活動レポート

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命を繋ぐ栄養

up 2023.02.17

こんにちは。栄養管理部の溝口です。

あるとき、右下顎横紋筋肉腫というがんの患者さんが入院してきました。口いっぱいに腫瘍が広がり食べ物を口から摂ることができず、ジャパンハートこども医療センターに来たときには既に1週間ほぼ飲まず食わずの状態でした。13歳の彼女は156cmの身長に対して30kgもない状況で、長い期間充分に食べられていなかったのだと思います。

そんな彼女に高エネルギー流動食を手作りし、チューブを使用した栄養補給(経鼻経管栄養)を行いました。
日本ではチューブ栄養専用の栄養剤が存在するため、患者さんの病態に応じた製品を選び、それをチューブに繋げば完了です。
しかしここはカンボジアの田舎。患者さんが必要充分な栄養を備えるチューブ用栄養剤はなく、必要量を与えるには手作りするしかありません。経験のない手作り栄養剤をがんで免疫の弱った患者さん相手に使用するなんて、自分のせいで死なせてしまったらどうしようと不安でいっぱいでした。

カンボジア 命を繋ぐ栄養

【栄養剤の材料】

栄養的にも衛生的にも細心の注意を払いチューブ栄養剤を作った初日。どきどきしながら栄養剤を注入する様子を見守りました。チューブの流れはスムーズで、彼女の状態も良好。そして驚くことに、もともとチューブで注入していた栄養強化ミルクよりも多く摂取できたのです。(彼女の場合、お腹が張ってしまうためにチューブで入れられる量が限られていました。)これを契機に毎日改良を重ねチューブ栄養剤を提供した結果、治療の影響でほとんど受け付けない日があるものの、体重減少は食い止められ、少し元気な様子も見られるようになりました。

カンボジア 命を繋ぐ栄養  流動食

【材料を加熱し、ミキサーにかけて漉し、完成】

また、この件を症例として医師や看護師に対して勉強会も実施しました。もともと30分を予定していましたが、絶え間ない質問で1時間にも及びました。以前行った栄養の勉強会を越える盛況ぶりで、スタッフの栄養への関心の高まりを感じられました。

カンボジア 命を繋ぐ栄養  流動食

約4ヶ月の入院後、残念ながら彼女は亡くなってしまいました。入院中、彼女はよく食べ物の動画を見ていました。やはり自分の口から好きなものを食べたかったのだと思うと、チューブででしか栄養を与えられなかったことに心が痛みます。

彼女は私に口から食べられない患者さんに対して栄養剤を手作りする勇気を与え、また医師や看護師の栄養への関心向上に貢献してくれました。彼女が私たちに与えてくれたことを糧に患者さんの心を救う医療に力を添えていければと思います。

栄養管理部 溝口

▼プロジェクトの詳細はこちらから
医療支援 | カンボジア ジャパンハートこども医療センター 栄養管理部

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