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「夢を描き・育てる」子どもたちとスタッフの物語⑪ ~Dream Trainの現場から~

up 2023.12.27

いつも活動へのご支援をいただきありがとうございます。元インターンの永田です。
連載を続けてきました本シリーズも今回で最終回となります。
最後のインタビューは、Dream Trainでゼネラルマネージャーを務める、ミャッミャッカインさん(以下ミャッさん)にお話を伺いました。

自己紹介をお願いします。

Dream Trainでゼネラルマネージャーをしています。ミャッミャッカインと申します。

ミャッさんは、日本へ留学されていたご経験もあるとお伺いしましたが、その時のお話を含めて、Dream Trainでのお仕事を始められる前までのご経験を教えてください。

私はシャン州出身なのですが、教師だった母の影響もあり大学卒業後は、小・中・高等学校の教員をしていました。
数年教員を務めた後、当時の日本の文部省の留学プログラムで「教育研修留学生」として、日本に計4年間留学しました。

最初の半年は日本語学校に通いましたが、その後は鳴門教育大学で「カリキュラム改善」に関する研究を行うために、修士課程に在籍しました。
修士課程修了後、ミャンマーに戻り、日本での留学で学んだことを生かし、ミャンマー教育省のカリキュラム改革に関する部署で働き、教育改革に携わりました。

そして、JICAがミャンマーで実施していた「初等教育カリキュラム改訂プロジェクト」にも加わりました。
当時ミャンマーでは教育カリキュラムについての専門的な知識を持つミャンマー人は、私を含めて3人しかいませんでした。
日本での留学の経験を生かして、国の教育の未来のために働けた経験は非常に誇らしかったです。

豊富な経験をお持ちのミャッさんがDream Trainと巡り合ったきっかけはどのようなものだったのでしょうか。

知人からDream Trainの仕事の募集について聞いたのが最初のきっかけです。
学校教員をしていた頃は子どもたちと直接触れ合う機会があったとはいえ、ここ数年間はいわゆる現場からは少し離れていたので、関心はありましたが、Dream Trainで働く覚悟は最初はありませんでした。

実際に施設を訪ねて子どもたちの目を見たとき、「この施設や子どもたちには、まだ必要としていることがある」と感じ、それを自分が全て与えられるかどうかはわからないけれど、この子どもたちのために自分の手で何かすることが責任だと心に感じ、Dream Trainで働くことを決めました。

仕事内容について教えてください。

ゼネラルマネージャーの仕事はこの施設のあらゆる分野の改善と発展をマネージメントすることです。
例えば、子どもたちを一番近くでケアしてくれているケアギバーのスタッフたちと、課題を話し合って、解決方法を議論し、実践することも含みますし、Dream Trainで行われる授業などの教育面での方針や子どもたち一人一人の心身の成長のサポートも含みます。
ゼネラルマネージャーとして全体を見つつも、実際に子どもたちの目の前で仕事に当たるスタッフと協力して、施設全体の質の向上を図っています。

比較的長く働いているスタッフも多くいる中で、ゼネラルマネージャーとして統括をするのは難しいこともあったかと思いますが、大変だったことはありますか。

もちろん、たくさん大変なことはありました。どの組織でもそうだと思いますが、長く続いてきた状態を変えようとすると、少なからず反発がでます。
しかし、この施設の目的と、そしてこの施設の子どもたちのために改善が必要なので、やらないわけにはいきません。
既存のスタイルを頭ごなしに否定するのではなく、現状の課題と目標をしっかりとスタッフたちにも共有をすることで、理解を得られ、少しずつ改善を進めてこられていると思っています。

まだ1年半という短い期間ですので、多くのことを成し遂げられたとは思っていませんが、「子どもたち自身に、自分の目標や教育の目的を見出させること」や「子どもたちがより生き生きと笑顔で、自ら言葉を発するようになること」「衛生環境の改善」など少しずつ変化をもたらすことができたと思っています。

スタッフとのミーティングを行うミャッさん

以前のキャリアから一貫して、「教育」に携わっていますが、就職前にかねてより関心があったのでしょうか。

実は就職する前は英語が好きだったこともあって、ツアーガイドをやりたかったんです。
ただ、女性がツアーガイドするのは危ないという父の反対もあり、母を習って教員になる道を選びました。
最初はさほど教育に関心がなかったのですが、実際に教育現場に立ってみると、子どもたちに教えるということそのものが自分に癒しを与えてくれるように感じましたし、教育分野で働くことにやりがいを覚えるようになりました。

同じ教育分野ではありますが、Dream Trainと前職では性質が大きく異なると思います。それぞれどのようなやりがいを感じますか。

そうですね。前職はミャンマーの教育改革の初期段階に、自分の学んだことを生かして関われるということと、教育カリキュラムの改革という性質上、全国の子どもたちのためになっているという自信があり、それがやりがいの一つでした。

他方で、Dream Trainではやりがいという観点からは少し話がそれますが、前職ではどちらかといえば、自分の力を生かしたり、与えたりしていると思っていたのと逆で、この施設から学んだことや与えてもらったことが多いと感じます。

教員時代に国境の地域や開発の遅れている地域にいる子どもたちと接したことはあったとはいえ、正直にお話しすると、私はこの施設に来るまで、教育が行き届いていない子どもたちがどのような実態であるのかというのを詳細に知りませんでした。
この無知はミャンマー人として恥ずかしいことであったと思っています。

そして、その課題を自国で対処しきれないことも、同時に情けないことだと思っています。
このDream Trainで、実際に自分の目の前にいる教育機会に恵まれなかった子どもたちの未来を様々な観点から支えることのできる仕事は、一人の人としての学びと価値を高めてくれていると感じます。

Dream Trainで働く中で、大事にしていることは何ですか。

「子どもたちの生活、健康、及び教育の全てをよりよくなるようにする」ということです。
ここに来た子どもたちの人生の選択肢や人とのつながりが広がり、彼ら彼女らの人生ができるだけ良いものになるように、自分のできることをやりたいと思って仕事をしています。
そして、子どもたちにはDream Train、ひいてはミャンマーを代表するような立派な大人になって、今まで与えてもらった恩を何らかの形で返していける人になってほしいです。

ミャッさんは、子どもたちの”話したい気持ち”を引き出すのがとても上手です

Dream Trainの子どもたちを支援してくれている日本の里親さんとDream Trainの子どもたちに一言お願いします。

まず里親の皆様には、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。ミャンマーでは子ども一人の養育費を十分に賄うことができる人は少ないです。
日本という離れた場所から、一人の子の金銭的な支えだけではなく、精神的な支えにもなってくれていることに心から感謝しています。
子どもたちへは、上記の質問の答えと少し被りますが、教育を受けられるというこの機会をしっかりと生かし、自分の歩みたい人生を掴むことのできるように努力してほしいです。
また、Dream Train、ミャンマーを、胸を張って代表できるような、そして今は遠く離れている故郷の両親、日本の里親さんも誇りに思えるような大人に成長してほしいです。

教育分野での長いキャリアを持つミャッさんのインタビューでは、その一言一言から、ミャンマーの教育及び子どもたちの未来のために尽力したいという、静かながら強く明確な意思が伝わり、こちらが圧倒されるほどでした。
Dream Trainの子どもたちもミャッさんの大きな背中を見て、立派に成長していってほしいと思います。

さて、12回にわたるインタビューの連載をご覧いただきまして、誠にありがとうございました。
Dream Trainのことを行事の活動報告以外の形でも知っていただきたいと思って始めたインタビューの連載でしたが、子どもたちからもスタッフたちからもたくさんの生きた言葉を伝えていただき、日ごろは口に出さない心に秘めた熱い思いに触れ、私自身の今後の活力にもなりました。

難しい状況もある中で、それぞれの思いを胸に、夢を描く子どもたち、そして夢を育てるスタッフたちがいる、そんなDream Trainを今後も暖かく見守っていただけたら嬉しいです。

子どもたちの日々の様子をアップしています。ぜひご覧ください!

Dream Trainインスタグラム
https://www.instagram.com/dreamtrain_yangon/?hl=ja

Dream Train You-Tubeチャンネル
https://www.youtube.com/watch?v=PCVE0fBt5Ew&t=9s

▼プロジェクトの詳細はこちらから
Dream Train 子どもたちの夢や未来を育む養育施設

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