活動レポート

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【カンボジア医療活動】誇りを届ける、看護師の里帰り

up 2025.06.30

「いつか、成長した姿を見せたい」

これはジャパンハートこども医療センターで看護師として働く私が日々ともに現場に立つ看護師たちの姿を見ながら、心の中に抱いている願いです。
当院ではカンポット州の看護学校を卒業したスタッフが多数活躍しています。
彼らの成長した姿をいつか母校の先生や後輩たちに見せたい――そんな思いを胸に、私は日々、彼らとともに歩みを進めてきました。

成長し続ける若き看護師たち

カンポット州はカンボジアにある25の州のひとつで、当院から車で約3時間ほどの距離にあります。
胡椒の名産地として知られ、ドリアンの大きな彫像が印象的な町です。

カンボジアにも日本と同様に大学・短大・専門学校にあたる看護教育機関があり、カンポットの看護学校はその中でも専門学校に位置づけられています。
在学中に先生からジャパンハートを紹介され、応募してくれた彼らが今こうして医療現場の最前線で働いています。

当院は首都プノンペンから車で約1時間の地方都市にあります。プノンペンには大型ショッピングモールやおしゃれなカフェ、大きな病院なども多く、生活面でも便利な環境が整っています。
しかし、私たちの病院がある地域は自然に囲まれた静かな田舎町です。
それでも彼らがジャパンハートを選んでくれたのは先生の推薦だけでなく、患者さんに寄り添う医療や学びの多い現場に魅力を感じてくれたからだと思います。

働き始めた当初の彼らは英語もまだたどたどしく、業務のひとつひとつに戸惑う姿が多く見られました。見ているこちらも、ハラハラすることの連続でした。
それでも、物怖じせず挑戦していく姿勢で驚くほどのスピードで前に進んでいく様子には、日々感心させられています。
その積極性もあって、個人差はあるものの、成長のスピードはとても早く、今では自信をもって堂々とした姿で患者さんの看護にあたり、笑顔で仕事をする姿が当たり前のようになりました。

当院には成人病棟・小児病棟・手術室・外来がありますが、彼らはそれぞれの部門で後輩指導を担うまでに成長しています。
さらに当院では、心肺停止の患者さんに迅速に対応するため、BLS(一次救命処置:Basic Life Support)の普及にも力を入れています。
彼らはそのBLSも持ち前の積極性ですぐに習得し、今では病院職員への指導も行うまでになりました。
そんな日々の積み重ねの中で、「看護師として成長した」と自信を持って言えるようになった今、その思いを伝える場を作りたいと考えました。

学びのバトンをつなぐ:カンポット看護学校での一日

日々の看護に真摯に向き合ってきた彼らに、「看護師として成長した」と胸を張って言える場をつくりたい――そんな思いから、今回の里帰りを企画しました。
参加したのはジャパンハートで働いて1年目から5年目の看護師たちです。

これまで、自分の成長を誰かに語る機会はほとんどありませんでした。
彼らはただひたすらに患者さんと向き合い、悩みながらも学びを重ね、着実に歩みを進めてきました。
さらに、今年10月末に新病院がオープンします。

そこで今回は、「一緒に働きたい」と思ってもらえるような病院紹介を行い、先輩の姿に憧れた後輩たちがジャパンハートに興味を持ってくれることを目指しました。

病院紹介の内容についてはカンボジア人スタッフに任せました。
今回は卒業生スタッフ9人と事務スタッフが同行し、カンポットの看護学校を訪問しました。

朝5時過ぎに出発し、8時に学校へ到着。そこでは1年生の学生100人が私たちを待っていてくれました。
卒業生スタッフも、後輩の学生たちも、少し緊張した面持ちでした。
はじめに事務スタッフがジャパンハートの概要を説明し、続いて卒業生の先輩スタッフたちがJHCMCでの仕事や学びについて、16枚のスライドを使って紹介しました。
スライド終了後、学生からの質問はありませんでしたが、後に配ったパンフレットを真剣な表情で見つめる姿が印象的でした。

続いて、BLS(一次救命処置)講習を実施しました。まずはスライドを用いた講義を行いました。
途中、マイクの電源が切れたり、動画が再生できなかったりといったハプニングもありましたが、先輩たちは堂々と対応していました。
講義のあとは実技へと移り、持参した3体のBLS人形を使いながら、先輩たちが胸骨圧迫やバッグバルブマスク換気(BVM)を実演し、丁寧に説明しました。
その後、学生たちにも実際に胸骨圧迫とBVM換気を体験してもらいました。

最初は恥ずかしがっていた学生たちも、一度始めると「やってみたい!」という声が次々に上がり、予定時間を超えるほどの盛り上がりとなりました。
また、多くの質問も寄せられ、それに対して先輩たちは自信を持って、丁寧に答えていました。
先輩スタッフにとっても、学生たちにとっても、多くの学びがある時間になったと思います。

嬉しさと頼もしさに包まれて

私は彼らが入職した頃から見守ってきました。
最初はハラハラドキドキしながら見ていたのですが、大勢の前で堂々と説明している姿を見たときには、本当に感動しました。
まるで娘や息子の成長を見守るような気持ちで、頼もしさと嬉しさが込み上げ、思わず目頭が熱くなりました。
学校の先生方にもそんな成長した姿をしっかり見せることができたのではないでしょうか。

これまで近くで見てきた彼らが立派に成長したなと心から言える一日でした。
今回参加してくれた学生の中から、将来何人がわたしたちの仲間になるかはわかりません。
しかし、ジャパンハートの想いとそこで働く先輩の姿が学生である彼らの将来の希望となればと思います。
成長したスタッフたちは今、後輩の指導にもあたっています。

そして、カンボジアにより良い医療を届けられるよう、日々懸命に取り組んでいます。
カンボジアでは10月末に新しい病院がオープン予定です。きっと彼らなら素晴らしい病院をつくってくれることでしょう。
これからの彼らのさらなる成長がますます楽しみです。

ジャパンハートカンボジア
看護師 藤井祐美子

▼カンボジアでのプロジェクトの詳細はこちらから
https://www.japanheart.org/tag/cambodia/

▼プロジェクトの詳細はこちらから
カンボジア ジャパンハートこども医療センターでの医療活動

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