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【周産期レポート】孤児院で性教育!

up 2023.11.28

皆さんこんにちは。カンボジアの「ジャパンハートこども医療センター」でボランティア医師として活動している産婦人科の林です。

私が所属する「周産期事業部」では分娩や婦人科疾患の治療のほか、定期的な妊婦健診や乳幼児健診など幅広く活動しています。
そんななか、今回新たに「性教育」の取り組みを行いましたので、その様子をお伝えします!

孤児院からの依頼

現在、ジャパンハートこども医療センターの周産期事業部は日本人の産婦人科医2人(もう1人の森川医師は約2か月おきに日本とカンボジアを行き来しています)と助産師6人(カンボジア人4人、日本人2人)の体制で活動しています。

普段は基本的にジャパンハートが運営する「ジャパンハートこども医療センター」で医療活動を行っていますが、今回、病院からは離れた地域にある孤児院からご依頼をいただき1泊2日の出張に出ることになりました。

声をかけてくださったのは、カンボジア西部・バッタンバン州にある「Hope of Children(HOC)」という孤児院で働く岩田亮子さん。
この施設は90年代はじめにカンボジア人僧侶によって設立され、家庭内暴力やエイズの影響を受けた子どもや貧困で教育を受けられない子どもを各地から受け入れています。

現在は30人ほどが生活していて、特に中高生くらいの年齢の子どもが多いそうです。
しかし、施設がある村には医療機関がなく、学校でも十分な性教育は受けられません。
そこで、同じカンボジアで活動するジャパンハートに連絡をくださったということでした。

乗り合いバンで片道4時間

岩田さんからの最初の問い合わせは「クメール語で書かれた性教育の教材はないか」という内容でした。
ただ、私自身もカンボジアでの性教育の必要性を感じていたこともあり、お話をいただいた時、せっかくの機会なのでぜひ子どもたちに直接会って話したいと思いました。

そして決まった1泊2日のバッタンバン出張。
カンボジア人助産師たちの関心も高く、話す内容を一緒に決めたり、資料を翻訳してくれたりと、準備段階から積極的に手伝ってくれました。

現地にも助産師の1人、ボタイさんが同行してくれました。
病院があるカンダール州ポンネルー地区からバッタンバン州までは、乗り合いバンで片道4時間。
出発前は少し不安でしたが、ボタイさんがいてくれたおかげでトラブルなく到着することが出来ました。

子どもたちから質問殺到!

「Hope of Children」に到着すると、岩田さんとスタッフの皆さん、そして子どもたちが迎えてくれました。
本来であれば全員に話をしたかったのですが、今回はひとまず中学生と高校生の年齢の女の子だけを対象に講義をすることになりました。

男女の体の仕組み、生理、性感染症、妊娠や避妊について・・・。
講義ではまず、事前に準備してきたスライドを見せながら助産師のボタイさんがクメール語で説明してくれました。

インターネット上に誤った情報や刺激の強い画像や動画があふれる今の時代。「正しい知識を持って、自分の体を守ってほしい」という私たちの思いが伝わったのか、最初は少し照れくさそうにしていた子どもたちも真剣に耳を傾けてくれました。

少しずつ質問も出はじめ、「例えばこんなケースでは…」とか「どこかで聞いたこの情報は本当?」など、ざっくばらんに疑問を口に出してくれるようになりました。
IUDやピルなどの避妊の方法や、性感染症の症状、緊急避妊薬(アフターピル)の効果についてなど、具体的な質問も多く、講義は2時間ほど続きました。

子どもたちが暮らす村には医療機関がなく、あるのは伝統的な民間療法を施す場所だけだそうです。
もしかすると医師や助産師と話をすること自体、初めてだったかもしれません。

正しい知識や少しの工夫で防げることはたくさんあるので、今回の講義を通して「性の話は恥ずかしいことではない」ということや、「医療の専門家に聞くことの大切さ」を伝えられていれば嬉しいです。

「病院に行く」という選択肢がない

1泊2日の訪問中、孤児院からの提案で村の人たちを招いて話をする時間も設けました。

子供を産んだばかりだという若いお母さんから、高血圧や糖尿病に悩むシニア世代まで幅広い層が集まってくれて、こちらもざっくばらんに質問を受け付けました。

カンボジアでは都市部には多くの医療機関がありますが、地方に住む人たちや低所得層にとっては地理的にも経済的にもアクセスできる医療機関は限られています。
体調を崩した時や妊娠した時も、そもそも「病院に行く」という選択肢がない人も多いようで、村の人たちの話からは大抵の場合は自分たちの経験や民間療法を頼りに「何が体に良いか」判断していることが伝わってきました。

なかには「妊婦がお酒を飲むと赤ちゃんの肌ツヤが良くなる」など危険な内容もありましたが、医学的な根拠がないと端から否定するのではなく、生活環境や背景事情をきちんと理解した上で話をすることが大切だと感じました。
来てくださった皆さんも色々と話をしてくれて、次はジャパンハートの病院に行くと言ってくれた人もいました。

カンボジアで医療活動を行っていると、「病院が身近な場所ではない」という人がまだまだたくさんいると感じます。
少しの知識で防げること、早く見つけられれば助かるケースもたくさんあるので、今回の経験をもとに引き続き病院以外の場所でも医療の大切さを伝えていければと思います。

林 怜 産婦人科医(長期ボランティア医師)

山梨県出身。2023年4月からカンボジアで活動。
小さい頃から国際医療に憧れて医師を目指しました。ジャパンハートの産婦人科医として、安全な分娩と女性の健康を守りたいです。患者さんに寄り添った医療を心がけています。


▼プロジェクトの詳細はこちらから
カンボジア ジャパンハートこども医療センターでの医療活動

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