ジャパンハートアジア小児医療センター(以下、ACMC)へ小児がん患者さんたちの引っ越しも無事に終え、本格的に医療活動が開始した第一週。
新しい病院棟にはまだ真新しい空気が流れていますが、その中でスタッフ一人ひとりが「ここから始まる新しい一歩」を胸に動き始めた、そんな一週間となりました。
外来始動、つながる医療の形

週が明け、待っていたのは外来の始動です。 最初はソフトオープン。カンボジアでは、実際に患者さんが受診し、その声を家族や近隣の人たちに伝えることで、自然と医療機関の存在が広がっていくことが多くあります。そのため私たちは、目の前の一人ひとりの患者さんに丁寧に向き合い、「安心して受診できる場所がここにある」ことを少しずつ知っていただけるよう努めています。
プレオープン時は5〜6名の受診でしたが、日を追うごとに10名、20名と増え、先日は約30名の患者さんが外来を訪れました。小児がんで入院していたお子さんの定期検診や、発熱・腹痛があり初めて受診される方など、さまざまな理由で来院されています。
病院から車で5分ほどに住むという方は、「今までは遠くの病院に行くしかなかったから、近くに小児病院ができて本当に嬉しい。安心して子どもを連れてこられる」 と話してくださり、またFacebookで病院を知り「日本の団体が作った病院だから来たかった」と来院してくださった方もいました。中には数時間かけて遠方から来てくれた方もおり、この病院に寄せられる期待の大きさを実感します。
よりよい外来へ向けた改善の積み重ね

受診者が増える中で、医療者側も連日ディスカッションを重ねています。
「スタッフそれぞれの役割がスムーズに連携できるフローとは何か」
「患者さんが安心して受診できるように、どの部分を見直せるか」
そんな問いを一つひとつ検討し、実践しながら改善を積み重ねています。
医療が“動きはじめる”とは、単に診療がスタートするだけではなく、患者さんと医療者双方が安心して過ごせる環境が整っていくプロセスでもあるということ。 そのことを全員が意識しながら、日々の外来づくりに取り組んでいます。
医療と笑顔が息づき始める場所
外来が活気づく中、小児がん病棟には子どもたちの笑顔が広がっていました。
本格的な医療活動の開始にともない、吉岡医師がACMCに入り、病室一つひとつを丁寧に訪れていました。子どもたちや親御さんとの交流には温かな時間が流れており、やさしい雰囲気に包まれていました。

さらに、小児がん病棟では音楽会も開催されました。
企画してくれたのは、カンボジア人のラクスメイ医師と、OG看護師としてサポートに入ってくれていた久島看護師です。
新しくなった広く明るいプレイルームに、美しい音色が響き渡ります。
音楽に包まれた子どもたちはとても幸せそうで、なかにはウクレレを手に参加する男の子の姿も。その場にいた誰もが、音楽を通して子どもたちが少しずつ笑顔になっていく瞬間を静かに見守っていました。
この音楽会は、子どもたちだけでなく、保護者やスタッフにとっても心の温まる時間となり、 「この場所で、この子たちと、この時間を迎えられた」 という喜びが、病棟全体に広がっていました。

新病院の未来へ、医療と笑顔が根づくために
新病院としての第一歩を踏み出したこの一週間。
ここから積み重ねていく診療や、子どもたちの笑顔のひとつひとつが、ジャパンハートアジア医療センターを「医療と安心が宿る場所」へと育てていくのだと感じています。
これからも子どもたちとご家族に寄り添いながら、この場所をよりよい病院へ育てていきたいと思います。

カンボジアスタッフ 髙橋明日香
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