活動レポート

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【Voices of Japan Heart】Vol.5 ラタナ医師

up 2023.11.22

カンボジアにある「ジャパンハートこども医療センター」では、現在、総勢100人以上の日本人とカンボジア人のスタッフが勤務しています。
それぞれのスタッフがなぜジャパンハートで働くことになったのか、そして、日々どのような思いで勤務しているのか、1人ひとりの“声”をお伝えします。

カンボジア人のラタナ医師。成人の患者を中心にお産からがんまで幅広い手術に対応し、カンボジア人の若手スタッフをリードする存在です。
「貧しい人たちに寄り添いたい」と話すラタナ医師。これまでの経歴や思いを聞きました。

医師を目指したきっかけを教えてください

医師になるのは子どもの頃からの夢でした。
私はカンボジア南東部のプレイベン州という地域の出身です。9人兄弟の6番目で、とても貧しい家庭で育ちました。

生まれ育った村は都市部からとても離れていて、両親や兄弟が体調を崩しても病院に行くことすら出来ないような環境でした。
伝統的な民間療法で治療する場所しかなく、中にはそれで回復する人もいたのですが、逆に悪化する人もいました。
そういう状況をいつも見ていたので、いつか自分がこの状況を変えたい、医療者になって地域の人たちを助けたいと思っていました。

ジャパンハートの奨学金制度を使って大学に進んだと聞きました

ジャパンハートに出会わなければ、医師になる夢は叶えられなかったと思います。

家族は毎日の生活に精一杯で、大学進学など考えることすら出来ませんでした。その状況を変えてくれたのがジャパンハートの奨学金制度です。
(ジャパンハートはカンボジアで「夢の架け橋プロジェクト」という奨学金支援事業を実施して、医師や看護師を目指す高校生を対象に大学卒業までの資金援助を行っています)。

今は同僚として働いている同級生のポアン医師と2人で奨学金生に選ばれ、プノンペンの大学の医学部に進みました。
ジャパンハートは自分のように貧しい子どもにも夢を叶えるチャンスを与えてくれて、心から感謝しています。

成人を中心に診ていると思いますが、それはどうしてですか

ずっと外科医に憧れがありましたが、子どもの頃は医師という職業の人にほとんど会ったことがなかったので、とても遠い存在でした。
ジャパンハートの奨学金生になった後に最高顧問の吉岡医師に出会い、学生の頃は自分のなかで外科医といえば吉岡医師をイメージするようになりました。

なので、なんとなく将来は吉岡医師のように小児外科医になるのかなと思っていましたが、実際に働き始めてからは小児病棟ではなく一般病棟を中心に診ています。
「ジャパンハートこども医療センター」では小児がんの患者さんが注目されることが多いですが、外来も毎日実施していて、成人の患者さんも数多く訪れます。

一般病棟では小児がん以外の病気の子どもから高齢者まで幅広い患者さんを受け入れますが、私が働き始めた頃は一般病棟には常駐のカンボジア人医師がいなかったこともあり、「一般病棟に来る患者さんたちを支える存在になりたい」と思い、一般病棟での勤務を志願しました。

医師としてやりがいを感じるのはどんな時ですか

この病院に来る患者さんのほとんどは貧しい人たちです。
お金が無いからこれまで治療を諦めてきたという人、耐えられないほどに症状が悪化してようやく受診してきたという人も数多くいます。

私も都市部から離れた貧しい環境で育ったので、多くの患者さんにとって「病院までたどり着く」というのがいかに大変なことかよく理解しています。
初めて診るような症例でどう対応したら分からないケースや、設備の問題でここでは治療が難しいケースもあります。
ただ、どんなに難しい状況であっても、ここで出来る限りのことはしたいと思っています。

ジャパンハートでは成人の患者さんに対しても無償で手術を行っています。
そのことを患者さんに伝えると、「長い間、費用の問題で治療や手術を諦めてきた」と、繰り返し感謝の言葉を伝えられることがあります。医師として心を動かされる瞬間です。
手術だけでは命を救えないこともありますが、貧しい人たちに医療を届けるために医師になったので、ジャパンハートでの活動にやりがいを感じています。

どんな医師を目指していますか

長期ボランティアとして活動している松永医師のように、幅広い疾患に対応できる一般外科医を目指しています。
外科医は一人前になるまでにすごく時間がかかります。はじめは手術でも外来でも失敗してひどく落ち込むこともありました。
ただ、この病院には松永先生や産婦人科医の森川先生のように、手本になってくれて、迷った時には助けてくれる人たちがいます。
「失敗を恐れずにとにかく経験を積むように」と見守ってくれるので挑戦を続けることができ、少しずつ技術も自信もついてきたと感じています。

また、院長の神白先生は、いつも患者さんの目線に立って状況を見ています。
初めて診る症例など判断が難しい時は必ず神白先生に相談するのですが、患者さんにとってどうすることが1番良いか、いつも一緒に考えてくれます。
私も神白先生を見習って、患者さん1人ひとりに向き合うこと、病状だけでなく背景事情までよく聞いた上で判断するよう心がけています。

将来の目標を教えてください

もともと「自分が生まれ育った地域の人たちを助けたい」という思いで医師になったので、ここで経験を積んだ後、いずれは地元に戻って恩返ししたいと思っています。
ジャパンハートでの活動で培った技術や経験を地域の人たちに届けられるよう、一人前の医師になって帰りたいと思います。

ラタナ医師

カンボジア・プレイベン州出身。ジャパンハートの奨学金制度を利用して大学の医学部を出た後、2019年12月から「ジャパンハートこども医療センター」にて勤務している。


▼プロジェクトの詳細はこちらから
カンボジア ジャパンハートこども医療センターでの医療活動

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