ブンチャイくんは骨肉腫と闘う15歳の少年です。穏やかな笑顔と優しい心を持ち、入院当初からスタッフや他の子どもたちに自然に寄り添い、周囲を和ませてきました。
その姿は同じ病棟で過ごす仲間に安心をそして大人たちには勇気を与えてくれます。
恐怖や不安に直面しながらも、決して希望を失わず、自分の未来を信じて歩み続けるブンチャイくん。ここではその発症から今日までの歩みを辿り、彼が示す強さと優しさに触れていきます。
がんと告げられた日
最初の異変は学校から帰宅した夜に感じた足のしびれでした。最初は一時的なものだと思っていたものの、症状は次第に強まり、数日後には小さな塊となって現れました。
家族は心配し、まずは伝統療法を試しましたが改善は見られません。
村の病院では「リンパ節」と診断されましたが、その後さらに大きな病院で検査を受けた結果、左脛骨に悪性腫瘍があることが判明。骨肉腫と診断され、より専門的な治療のため当院へと紹介されました。
お母さんは当時の気持ちを振り返ります。
「とても心配でした。がんとわかったときは本当にショックで、何も手につかないほどでした」
恐怖を超えて仲間と共に歩む
治療や手術を控えた頃、ブンチャイくんの心には大きな不安がありました。
手術がどのように行われるのか、終わったあと自分はどうなるのか──考えれば考えるほど恐怖でいっぱいになったといいます。
それでも、彼は前を向く理由を見つけました。
「自分の病気を治したいと思ったし、両親がいつも『頑張れ』と応援してくれました。
最初は『自分だけが病気なんだ』と思って落ち込んでいたけど、病院に来てみると他にも同じようにがんで頑張っている子がたくさんいました。
それを見て、僕だけじゃないって思えて、頑張ろうという気持ちになれました。」
入院生活では同じ病室の仲間の存在が大きな支えになっています。
カカダくん(左下顎部ユーイング肉腫で入院中)とは一緒にゲームをしたり、病院のイベントに参加したりしながら、互いに励まし合って日々を過ごしています。
ときには冗談を言い合い、笑い合うことも。
その姿には厳しい治療の中でも友情や笑顔を生み出す力があふれています。
大きな決断の先に
2025年7月、ブンチャイくんは左足の切断手術を受けました。およそ2時間に及ぶ大手術は本人にとっても家族にとっても大きな決断でした。それでも彼は落ち着いた表情を崩さず、しっかりと手術に臨みました。
術後は痛みや戸惑いがあり、先の見えない不安に押しつぶされそうになる時もありました。しかし時間が経つにつれて少しずつ心が落ち着きを取り戻し、再び笑顔を見せられるようになっていきます。
入院生活の中で勉強や病院でのイベントは彼にとって大きな支えです。
教科書を開き学び続けることは未来への希望につながり、また病院の水族館イベントでは初めて出会う生き物に目を輝かせ、心を弾ませました。
お母さんもまた、病院での日々をこう語ります。
「病院では患者さん同士が家族のように過ごせています。自分の家のように安心でき、みんな優しく協力してくれるのでありがたいです」
治療の先に描く夢
現在、ブンチャイくんは35週にわたる抗がん剤治療のうち17週目までを終えています。厳しい治療を続けながらも、少しずつ日常生活への復帰を目指しています。
治療が終わったら、まず「家に帰って勉強がしたい」と話すブンチャイくん。彼には明確な将来の夢があります。
「大学に合格して、小学校の先生になりたい。勉強も子どもも好きだから、子どもたちと一緒に過ごしたい」
お母さんもまた、その未来を信じています。
「大学に合格して、小学校の先生になりたい。勉強も子どもも好きだから、子どもたちと一緒に過ごしたい」「息子はしっかり者だから心配していません。性格もよく、村の人たちも応援してくれています。」
そして彼ら家族は、医療スタッフや支援者への感謝の思いを強く抱いています。
「本当にありがとうございます。子どもを優しく見守り、支えてくださったことに感謝しています。」
終わりに
ブンチャイくんの歩みからは、恐怖や不安を抱えながらも希望を胸に前進する強さが伝わってきます。その姿勢は同じ病棟の仲間や医療スタッフにとっても大きな励ましとなっています。
私たちはこれからも一人ひとりの子どもたちが再び笑顔で遊び、学び、家族や友人と日常の喜びを分かち合えるよう、そばに寄り添い続けていきます。
その歩みを支えてくださる多くの方々への感謝とともに、子どもたちが未来に向かって羽ばたけるよう尽力してまいります。
長期学生インターン 伊藤大輝
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