか、彼女たちは知らなかったようです。

カンボジア 助産師 ボランティア 小さな命と向き合った1ヶ月 〜現地助産師の教育〜

そして何より、小さい子とストレスの関係性に対する知識が彼女たちにはなかったことが見えてきました。私たちが保育器でずっと管理している中、心配な様子を見せない理由はそこにあったのです。普段から、カンボジアと日本の教育システムの違いを意識しているつもりではいましたが、自分が一生懸命になっているあまり、彼女たちに大事なことを確認できていなかったのは、私でした。

この地で活動する上で、私は医療技術ではない部分を大切にしたいと思っています。それが”助産ケア”です。薬の投与や医療機械を使うといった医療行為ではなく、医学的な知識に基づいてできる工夫や赤ちゃんに優しい環境づくり、母親への育児教育など医療技術とは違うプロとしてできることがたくさんあります。しかし、カンボジアの多くの病院では、このようなケアがまだ浸透していないように感じています。助産師として、患者さんのためにできることが何か、それを考えるための知識を私たちは手助けする必要があり、それを察知する力をもっと磨かなければいけないなと今回学んだなと思います。

後に私は今回の赤ちゃんの入院についてどう思ったかを彼女たちに直接インタビューしてみました。そのインタビューで多くの助産師たちが、「小さいこの授乳がすごく難しいと思った」「小さい子の沐浴の注意がわかった」「この子が悪くなってしまったらどう対処するかをもっと知りたい」など、小さな赤ちゃんをケアすることの難しさを感じ取ってくれていました。中には「酸素が低い時があったから、あの子に障害が残らないか心配」ということを言ってくれた子もいました。

カンボジア 助産師 ボランティア 小さな命と向き合った1ヶ月 〜現地助産師の教育〜

 文中で私は自分が反省したことは、今後の改善点ではありますが、ここで働く助産師たちは、私の未熟さとは関係なく必要なことを自然と吸収してくれていたことがわかりました。それは私にとってとても嬉しいことでした。なぜなら、私たちがはっきりと伝えなくても、必死にケアしたことが彼女たちに響いてくれたということだからです。

 これから、ここカンボジアにおいて、このような”ケア”がもっと発展してけるように、そしてそれをここで働く助産師たちが先陣をきれるようにこれからも手助けできたらいいなと思います。

カンボジア周産期 助産師 西川美幸

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