活動レポート

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ミャンマーにおける非感染性疾患の現状について
up 2020.01.05

皆様、こんにちは。ジャパンハートの長期ボランティア医師の大江です。
今年3-4月に行ったクラウドファンディングで購入したBLS人形とAEDを使って、院内・院外でBLS講習会を行っています。

ミャンマーにおける非感染性疾患の現状について

先日、マンダレーにあるマンダレーブリューアリーでBLS講習を行った際、先方より心肺停止に繋がる生活習慣病についてレクチャーをして欲しいという依頼がありました。

実は、ミャンマーに来て驚いたのが、このいわゆる生活習慣病の多さです。
肥満・たばこ・アルコール・運動不足・食生活などが糖尿病・心疾患・がん・慢性肺疾患を引き起こすことになります。こうした人から人に感染しない慢性疾患で、しかしながら強い障害を伴うため日常生活を著しく損ない適切な治療を受けないと多くの場合死に至る疾患を非感染性疾患(Noncommunicable disease:NCD)と呼びます。

NCDは世界の重大な健康問題で、今なお増え続けており、実は今では高所得国だけではなく、低・中所得国においてもその疾患負担はすでに感染症を上回っています。感染症の負荷がNCDを上回っているのは今ではサハラ以南アフリカだけです。NCDは高所得国の問題で、低所得国では大した問題でないといまだに思い込んでいる人が少なくありませんが、それはもはや事実ではありません。(『グローバルヘルス』2017木原)

では、ミャンマーでNCDはどのくらい広がっているのでしょうか?

ミャンマーにおける非感染性疾患の現状について

2014年9〜12月にミャンマー全土の52の場所で行われたNCDのリスク調査を見てみましょう。対象は25-64歳の8757名で、生活習慣(たばこ・アルコール・運動習慣・果物や野菜の摂取)・肥満・高血圧・糖尿病・脂質異常症に関して調べました。
https://www.medbox.org/myanmar/report-on-national-survey-of-diabetes-mellitus-and-risk-factors-for-non-communicable-diseases-ncds-in-myanmar/preview?q=

以下が、そのいくつかの結果とワチェでの実感です。

①たばこ、もしくは噛みタバコ(キンマ)
喫煙者は全体の26.1%、男性は43.8%で女性は8.4%です。喫煙者の内、およそ80%が毎日喫煙をしています。ミャンマーでは、キンマと呼ばれる噛みたばこが広く普及しており、彼らが道路に赤く染まった唾液を吐き出している様子をよく見かけます。ここワチェでも多くの若い男性が愛用しており、村にはキンマを作って売っているお店もたくさんあります。

ヤンゴンでの調査では、使用している人々のおよそ80%はキンマが口腔癌や咽頭癌のリスクになることを理解しているそうです(Roger L.Papke2019)。
「キンマはやめたほうがいいです、なぜならば〜」という介入を今後外来でやろうと考えていますが、健康第一主義と文化尊重の狭間で悩ましいところでもあります。

ミャンマーにおける非感染性疾患の現状について

②アルコール
これまで飲酒したことがない男性は41.9%で、女性は95.8%でした。過去30日以内に飲酒したのは男性38.1%で、女性は1.5%でした。
ワチェ村にはビールを飲める場所もありますが、ワチェ慈善病院は僧院が運営している病院であるため私たちがワチェで飲酒をすることはまずありません。(特別なイベントの後で少し頂くだけです^^。)

ミャンマーにおける非感染性疾患の現状について

③肥満
平均BMIは、男性21.5(21.2-21.8)で女性23.2(22.8-23.5)でした。BMI25以上の割合は、男性14.1%・女性30.8%でした。BMI30以上は、男性2.6%・女性8.4%でした。
ミャンマーでは、「肥っていることは豊かである」と考えられており、日本人がもっと痩せたいと言ったり、体重計の数値を隠そうとしたりするのをとても不思議がります。このボディーイメージの文化的違いが肥満の一因になっているかもしれません。
他には、ミャンマー料理は「辛い(サッテー)」「油が多い(スィーミャーデー)」が特徴です。油を多く使うことでおもてなしを示します。これもまた肥満の一因になっているかもしれません。

ミャンマーにおける非感染性疾患の現状について

ミャンマーには「健康志向」「健康診断」「がん検診」「一次予防」という概念がまだまだ広がっていないため、多くの村人は、食べたいものを食べ、飲みたいものを飲み、運動せず、喫煙して、その結果として上に述べたような病気になってしまいます。

貧しくて働いて働いて、健康について考える時間も機会もなかった、という人もいたでしょう。ワチェから少しずついい方向へ介入できればと思います。

ミャンマー 長期ボランティア医師 大江将史

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