「小さい子は、いっぱい笑ってくれるから楽しい。」
そう語ってくれたのは、16歳のMony(モニー)くん。
彼は現在、小児がんの一種である横紋筋肉腫と闘いながら、2025年1月頃からカンボジアのジャパンハートこども医療センターで入院生活を送っています。
横紋筋肉腫は筋肉を構成する細胞から発生するまれながんで、特に子どもに多くみられる疾患です。
モニーくんは耳の痛みをきっかけに受診した際、膿がたまっていると診断され処置を受けましたが、2か月後に再び腫れと痛みが出現。
耳鼻科や小児科で検査を繰り返した結果、がんが見つかりました。
現在、モニーくんは抗がん剤治療と放射線治療を並行して受けています。
抗がん剤治療は全39週のうち、現在は19週目に入り、ちょうど折り返し地点を迎えたところです。
放射線治療は全28回のうち18回が終了しました。
当院では受けられないため、毎朝7時ごろに出発し、プノンペンの病院で治療を受けています。病院に戻るのは昼過ぎ、遅いときには14時ごろになることもあります。
なかには、5日連続で治療を受けたあと2日間の休みを挟み、再び5日連続で通院するというハードな週もあります。
そんな中でもモニーくんは日々の治療に真摯に向き合い、困難な治療にも前向きな気持ちで取り組んでいます。
みんなの “お兄ちゃん”
モニーくんは病棟の中で子どもたちの「お兄ちゃん」のような存在です。
現在、この病棟には32人の子どもたちが入院しており、最年少は1歳、最年長は16歳のモニーくん。年齢層は幅広く、多様です。
モニーくんは年下の子どもたちに声をかけて一緒に遊んだり、同年代の子と会話を楽しんだりと、どの年齢の子とも自然に関わる姿が日常的に見られます。
インタビュー中もモニーくんのまわりには次々と子どもたちが集まり、笑いながら会話に加わる様子が印象的でした。
本人は「自分から話しかけることが多い」と話していましたが、実際には、彼のまわりに人が自然と集まってくるように感じられます。
「小さい子と遊ぶのが好き。いっぱい笑ってくれるから、僕も元気になる」
そう、穏やかな口調で話すモニーくんのまわりには、いつも笑いの絶えない時間が流れています。
支え合いが生まれる場所
病棟の中には子ども同士のつながりだけでなく、家族同士の支え合いや子どもと家族を超えた深い絆も随所に見られます。
たとえば、処置のためにICUへ移動する子どもに、他の入院児が付き添い、そばで見守る姿がありました。
ある子が注射を受けるときには、看護師が来るまでの間、ベッドの上で一緒に腹筋をしてふざけ合い、緊張を和らげていました。
そして注射の瞬間にはその子のそばで静かに寄り添い、励ますように見つめる友だちの姿がありました。
さらに子ども同士だけでなく、お母さん同士の間にも家族の枠を超えた支え合いが自然と生まれています。
たとえば、カフェに一緒に買い出しに出かけたり、外出中のお母さんの代わりに、他のお母さんがその子の面倒を見たりと、日常の中に助け合いの光景があちこちに見られます。
こうした風景からは血縁を超えた“もうひとつの家族”の存在が感じられます。
励まし合い、支え合う病棟の真ん中で
この病棟では年齢や背景の異なる子どもたちが互いに励まし合いながら治療に向き合っています。
そんな病棟の真ん中にはいつもモニーくんがいます。彼の笑顔は今日も病棟にあたたかな空気を届けてくれています。
彼自身の闘病もまだ続いていきます。その中には楽しい時間もあれば、苦しい瞬間もきっとあるでしょう。
それでも、これまで彼が築いてきた“つながりの強さ”が、きっと彼自身を支える力になっていくはずです。
長期学生インターン 笹木澪莉
▼カンボジアでのプロジェクトの詳細はこちらから
https://www.japanheart.org/tag/cambodia/
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カンボジア ジャパンハートこども医療センターでの医療活動