活動レポート

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【カンボジア医療活動】ミッションが映す現地医療のいま

up 2025.07.14

好奇心と優しさにあふれた、小さな賢者のような存在

2025年6月、ジャパンハートこども医療センターでは5回にわたる集中的な手術活動が行われました。
なかでも22日〜26日には、国立病院機構岡山医療センターの中原康雄医師によるミッション(集中的な手術活動)が実施されました。
長年にわたりジャパンハートの活動を支援している中原医師は日本とカンボジアを行き来しながら小児がんの手術を行い、現地医療者の育成にも尽力されています。

今回は胸膜肺芽腫、肝芽腫、腎芽腫などを含む小児がん手術が5件実施されました。
術後のフォローアップも含めて、現地スタッフと連携しながら慎重に対応が進められ、一人でも多くのこどもたちの未来を守るため、限られた時間の中で全力が尽くされました。

胸膜肺芽腫と闘う2歳の小さな命

胸膜肺芽腫(きょうまくはいがしゅ)と闘う2歳の女の子、ジンラックちゃんは、今回手術を受けたひとりです。
2024年11月頃から発熱と息切れが続き、チャリティー病院で治療を受けて一度は退院しましたが、再び高熱や歩行困難の症状が現れ、詳しい検査が行われました。
その結果、肺や背骨に腫瘍があることが判明し、生検の結果、がんであることがわかりました。
そして紹介を受けて、ジャパンハートにやってきました。

診断された病気は「胸膜肺芽腫」。
胸膜肺芽腫は乳幼児に発生する原始性腫瘍で、肺やその周囲の胸膜に腫瘍ができる病気です。
進行すると呼吸機能に影響を及ぼす可能性があるため、早期の診断と外科的治療が非常に重要とされています。

入院してから約5か月、小さな体で抗がん剤治療を1サイクルずつ乗り越えてきました。
手術前、ジンラックちゃんは一度も泣くことなく、スタッフとおもちゃで遊ぶ様子も見られました。
ときおりスタッフの顔を見て微笑む姿がとても印象的でした。そして約2時間におよぶ手術を無事に乗り越えました。

「病気だと聞いたときは、本当に悲しかったです。でも、人間は病気そのものを見ることはできません。だからこそ、最後までできる限りの治療をしてあげたいと思いました。
手術が終わったと聞いたときは、本当に嬉しかったです。彼女のお母さんも泣いて喜び、家族みんなが安心しました。」

そう話してくれたのは、ジンラックちゃんの闘病生活に寄り添ってきたおばあちゃんです。

今後も慎重な経過観察と治療が必要ですが、ジンラックちゃんが元気に育ち、ご家族とともに穏やかな日々を過ごせるよう、スタッフ一同、全力でサポートを続けてまいります。

中原医師が語る成長と課題

中原医師は「今回のミッションで特に印象的だったのは、現地スタッフの成長でした」と振り返ります。
中でもカンボジア人のシーパン医師はこれまで助手として手術に関わっていましたが、今回は執刀を担う場面もありました。
術前の画像評価から術後の管理までを一人でこなせるようになり、「本当に頼もしい存在です」と評価します。
また、「限られた設備の中で多くの小児がん手術を行い、日本と遜色ない水準で実施しているのは素晴らしい」と、他のスタッフへの信頼も語っています。

今後の展望については「関わる人が増え、医療機器が整えば、さらに治療の幅が広がる」と前向きに語る一方で、神経芽腫のハイリスク症例への対応が依然として大きな課題であることにも言及しています。

「神経芽腫の根治には大量化学療法や骨髄移植が必要ですが、現地ではまだその体制が整っておらず、根本的な治療が難しいのが現状です」と話します。

カンボジアの小児がん治療には、いまだ多くの壁がありますが、現地医療者の努力と支援の積み重ねにより、今後さらなる発展が期待されています。

命をつなぐ医療の現場

命と真摯に向き合う現場では高度な医療技術だけでなく、こどもたちやご家族の強さ、そして支え合う人々の想いが大切です。
今回のミッションを通じて救われた小さな命の一つひとつが未来へとつながっていくことを願い、私たちはこれからも歩みを止めずに取り組んでまいります。

同時に現地の医療体制の強化や医療者の育成に向けて、今後も着実に取り組んでまいります。
これからも皆さまのご支援を力に、一人でも多くの子どもたちの命を守るべく、真摯に活動してまいります。

学生インターン 伊藤大輝

▼カンボジアでのプロジェクトの詳細はこちらから
https://www.japanheart.org/tag/cambodia/

▼プロジェクトの詳細はこちらから
カンボジア ジャパンハートこども医療センターでの医療活動

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