活動レポート

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巡回診療の現場から チャムカルー病院外来診療編

up 2022.08.23

長期インターンの峯村です。
2022年5月末にチャムカルー病院で2日間にわたり実施した巡回診療活動に同行しました。
これまで様々な公立病院で実施してきた巡回診療活動ですが、今回のチャムカルー病院は初めての実施となります。
チャムカルー病院は日本政府からの援助により充実した手術設備や救急外来を有している一方で、手術ができる医師が現在いないという課題を抱えていました。そこで技術移転を目指し、今回はチャムカルー病院の看護師スタッフ2名を交えて外来診療を実施しました。

朝8時ごろ現地に到着すると、もうすでに患者さんが座って待っており、慌ただしく診察が始まりました。
ジャパンハートとしてチャムカルー病院では初めて活動を実施したにも関わらず、多くの方がジャパンハートの活動を知って訪ねてきてくれた様子でした。

途切れることなく訪れる、子どもから大人まで様々な患者さんたち。一人で来る人もいれば家族連れの患者さんもいます。傷の炎症や脂肪腫などの外科系から高血圧や胃炎など内科系まで疾患も悩みも様々です。
身なりから医療にアクセスすることが簡単ではないのではないかと思われる人々、何年も体の異常を放置していた人々。巡回診療でなければ当院の医療に出会うことはなかったような患者さんたちがいることを知りました。

また、待合中に楽しそうに歓談する患者さんの様子を見ていると、この地域における人々の繋がりや雰囲気がなんとなく見えてきます。
中でも、診察順がわかるように患者さんに番号札を配布していますが、診察の番が回ってきた番号をスタッフが読み上げると待合の患者さんが一斉に復唱しだす様子には気分が和みました。

初めて参加した巡回診療でしたが、現場の力を知った貴重な機会でした。

目の前の患者に対応するだけでなくチャムカルー病院のスタッフの指導にもあたる看護師スタッフ。そして人手が足らないところを見つけてサポートに奔走する事務スタッフ。

特にドライバーのソクラットは早朝から2時間以上も運転をこなしてきたにも関わらず、その後も休む間もなく働いており、そのバイタリティに驚くばかりでした。
バイタルチェックの手伝いからカルテの転記などの事務作業まで、できることをすかさず見つけて動く姿を見て、私もつられて体が動きました。

順番待ちの患者さんを誘導したり、バイタルチェックを手伝ったりと、ひたすら取り組む中で感じたのは、カンボジア人スタッフと日本人スタッフが言葉の壁を越えて医療を届けるチーム力でした。お互いに声を掛け合い、要望や困ったことがあればすぐに誰かが動きだして解決されていく様子。
そして、リーダーのマイがスタッフ一人ひとりにも丁寧に気を配りながら全体を統括し、業務が滞りなく業務が進んでいきます。
普段の私の業務は非医療者としてオフィスでの仕事が中心ですが、医療者を支えている仕事のはずなのに今まで医療者のことが見えていなかったと痛感しました。

医療スタッフたちの連携する力を知った一方で、私自身が他のスタッフと連携がとれなくて後悔したことがありました。
診察を待っている患者さんの中に口唇口蓋裂の子がいました。1歳くらいでしょうか。お母さんとお姉ちゃん2人と一緒に病院へ来ていましたが、医師の診察を受けたのは一番上のお姉ちゃんだけでした。
お母さんは気を遣ってなのか、二番目の子と口唇口蓋裂の末っ子を、診察を待っている他の患者さんに預けて診察に入ってしまったのでした。
このままだと末っ子は医師の目にふれることはありません。

「この子も一緒に入らなくていいの?」

カンボジア人スタッフに頼んでお母さんに声をかけてもらおうとしたけれど、ちょうど翌月の手術活動に向けた打ち合わせ中で人が足りず、どのスタッフも目の前の患者さん対応に追われているようでした。
どうしよう…。

もたもたしている間にお母さんとお姉ちゃんの診察が終わって戻ってききてしまいました。薬局ブースで薬を受けとりその家族は帰っていきました。
薬を渡す際にお母さんと何かを話し込んでいた看護師のチアに「お母さんにどんなアドバイスをしたの?」と聞いてみると、「他国の医療NGOがこの地域に診察に来ることもある」とアドバイスしたとのこと。

チアのその言葉を聞いても、もやもやとした気持ちは晴れませんでした。
お母さんが診察室に入ったときに、「一緒に行って」とただその一言を伝えられればよかったのに、あの瞬間、末っ子ちゃんが病室に入らなかったことを知っていたのは私だけでした。
何もできなかったのは、クメール語が話せないからではなく、「誰かがどうにかしてくれる」と思っていた、自分の中の甘さです。
無邪気に笑うあの子の笑顔がいつか失われてしまうのかもしれません。

非医療者だから見えること。
私だから感じたこと。
私が発揮できる価値をもってチームの一人となりたい。

鼻下まで唇は割けぽっかり穴の開いた口元。甲高い笑い声を上げながら走り回るあの子の満面の笑みが脳裏に浮かぶたびに、あの日の決意を思い出します。

巡回診療は医療に向きあうチームの一員であることを自覚させてくれた、そんな経験でした。

今回の外来診療では2日間で176名診察を行いました。19名が手術の対象の患者になり、翌月にチャムカルー病院で手術を実施します。

▼手術活動の様子は、「チャムカルー病院手術活動編」でご紹介します。
巡回診療の現場から チャムカルー病院手術活動編

長期学生インターン 峯村

▼プロジェクトの詳細はこちらから
医療支援| カンボジア 巡回診療・手術活動

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