活動レポート

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【Voices of Japan Heart】 Vol.4 ティラ栄養士

up 2023.10.25

栄養士のティラさん。栄養士という職業の資格自体がまだ存在しないカンボジアで、「医療現場の栄養管理を改善したい!」と医学部を出て医師免許を取得。さらにその後、外国の大学に進んで栄養士の資格を取ったという、熱意あふれるスタッフです。そんなティラさんの原動力は何なのか。これまでの経歴や思いを聞きました。

カンボジアで働くティラ栄養士

Q. これまでの経歴を教えてください

A.学生の頃は医師を目指していて、カンボジアの大学の医学部を卒業しました。ただ、医学生時代の経験などから、「医療と栄養」について学びたいと考えるようになり、医師としてではなく栄養士として医療に関わっています。

栄養と治療は密接に関わっているのに、カンボジアの大学の医学部ではそういった観点からの指導は受けられません。卒業後、そのまま医師として現場に出るのではなく、栄養の知識を身につけてから医療に関わりたいと思うようになったのがきっかけです。

カンボジア国内では、プノンペンにある国立公衆衛生研究所が唯一、栄養学を学ぶことが出来る教育機関です。ただ、カリキュラムの内容は公衆栄養学のみで、医療に関わる臨床栄養学は含まれていませんでした。

そこで、海外の大学も選択肢に入れるようになりました。当時はまだ1人で海外に行ったことすらありませんでしたが、どうしても臨床の現場で栄養について学びたかったので、自分でインターネットを使って色々と調べました。海外の大学といってもたくさん選択肢がありましたが、カンボジアと食生活や文化が違い過ぎる場所だとあまり参考にならないかなと思い、タイにあるマヒドン大学を選びました。そして栄養士の資格を取った後、ジャパンハートに就職しました。

カンボジアで働くティラ栄養士

Q. 「医療と栄養」について関心を持つようになったのはどうしてですか

A. 医学生時代、病院で臨床実習をしていた時に患者さんから食べ物について質問を受けることがあったのですが、聞かれても何も答えられずにショックを受けたことが大きなきっかけです。

また、個人的なことですが親戚が食事に関するトラブルを抱えて病院にかかり、付き添ったことがありました。そこは大きな病院だったのですが、食事について医師に尋ねても明確な答えはなく、違和感を覚えました。食べ物や栄養は治療の根幹を支える重要なものなのに、正しい栄養の知識を持った人が医療現場にいないように感じて、この状況を変えなければいけないと考えるようになりました。

Q. ジャパンハートで働くようになったのはどうしてですか

A. 大学を出た後、インターネットでカンボジアの病院での仕事を探していた時にジャパンハートのことを知りました。カンボジアで栄養士を雇っている病院はほとんどないので、ジャパンハートの募集を見た時は「これだ!」と思いました。子どもに関わる仕事をすること、チャリティー活動に関わることにも興味があったので、とてもやりがいを感じています。

カンボジアで働くティラ栄養士

Q. 毎朝、医師の回診に同行して患者さんや保護者と話をしている姿が印象的です。 栄養士として病院で勤務するにあたって、どんなことを意識していますか。

A. この病院の患者さんは幼い子どもが多いので、保護者の協力は不可欠です。栄養状況が悪ければ治療の効果が十分に得られないかもしれないこと、病気の治療だけでなく子どもの成長にとっても栄養が大事だということを、病院での生活を通して実感してもらいたいと思っています。

保護者と話をしていると、人によって栄養や食べ物についての知識に大きな差があることに気付かされます。「食べられれば何でも良い」と考えている人も少なくなく、不衛生な屋台で作られたご飯を小児がんの子どもに食べさせる親もいます。

私もカンボジアで生まれ育ったので、この国ではそもそも栄養について学ぶ機会がないこと、そして、何となく知ってはいても貧困で子どもの栄養にまで気を配れないという人も多いことを理解しています。毎日顔をあわせて話をしていると、保護者がだんだんと興味を持ってくれるのが嬉しいです。「いつでも連絡して」と伝えていて、退院した後にも食べ物や栄養について質問してくれる人もいます。

医師や看護師など他の職種とも「チーム」で働くことを意識しています。病院のスタッフ向けにも定期的にレクチャーを開いていて、多くの質問が出るので心強く感じています。

カンボジアで働くティラ栄養士

Q. 病院の外での活動にも力を入れていますね

A. 定期的に地域の学校や他の病院に出向いて、レクチャーを行っています。カンボジアの学校では健康診断が一般的ではないので、健康チェックも交えて栄養指導を行っています。最近、カンボジアの学校でも栄養教育をしようという動きが出てきて、新しく教科書も作成されました。子どもたちは楽しみながら学んでくれるので、子どもを通して親の世代、その周りの人たちへと正しい知識が広がっていけば良いなと思っています。

カンボジアで働くティラ栄養士

Q.これからの目標はありますか

A. カンボジアでは医療と栄養という2つを結び付けて考えること自体がまだ一般的ではありません。カンボジアの食文化を前提にした教材はほとんどなく、今も手探りの状態です。

「栄養から医療を支える」という考えをカンボジアの医療現場の常識にするために、他の病院との連携を深めること、そして私自身の経験やこの病院で実際にあったケースについて、多くの人に知ってもらうことが重要だと思っています。

小児がんの患者さんのなかには手を尽くしても亡くなってしまう子どももいますが、そうしたケースも含めて、私たちの試行錯誤の状況を広く知ってもらうことで、多くの人に興味をもってもらえればと思っています。

カンボジアで働くティラ栄養士ティラ栄養士

カンボジア南部・コンポンスプー州出身。大学の医学部を卒業して医師免許を取得した後、タイの大学で栄養学を学ぶ。栄養士の資格を取得した後、2021年から「ジャパンハートこども医療センター」で勤務。


▼プロジェクトの詳細はこちらから
医療支援 | カンボジア ジャパンハートこども医療センター 栄養管理部

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