活動レポート

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【カンボジア医療活動】アイオの瞳にうつる世界──好奇心がくれる元気の魔法

up 2025.07.09

彼の名前はアイオ。
右腎芽腫という腎臓にできるがんと闘う、笑顔がチャームポイントの3歳の男の子です。腎芽腫は小児の腎臓に発生する悪性腫瘍で、進行すると肺やリンパ節へ転移する可能性があります。
当院にやって来てから約3ヶ月が経ち、病院の生活にも慣れて、いつも笑顔を見せてくれるアイオ。
その笑顔の裏には、抗がん剤治療の痛みや苦しみに耐える毎日があります。

右腎芽腫──がんとわかったその日から、手術を終えるその日まで。

今もそばで彼の闘病生活を支えるお母さんが、当時の思いを語ってくれました。

好奇心と優しさにあふれた、小さな賢者のような存在

アイオは観察力と学習力に優れたとても聡明な男の子です。プレイルームで掃除をしていると、いつの間にかほうきを手に取り、見よう見まねで上手に手伝ってくれます。

「ありがとう」「こんにちは」と日本語で挨拶をしたり、カンボジアの文化である深いお辞儀をする姿にスタッフも思わず笑顔になります。
私たちインターンのカメラにもすっかり慣れ、自分で電源を入れてズームや撮影、画像確認までこなす姿はまるで小さなプロのよう。彼の好奇心と吸収力にはいつも驚かされます。

そして何より、彼のチャームポイントは笑顔。いつも無邪気な笑顔を見せ、体と同じくらいの小さな自転車で廊下を元気に駆け回っています。

私の姿を見つけると、「ナクルーマユー!(まゆ先生)」と呼びながら駆け寄ってきてくれるアイオ。
その光景は何度見ても愛おしさで胸がいっぱいになります。

しかし、そんなアイオの姿の裏には病と向き合う日々があります。

お母さんが振り返る、病気を知ったあの日のこと

アイオの病気が分かったとき、胸には重く深い不安が押し寄せました。

「最初は特に症状がありませんでしたが、彼のお腹に塊があることに気づき、病院を受診しました。
その後、経過観察を5ヶ月間ほど続けましたが、腫瘍が悪性であることが判明しました。
病気だと分かったときは落ち込んで、どうしたらいいのか分かりませんでした。
親戚に相談して、みんなで考えました。
プノンペンの病院で詳しい検査を受けた後、ジャパンハートこども医療センターに紹介されました。入院当初は緊張していました。
息子の体調も悪くて、心配ごとばかりでした。
抗がん剤治療のあと、気持ち悪いと訴えて何度も吐いていて……見ているのがつらかったです。」

それでも、病気と向き合うことができたのは医師や看護師たちが丁寧に治療の説明をして、笑顔で接してくれたからだと語ります。

「スタッフの皆さんが親切で、アイオと遊んでくれて、彼もとても楽しそうです。
入院当時と比べると、元気になり、食べるものも増えて、本当にありがたいです。」

手術という大きな挑み


2025年6月24日
アイオは中原医師の執刀のもと、右腎にできた腫瘍を取り除く大きな手術に臨みました。

手術当日の朝、眉をひそめて今にも泣き出しそうな表情を浮かべていました。
いつもの元気な姿とはまるで違い、小さな体で何か大きなことが起きるのを感じ取っていたのでしょう。
オペ室に入ってからは看護師たちが動画を流しながら、アイオの気を紛らわせようと一生懸命になっていました。
その姿にスタッフたちの「どうにか安心させてあげたい」という優しさがにじんでいました。

手術は約5時間に及び、無事に終わりました。

「手術前は不安だったけれど、とにかく無事に終わってほしい、それだけを考えていました。術後に目を覚ましたアイオを見て、やっと安心できました。」

お母さんはどこかほっとした表情を浮かべます。

数日後には少しずつ笑顔も戻り、プレイルームに再びアイオの元気な姿が戻ってきました。
以前と変わらない元気な様子で、ほうきを手にせっせと掃除を手伝ってくれる姿に思わず安心しました。

ある時ふと、自分からシャツをめくり、お腹の手術痕を見せてくれました。
そして、にっこりと少し誇らしげに「チョップ ハウイ(終わった)」と一言。
その笑顔の奥にはきっときっと小さな体で感じていた不安や頑張りがあったのだろうと、胸がいっぱいになりました。

アイオの明るい未来へ、願いを込めて

アイオの将来について、お母さんはこう語ります。

「この子には未来がある。退院したら勉強に励んで高校を卒業してほしい。
そのあとは彼がなりたいと思うもの――先生でも医師でも――どんな夢でも応援したいです。」

アイオの未来にはまだたくさんの「これから」が待っています。
完全に回復するにはきっと時間がかかるでしょう。
けれども——彼の強さ、支える家族の優しさ、そして医療の力が重なり合い、確かな希望が生まれています。

興味を持ったすべてのことにこれからも全力で向き合っていってほしい。
そしていつか、自分のやりたいことを見つけ、夢を叶えたアイオの姿に出会えることを心から願っています。

長期学生インターン 小野澤真由

▼カンボジアでのプロジェクトの詳細はこちらから
https://www.japanheart.org/tag/cambodia/

▼プロジェクトの詳細はこちらから
カンボジア ジャパンハートこども医療センターでの医療活動

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