活動レポート

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【カンボジア医療活動】見守るという在り方

up 2025.05.07

2025年4月20日〜23日、カンボジアにあるジャパンハートこども医療センターで、吉岡秀人による集中的な手術活動(ミッション)が行われました。 彼は毎月この地を訪れ、医療と、そして人の心に向き合い続けています。

「吉岡ミッション」と聞いて、みなさんはどんな光景を思い浮かべるでしょうか。
手術台の前に立ち、命と向き合う姿を思い浮かべる方も多いかもしれません。少なくとも、私はそうでした。
これまでメディア越しに見てきた彼は、医療が届きにくい地へと自ら足を運び、数多くの命を救い続けてきた存在でした。

【カンボジア医療活動】見守るという在り方

そんなイメージを胸に抱いて迎えた、私にとって初めての吉岡ミッション。
心に深く刻まれた光景が、2つあります。

あえて手術室に入らないという選択

今回のミッションでは27件の手術が行われましたが、そのうち吉岡秀人が手術室に入ったのは、半分にも満たない数でした。私はこれに少し驚きました。
けれど、そこには明確な理由があったのです。

吉岡秀人はこう語ります。

「自分がいることで、スタッフが“見られている”と意識して、本来の力を発揮できなくなることもある」と。
だからこそ、必要以上に手術室には入らず、けれど何かあればすぐに駆けつけられる距離にいる。その“絶妙な距離感”が、現地スタッフの成長を促していることを知りました。

実際、毎朝の手術予定の確認の際、インターンとしてスタッフに「吉岡先生が入る予定の手術はありますか?」と尋ねると、手術室担当の看護師は「何かあれば呼びます」と答えていました。その言葉の裏には、「自分たちでやってみたい」という意志と、「何かあっても大丈夫」という安心感が、確かに共存していました。

【カンボジア医療活動】見守るという在り方

「自分たちでできる」という自信へ

そんな吉岡秀人のスタンスについて、ジャパンハートで働き始めて8年目を迎える小児病棟の医師、シーパン先生にも話を伺いました。

「ミッション中は、たとえ手術中に問題が起きても、吉岡先生がいてくださるという安心感があります」
シーパン先生は、やわらかな笑みを浮かべながら、ゆっくりと言葉を紡ぎました。

「でも、ミッションが終われば、私たちは自分たちだけで乗り越えなければなりません。だからこそ、吉岡先生がいてくださる間に、自分たちでベストを尽くしてみる。そして、それを成功させた経験が、自信になっていくんです。」

その表情は、静かでありながらも力強い責任感と温かさに満ちていました。

また、吉岡秀人が手術に入った際には、手技や考え方を直接教えてくれるため、さらなる技術向上につながると語ってくれました。手術前には、手術計画について丁寧に相談に乗ってくれるため、自信を持って手術に臨むことができているのだそうです。

そしてその小さな成功体験の積み重ねが、スタッフ一人ひとりを確実に成長させているのだと、話してくれました。

「以前は、もっと吉岡先生が手術室に入って、直接手術をされることも多かったんです」

少し懐かしむようにゆっくりと、シーパン先生は続けます。

「でも、ここ1年くらいで、先生が入る件数は減ってきたと感じます。それはきっと、私たち現地スタッフを信じてくれているから。私たちの技術が向上している証だと思っています。」

言葉の端々から、吉岡秀人への深い信頼と、自分たちへの誇りが静かに滲み出ていました

【カンボジア医療活動】見守るという在り方

聴くこともまた、医療である

吉岡ミッション中は、朝礼前の30分間、スタッフが日頃感じていることや疑問に思っていることを吉岡秀人と話し合う時間があります。実際に、今回のミッション中でも3日間、この時間が設けられました。

その中で印象的だったのは、吉岡秀人が“誰の話にも耳を傾けていた”ことです。
医療の現場では、手術や処置といった「目に見えるもの」が注目されがちです。
でも、誰かの言葉や表情、心の声に耳を傾けることにも、確かな力があると感じました。

実際に、吉岡に相談をしたスタッフは、話し終えた後、悩みが少し晴れたような表情を浮かべていたり、自分たちの活動の方針を定め直すきっかけを得たりしていました。
また、新たな視点からのアドバイスを受けることで、プロジェクトをより良いものに変えようとする前向きな姿勢も見られました。
最高顧問という立場でありながら、一スタッフの意見にも真摯に向き合う姿に、私は深く感銘を受けました。

【カンボジア医療活動】見守るという在り方

誰かの小さな声に耳を澄ませ、受け止め、対話を重ねていく――
そんな吉岡秀人の姿に、どっしりとした力強さを感じました。

私が思っていた「吉岡秀人」という人物は、手術の最前線に立つ“プレーヤー”でした。
でも実際にそばで見て思ったのは、それだけではないということ。

手術をしない時間にも、吉岡秀人は、スタッフの成長に、JHCMCの成長に、そしてジャパンハート全体の未来に、全力で向き合っていました。
それは、当たり前のようでいて、決して当たり前ではないこと。

命と人に向き合う、吉岡ミッションの“熱”を、私は忘れません。

長期学生インターン 笹木澪莉

▼カンボジアでのプロジェクトの詳細はこちらから
https://www.japanheart.org/tag/cambodia/

▼プロジェクトの詳細はこちらから
カンボジア ジャパンハートこども医療センターでの医療活動

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