活動レポート

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【カンボジア医療活動】乳がん検診活動の振り返りー地域に寄り添う2日間の取り組みー

up 2025.11.26

よりよい外来へ向けた改善の積み重ね

2024年10月12〜13日の2日間、ポンネル地区のヘルスセンター(以下、HC)にて乳がん検診を実施しました。
今回は今年2月よりジャパンハート医療センター(以下、JHMC)で勤務している蛭川看護師がその活動を振り返ります。

【カンボジア医療活動】乳がん検診活動の振り返りー地域に寄り添う2日間の取り組みー

患者さんと関わる中で気づいた“受診の壁”

私は普段、成人病棟と外来で勤務しています。患者さんと接する中で常に感じてきたことがあります。
それは、
「どうしてこんなに悪くなるまで病院に来られなかったのだろう」
という疑問でした。

乳がん患者さんでは特にその傾向が強く、小さなしこりの段階で受診する方はわずかです。多くの患者さんは病状がかなり進行してから来院されます。
中には治療を望んで来られたにもかかわらず、進行が進みすぎて手術ができず、肩を落として帰られる方もいました。そのたびに胸が痛みました。

カンボジアでは、「検診」「予防医療」「早期発見」という概念がまだ十分に広まっていません。
痛みが出るまで受診できない背景には、貧困・交通手段の不足・医療アクセスの難しさなど複数の要因があります。

「そんな現状を少しでも変えたい。」

その思いからこの活動は始まりました。

【カンボジア医療活動】乳がん検診活動の振り返りー地域に寄り添う2日間の取り組みー

ヘルスセンターと共につくる“地域に根ざした乳がん検診”

活動開始にあたり、まずいくつかのHCを訪問し、JHMCとして地域医療に貢献したいという思いを直接伝えました。
最終的に8箇所のHCが協力を申し出てくださり、その時の心強さは今でも忘れられません。

その後も毎月HCを訪問し、

● 乳がんに関するレクチャー
● セルフチェック指導
● 地域への広報方法についての相談

などを継続的に行い、少しずつ信頼関係を築いていきました。

レクチャー資料の一部はカンボジア人看護師が作成し、発表も回を重ねるごとに堂々とした姿に成長していきました。
その姿を見るのは私にとっても大きな喜びでした。

検診当日にはJHMCの乳腺外科医・堀医師にも参加いただきました。
オンラインで相談していた先生とようやく現地で一緒に活動できることをとても楽しみにしていました。

【カンボジア医療活動】乳がん検診活動の振り返りー地域に寄り添う2日間の取り組みー

HCと初めてのミーティング

【カンボジア医療活動】乳がん検診活動の振り返りー地域に寄り添う2日間の取り組みー

カンボジア人看護師によるレクチャー

80名の参加、検診がもたらした成果

検診当日は「住民の方は来てくれるだろうか…」という不安もありました。
開始時刻になっても人が集まらないHCもあり、市内をスタッフと歩いて一軒一軒声をかけて回りました。
その地道な広報が実を結び、徐々に住民の方々が集まり、最終的に2日間で約80名が検診に参加してくださいました。

町で偶然声をかけた女性がしこりに悩んでおり、検査の結果、悪性疑いが見つかり生検につながったケースもありました。

「小さな一歩が誰かの命を救うきっかけになる」

ということを強く実感した瞬間でした。

また、セルフチェック指導にもスタッフが積極的に参加し、

● 問診の補助
● エコーの見学
● 自ら検診を受ける

といった行動が見られました。

「HCが活性化して嬉しい」「乳がん以外も学びたい」という声もいただき、活動の広がりを感じる2日間となりました。

【カンボジア医療活動】乳がん検診活動の振り返りー地域に寄り添う2日間の取り組みー

セルフチェックの方法についてレクチャーしている様子

地域の未来を見据えて。続いていく乳がん検診の取り組み

検診後はJHMC外来でフォローアップを実施しました。
モバイルエコーでは判断が難しかった患者さんにはより詳しい検査や生検を行いました。
堀医師からカンボジア人医師への直接指導も行われ、地域医療の底上げにつながる大きな一歩となりました。

【カンボジア医療活動】乳がん検診活動の振り返りー地域に寄り添う2日間の取り組みー

堀医師とカンボジア人医師

今後は
検診 → フォローアップ → 必要な手術 → 術後ケア
まで、
切れ目のない医療を提供できる体制をさらに強化していきたいと考えています。

今回の活動を通して、地域の健康意識向上やHCスタッフとの協働体制の構築など、多くの学びと成果がありました。
これからも継続的に活動を行い、より多くの方に乳がん検診の大切さを届けていきたいと思います。

最後に、活動に関わってくださった堀医師をはじめ、すべてのスタッフ、HCの皆さまに心より感謝申し上げます。

メディカルチーム看護師 蛭川陽香

▼プロジェクトの詳細はこちらから
カンボジア ジャパンハートアジア小児医療センター

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