ジャパンハートカンボジアでの活動において、医療を届けていくことに加え、未来に立つ「医療者」を育てることも同じくらい重要な柱の一つです。
カンボジアでは医師や看護師になりたいと願っても、家庭の経済的事情によってその夢を諦めざるを得ない若者が少なくありません。
そうした状況を受け、ジャパンハートでは「自らの力で自らの国を立て直していく」という方針のもと、医療者を志す地方の高校生を対象に大学(医学部・看護学部)への進学から医師・看護師免許の取得までを支援する奨学金事業「夢の懸け橋プロジェクト」を実施しています。
そして2025年度も厳しい選考を経て、医療者になるための一歩を踏み出した学生たちがいます。
インターンとして日々活動していると、夢の懸け橋プロジェクトの卒業生が医療現場で活躍している姿を目にします。
患者に寄り添う看護師や後輩に丁寧に助言する医師。
そうした姿に触れる中で、この奨学金事業が単なる学費支援ではなく、人を育て、医療の未来へとつながっていく取り組みであることを実感しています。
奨学金事業における最終手続きのために行った家庭訪問は、未来の医療を担う一人ひとりの原点に触れる、貴重な機会となりました。

誰一人取り残さない医療を目指して
プレイベン州に暮らすヴィレアクくんは看護師を目指しています。
最終手続きを前に率直な思いを話してくれました。
「入学試験にはさまざまな問題があり、時間が足りなくなってしまうおそれもありました。
そのため、何度も何度も勉強を重ねてきました。
大変でしたが、その努力があったからこそ、ここまで来ることができたのだと思います。
そして、今日という日を迎えられたことがすごく嬉しいです。
どこにいても、患者さんや周りの人を支えることができる仕事だと思い、看護師を目指しました。
私は誰一人取り残すことなく、人を助けていきたいです。」

ヴィレアクくんは5人兄弟の末っ子です。
両親は「末っ子だから出ていってしまうのが寂しい」と話しながらも、どこか誇らしげな表情を浮かべていました。
父親は息子について、このように語ってくださいました。
「本当によく勉強していました。だからとても嬉しいです。
医療者として患者さんに正しい医療を届けられる看護師になってほしい。
ジャパンハートには本当に感謝しています。
息子が医療者になる日を楽しみにしています。」

医師を目指す覚悟
同じくプレイベン州出身のテアラさんは医師になるための一歩を踏み出しました。
テアラさんは強い覚悟を語ってくれました。
「試験では何度も勉強してきた内容が出たので、しっかり取り組むことができました。
これから始まる学生生活に期待と同時にドキドキしています。
どんな日々になるのか、まだ想像できなくて緊張もしています。
私は知識と技術を身につけ、どんな病気にも向き合える医師になりたいです。
誰一人取り残すことなく、患者さんに寄り添いながら治療を行いたいと思っています。
たとえ可能性が1%でもあるなら、決して諦めず、全力で治療に取り組みたいです。」

また、家族は「本当に嬉しいです。これから8年間、勉強や試験を頑張る彼女を応援しています」と語りました。
村長も「毎日、彼女が努力している姿を見てきました。将来、村の人のためにクリニックや病院を開いてくれたら嬉しいです」と期待を寄せています。

学びを支える、「地域の力」
今回の訪問を通して感じたのは奨学金事業が学生個人を支えるだけでなく、地域全体に「学びを応援する文化」を生み出しているということでした。
また、先輩奨学金生が後輩を支える関係も育まれており、その姿は医療者としての原点のように感じられました。
私自身も両親を亡くし、奨学金に支えられて育ってきた経験があります。
だからこそ、今回「支える側」としてこの場に立ち会えたことには特別な意味がありました。
医療は一朝一夕で築かれるものではありません。
今日の診察や手術の積み重ねと同じように、未来の医療者を一人ひとり育てていくことは長い時間をかけて命に寄り添う行為です。
誰かの「学びたい」という気持ちを支えることが、地域医療を静かに、しかし確実に変えていく力になります。
今回の奨学金生との契約は、その未来が動き出した瞬間でした。
長期学生インターン 伊藤大輝
▼プロジェクトの詳細はこちらから
カンボジア 夢の架け橋プロジェクト ~カンボジア奨学生支援~

