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【ラオス】「本当の幸せ」「心が満たされる」とはどういうことか

up 2025.07.10

2025年2月からカンボジア駐在中の蛭川看護師はラオスの甲状腺腫瘍患者さん対象の手術活動に参加すべく、5月にラオスへ渡航しました。
その手術患者の一人、バントンさんとそのご家族についてのエピソードが届きました。

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バントンさんは20年近く大きく肥大した甲状腺とともに生きていました。

そのため、気管の形が変形してしまっていたほどです。
10人の患者の中でも一番甲状腺が大きく、手術中や術後の合併症のリスクが高いため手術前から医師、看護師ともに細心の注意を払っていました。

幸い、手術は無事に終わり、リカバリールームで私はバントンさんのケアを行いました。
手術直後は傷の痛みを訴えたり、意識がはっきりしない方が多いのですが、バントンさんはしきりに手を合わせてなにかを一生懸命に伝えていました。

そばにいた通訳が「手術をしてくれてありがとうと言っている。ジャパンハートで手術ができてラッキーだ、今はとても幸せだって言っているよ」と教えてくれました。

誰よりもバントンさんが大変な状況なはずなのに、術後最初に発した言葉が感謝の気持ちだったことに驚きましたし、無事手術が終わり、私自身ほっとしたのを今でも覚えています。

術後1日目、汚れた手術着を交換しましょうと提案したところ、家族が総動員となって動き始めました。
大きいタオルをパーテション代わりにして覆う人、水を汲んでくる人、濡れたタオルで体を拭う人、着替えを手伝う人など。家族全員がバントンさんになにかしてあげたいという気持ちを強く感じました。

また、日本の病院と異なり、ラオスでは食事も家族が準備をします。
外の炊事場で家族が食べやすいお粥などを作り、患者さんたちは食事をとります。

さらに患者さんはベッド上で、家族はその下にゴザをひいて同じ空間で食卓を囲んでいます。
状態も落ち着いてくれば、次第に一緒にゴザに座って食事を囲む、炊事場や外で食事をするなど、病院にいながら、家のような空間がそこには広がっていて、とても新鮮に感じました。

10人全ての手術が終わったミッション3日目の夜、一段落してふと病棟を見渡した時に眠っている患者さんたちのそばで家族が一緒に過ごす姿を見て、本当の幸せってなんだろうと考える時間がありました。

大変な入院生活であっても家族とともに過ごすことで笑顔が多かったり、中には小さい赤ちゃんがいて病棟のみんなで様子を見たりかわいがったり。
患者同士も交流し助け合ったり、一緒にリハビリをしたりしている。
とても温かい雰囲気で、私自身も働いていて心地よく、心が満たされることが多かったです。

日本のように高度な医療はなく、お金やものも恵まれていない、けれども皆心は満たされている。
なにに幸せを感じるかは人それぞれあると思いますが、私にとって本当の幸せというのはお金やものではなく、家族や自分を大切に想ってくれる人たちのそばで生きることだ、その光景を見ながら改めて感じました。

日本で働いている時、面会制限や感染管理の都合などで患者さんが家族と会えずに悲しい思いをしている方をたくさん見てきました。
孤独な病院生活がかえって病状を悪くさせるのではないか、とさえ思うこともありました。
しかしラオスでは家族が常にそばにいることで、患者さんがどんどん元気になっていく姿を間近で見ることができました。

一方、患者さんが家族で過ごすことができる反面、家族は仕事を辞めたり、一時中断して付き添いに来ているケースもあり、経済的な負担が大きかったり、そもそもラオスという国自体の貧困や立地・医療アクセスの悪さなど問題は様々あります。
そして、その状況はカンボジアでも同様にあります。
できる限り患者さんが家族とともにその人らしく、小さなことでも幸せを感じながら入院生活を送ることができるにはどうしたらよいか、カンボジアでのこれからの活動を通して考え、少しでも力になれるよう行動していきたいと思います。

看護師
蛭川 陽香
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記事全文はぜひこちらからご覧ください。 
▼「本当の幸せ」「心が満たされる」とはどういうことか
https://japanvolunteer.org/voice/nurse_250620

▼プロジェクトの詳細はこちらから
ラオス 国立子ども病院での小児固形がん周手術期技術移転プロジェクト

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