活動レポート

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「カンボジアは、何のために医師になったのかが分かる場所でした。」

up 2020.03.23

今回は、長期ボランティア医師として約8カ月間活動し、2020年3月に活動が終了した西津先生を紹介したいと思います。

西津先生は、「人の役に立つ仕事をしたい」と思い、医師の道を目指されたそうです。その後も、「どんな時も、自分や誰かの大切な人、困っている人を救うために」日本で初期研修修了後、3年間外科医として従事してこられました。
西津先生は、カンボジアでできる治療の最善を尽くすために、あらゆる手を尽くし、素早くかつ適切な治療の選択をされている印象がありました。
そんな先生が自分の価値観がカンボジアで覆されたこともあったそうです。そんなエピソードも踏まえ、西津先生がカンボジアで得たことは何か、また、今後目指す医師像に変化はあったのかを伺いました。

カンボジア 医療ボランティア

ジャパンハートに参加しようと思ったきっかけは、限られた物資の中での医療活動が、自分にとって大きな経験となると考えたからだそうです。医局を離れることでの不安もあったそうですが、日本でキャリアを積み上げていくこと以上に経験の幅を広げることに重きを置かれていました。

カンボジアに来てから、自分で診断を行う難しさ、責任の重大さを改めて痛感したそうです。日本では、疾病の原因究明のために、多くの種類の検査や多くのスタッフが関わります。しかし、カンボジアでは、まず問診、聴診、触診、エコーを時間をかけて行います。数多く存在する病名から、これらから最も可能性のあるものに絞ります。どうしても必要な時には検査を行います。時にはジャパンハートの病院で出来ない検査が必要なこともあり、その場合は、患者さんに費用の負担がかかってしまいます。1回の検査に20$も必要な検査もあり(カンボジア人の平均月収約182$で食費は1日当たり3$/人が必要となります)、かなりの負担となってしまうため、出来ることなら避けたいことです。また、自分では診られない、となると、患者は首都にある高額な医療費が必要となる病院への搬送や、治療の断念を迫られることになり、実際そんな患者さんは少なくありません。そうなると、必要なスキルは、自分自身の診断力だったと話されていました。それは検査結果を読み取る力ではなく、患者・家族と話し、患者の体に触れ、耳や目で聞き分けること、感覚を駆使し、知識を持った上で診断をする。それは、技術力、医学知識を含め、人間力の向上も大切だったと話されていました。

また自分の死生観も変化したそうです。日本に比べ、カンボジアでは人の死は身近にあることから(乳幼児(5歳未満)死亡率1000人中28人、平均余命69歳)、日本人とは死生観に異なりがあると思われていたそうです。しかし、病院で亡くなる方、末期を過ごされる方たちを囲む家族の様子が、とても賢明で愛に溢れている様子に感動し、自分が思っていたカンボジアの人々の死生観とのズレに恥ずかしさを覚えたそうです。その一方で、自分の行った医療の責任感の重圧さを改めて感じ、「どんな時も、自分や誰かの大切な人、困っている人を救うために」という目指すべき医師像に返るきっかけになったそうです。その思いは、カンボジアに来て、より一層強い思いに変わったそうです。

カンボジア 医療ボランティア

カンボジアで、様々な患者・家族の人生に関わる中で医師としての責任の重さ、自分の役割の大きさを再認識しながら、かつて自分が志した医師としての道をより一層深く突き詰める時間になったそうです。

そんな西津先生は、今後も「困っている人を救うために」をモットーに、どんな場所でも医師として患者を救うことができるように、帰国後も多くの経験を積まれるそうです。

カンボジアスタッフ、患者さんから多くの感謝をされ、西津先生は日本に帰国されました。
カンボジアは、西津先生の今後の医師としての活動をいつまでも応援しつつ、いつかカンボジアに帰って来られることを願っています。

カンボジア 医療ボランティア

ジャパンハートこども医療センターでは、カンボジアの人々のいのち、人生に向き合い続ける医師を募集しています。その経験はきっと、あなたの人生の大きな財産になると思います。

看護師長期研修生 54期 平位華子

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