活動レポート

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「大火傷の少年、マウンソーナイン君との出会い」
up 2019.05.13

看護師 ボランティア 国際ボランティア

彼と出会ったのはミッション中の外来でした。
診察室の中が何やら騒がしく、女性が立ち上がり何やら医師に必死に訴えています。
その隣にちょこんと座っていたのが、マウンソーナインという13歳の男の子でした。

彼は、ひどい火傷を上半身に負っていました。
首と胸がくっつき、顔は下を向いたまま。
両腕は体幹にくっつき、腕を自由に上げられない状態でした。
どうしてこんな火傷を負ってしまったのか、叔母の言葉を聞いて私達は言葉を失いました。

「半年前、母親が薬物中毒者にガソリンをかけられて燃やされた。母を助けようとした彼にも、火が燃え移り火傷を負った。母親は彼の前で亡くなってしまった。」

父親は幼い頃に他界し、母と兄と3人で支えあって暮らしていたそうです。
事件によって母を失い、兄と2人になってしまった彼。
ところが、母の死を受け、悲しみに暮れた兄は酒を毎日大量に飲むようになりました。

信じられない事に
事件から3か月後、兄もこの世から旅立ってしまったのです。

13歳にして一人ぼっちになってしまった、彼。
その後母方の親戚に引き取られ、暮らしていたそうです。

まだまだ、父や母、家族に甘えたり
わがままを言って困らせてよい歳だろうに。

彼が背負わされた現実があまりに残酷で、胸が苦しくなり涙がでそうになりましたが
不思議なくらい明るく振舞っている少年の手前、ぐっとこらえました。

どんな表情で、どんな言葉をかけたらよいのか。
他に入院している家族を見て、彼はどう感じるだろう。
母親や兄を恋しく思うのだろうか。

彼の事を考えては、「彼の為に何ができるか」の答えにたどり着けない、もどかしさを感じていました。

手術の日。彼の叔父や叔母と共に祈るような気持ちで帰りを待っていました。

手術が終わった頃、手術室の中から凄まじい叫び声が聞こえてきました。
麻酔から覚める時、麻酔の副作用で悪夢を見てうなされる事があるのですが彼のソレは違いました。泣き叫んでいるのです。

本当なら、頑張ったねと抱きしめたいところですが
彼がベッドから落ちてしまわぬように、激しく暴れる身体を数人のスタッフで体を押さえました。

彼は今どんな悪夢をみているのだろう。
彼が「アメー!(お母さん!)」と叫んだのを聴いた時、涙をこらえる事ができませんでした。

吉岡先生が「泣かせてあげて。ひどい火傷を負った子は、みんなこんな風に目覚める。自分はこの先どうなってしまうんだろうっていう不安をため込んでいるから。それが一気に爆発するんだよ。」とおっしゃいました。

うまく言葉にできませんが、先生がどんな想いで患者と向き合っているのか
「心を救う医療」の一角を見た気がしました。

私には、メスを握って彼を治す事はできないけれど、
何としてもこの子は幸せにならなくてはいけない。
そのための行動を起こそう、と決意しました。

色々考えた結果、現在は彼が親戚をたらい回しになっている事、彼も働き手となっていたため2年間学校に通えていない事に介入してみる事にしました。

ミャンマー人看護師長のマツザ、マジマやテンゾーさんに通訳をしてもらって、本人や親族の希望、彼が住む地域の情報、収入の状況などの情報収集を行いました。

また、ドリームトレインで児童の受け入れをされてきた那須田さんにアドバイスをもらったり、背中を押してくれた先生方、一緒に彼について考えてくれたボランティアさん…いろんな方のお力をお借りしました。

ドリームトレインなら、彼が勉強したいと思うところまで支援してあげられる。
そうなったら、わたしが里親になって長期的に見守れる。
もし家に住みたいならば、金銭的に就学を援助してみてはどうか。

正直、彼が退院するまで不安でした。

「早くしないと、彼が私の手の届かないところにいってしまう。」
「どうにかして、これからの彼の人生を幸せにしないと!」

結果から先に述べると、私は何も変えてあげる事ができませんでした。

彼は言ったのです。「学校に行きたい。勉強もしたい。けれど、学校に行くのが怖い。親戚と離れたくない。」
叔母も「本人の思うようにさせたい。けれど、偏見や好奇の目からも守りたい。」

今から学校に通える環境を整えてあげる事は、将来やりたい事が出来たときに選択肢が広がる。
けれど、今の彼に必要だったのは、悲しみの中にいる事を理解し、彼が大切にしたい物を守り、寄り添うことだったのかもしれない。と思いました。

「私がしたことは、正しかったのだろうか。もっと違う方法で何かできたのではないか。」
そんな思いを抱えながら、退院していく彼を見送りました。

看護師 ボランティア 医療ボランティア

そんな私にボランティアさんの1人が
「自分を本気で心配して、幸せを願ってくれる人がいるという事を、彼は感じていると思います。それが一番の贈り物だったのではないか。」と声をかけてくれました。

当時は、その言葉を素直に受け取る事が出来なかったのですが
先日日本から、一通の手紙が届きました。

マウンソーナインに宛てた、ボランティアさんからの手紙です。
ミャンマー語で書かれている、その手紙を手にした時、心の底から嬉しかったんです。

これからも、目の前の患者さんと向き合い、いろんな人の力を借りながら
その人の幸せの為に、できる事は何か考えながら、行動していこう。と思いました。
また、支援の輪が広がるように、発信していこうと思います。

追記:マウンソーナインが4月末に2回目の手術をしに来ます。その時本人に手紙を渡させていただきます。ありがとうございます。

ミャンマー アドバンスドナース 工藤清佳

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