2025年8月19日から22日にかけて、最高顧問である吉岡秀人がカンボジアに渡航し、集中的な手術活動を実施しました。
今回の手術では小児がん1件を含む合計28件の手術を行いました。
「ミッション」とは、短期間で集中的に行われる手術活動を指します。吉岡秀人は月に1度のペースでカンボジアを訪れ、「吉岡ミッション」を実施しています。
このミッションでは大人から子どもまで幅広い患者さんが手術を受けています。その誰もが病気と向き合い、懸命に治療を続けています。
本レポートでは先月の吉岡ミッションで手術を受け、現在も治療を続けている7歳の女の子をご紹介します。
涙のあとに咲く笑顔ーラチャナちゃんがくれる光
7歳の女の子、ラチャナちゃん。
2024年10月、断続的な腹痛の症状が見られたため、チャリティ病院を受診しました。そこで腫瘤が疑われ、2025年3月にジャパンハートを紹介されました。
診断は右仙骨横紋筋肉腫。骨盤部に発生するこの腫瘍は神経や臓器への影響が大きく、非常に慎重な治療が必要とされます。
初診時のCTおよび生検の結果を踏まえ、12サイクルの抗がん剤治療を開始しました。副作用による辛さもありましたが、治療を重ねるごとに腫瘍は7cmから5×9mmにまで縮小。
そして先月の吉岡ミッションで手術を受けました。
手術日の朝、そして病棟での素顔
手術の日、ラチャナちゃんはいつもより静かでした。
手術室へ向かう前には緊張した表情を見せ、着替えのときには泣き出してしまう場面もありました。
けれども、不安を我慢せずに言葉や涙で表現できることこそ、彼女の持つ強さでもあります。
普段のラチャナちゃんは、元気いっぱいの女の子です。
病棟のあちこちで友だちにちょっかいを出しては笑いながら逃げ、誰かをくすぐって大笑いさせる。とにかくみんなと関わっていくのが彼女のスタイルです。
カメラを向けられると、すぐに可愛いポーズを決めて笑顔を見せてくれます。
撮影がひと段落すると「今度は私が!」とカメラを手に取り、大きなカメラを抱えて真剣な表情でシャッターを押す姿も印象的でした。
もちろん、治療中は苦しい時間もあります。
点滴でベッドに横たわり、静かに目を閉じることも。けれど友だちがそばに来ると少しずつ表情がやわらぎます。
ある日、ダラちゃんがミサンガを編んでくれたとき、ラチャナちゃんは糸を握りしめて完成を待ち、できあがった瞬間に「わあ!」と笑顔を見せました。
泣くときもあるけれど、また笑う。その切り替えができることこそ、彼女の強さだと感じます。
変化を見守りながら伝えてくれたこと
ラチャナちゃんのお母さんは、娘の様子についてこう語ってくださいました。
ラチャナは本当に元気な子です。
ただ、家にいるときと比べると、お腹の痛みがある分、少し大変そうなときもあります。
入院したばかりの頃は、場所にも人にも慣れていなくて、不安もあったし、今よりも静かでしゃべることも少なかったです。
でも、だんだん慣れてきて、今では楽しそうに過ごしています。
私にとってジャパンハートは安心そのものです。
先生たちは温かい心で治療をしてくれて、ここに来られたことに本当に感謝しています。
自分の子は治療を受けることができていますが、まだカンボジアには小児がんで苦しんでいる子どもたちがたくさんいます。
その子たちも助けられるように、これからも医療が広がっていってほしいです
話している間、お母さんはときどき涙ぐむこともありました。
それでも、目が合うと柔らかく微笑み、言葉を選びながら丁寧に思いを伝えてくれます。
強さと優しさが入り混じったその表情に、ラチャナちゃんを支え続けてきた日々が滲んでいました。
子どもたちに笑顔を届けるために
ラチャナちゃんの治療はこれからも続いていきます。
決して簡単な道のりではありませんが、不安なときには涙を流し、辛いときには気持ちを伝え、それでもまた笑顔を取り戻す。
その姿に前へ進む力を感じます。入院生活は子どもたちにとって大きな試練です。
それでも、その時間の中に笑顔や安心を見つけられるよう、私たちは寄り添い続けたいと考えています。
カンボジアには、いまも多くの小児がんの子どもたちが治療を必要としています。
10月末には新病院を開院し、より多くの子どもたちに医療を届けられるように。
そして、治療の日々が少しでも温かく、前向きなものとなるように、これからも力を尽くしてまいります。
長期学生インターン 笹木澪莉
▼プロジェクトの詳細はこちらから
カンボジア ジャパンハートこども医療センターでの医療活動