活動レポート

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死なせないために~カンボジアのお産事情からわかったこと~

up 2022.09.27

その昔、大名行列でお殿様の前を横断しても許されたのは今でいう助産師だけでした。それだけ命の誕生は全ての人にとって尊く貴重です。

私達ジャパンハートこども医療センターの助産師は、隣接するポンネルー病院で正常分娩に至らない場合やハイリスク妊婦のお産を受け入れていますが、ポンネルーはもちろん最近では地域のヘルスセンターにもお邪魔し一緒にお産介助を行うことがあります。
現地助産師に混じってのお産は日本とは異なる部分もあり、当初は戸惑いや不安を抱いていたのが本音です。

しかし、彼女達は限られた資源を補うように五感を駆使し言葉が上手く通じないのを承知で私に色々説明してくれるのです。
こういった現地のお産を学ぶうち、実は災害対応時のお産手技と似ている事に気づきました。
今でこそ急成長の最中ですがかつては知識人がほぼいない困難な時代を過ごしてきたこの国、僅かな物資により妥協した部分や人不足で誰かがやらざるを得なかった事がきっとあったと思います。

ある意味災害と同等の環境におかれた中で、数少ない学びの場から体得した技術を生かすにはかなりの経験と様々な体験をしてきたはずです。
このような背景を想像すると、彼女達の助産人生のほんの一部に関わっただけでお産技術を判断したり不安を感じた自分が恥ずかしくなりました。

当院と隣接するポンネルー病院にて

地域のヘルスセンターにて

ポンネルー病院のスタッフがカンボジアのガイドラインを見せながら教えてくれた

ある時は、当院でのお産にポンネルー助産師が参加する機会があり、その際お互いが考えるお産方法の相違に当院助産師と口論になりました。
私達は母子の負担を最小限にするためより安全なケアを提供する事が必要です。
ただ、知識や技術に関していえば学ぶ環境や場所によって異なる事もあり、正しさは時代によって変化します。
最も大切なのは母子の無事を願い、命を護るための責任と誇りを持ち続けることです。
時に荒々しい手技になることもありますが、それは何としても死なせたくないという想いがあるからだと感じています。
何より、どんなに意見が食い違っても赤ちゃんの心音、その心音が産声に変わる瞬間は誰もが言葉を発するのをやめ同じ気持ちで命の音色に耳を澄ましているのです。

それぞれの立場での違いを間違いにするのではなく、それを許容出来る範囲を見極め認め合いながら考えを融合できれば、どのような状況にも対応できる独創性と柔軟さ、本来あるべき協力体制の在り方を身につけられる気がします。
昔も今も世界中で助産師の役割は変わりません。一人の女性が心身共に健やかに生き、やがて次世代の命を育めるように切磋琢磨すること、また、時代や国に惑わされずに協働する意義についてジャパンハートの視点から今一度見つめることが試されています。

助産師 槇本

▼プロジェクトの詳細はこちらから
医療支援| カンボジア ジャパンハートこども医療センターでの医療活動

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