活動レポート
カンボジア
2026.05.26
日本では歯磨きは当たり前の習慣ですが、世界にはまだその習慣が十分に広がっていない地域もあります。カンボジアでも、歯磨きの習慣化や歯科医療へのアクセスには課題が残っています。口腔疾患は比較的軽く捉えられがちで、「痛くなったら受診し、その歯を抜けばよい」と考えられていることも少なくありません。
こうした背景のもと、ジャパンハートアジア小児医療センターでは、長期入院や治療・手術に伴い、口腔内の状態悪化や感染リスクが高まりやすいという課題がありました。そこで、小野薬品工業様のご支援を受け、2026年1月より口腔ケアプロジェクトを開始しました。
本プロジェクトは、2025年1月に第1回、4月に第2回を実施しました。ジャパンハートのミャンマー事業で「口唇裂・口蓋裂総合治療プロジェクト」に携わってきた口腔外科医・岸医師を中心に、カンボジア人と日本人のチームで取り組んでいます。
まず、子どもたちの歯や歯茎の状態を確認し、虫歯の有無や歯の生え変わり、口角炎やドライマウスの有無など、口腔内を総合的にチェックします。さらに、小児がん病棟の子どもたちには、細菌カウンターを用いて口腔内の細菌数も測定しています。
その後、歯の磨き残しを可視化し、子ども自身が自分の歯磨きの状態を確認できるようにしています。あわせて、小野薬品工業様の資料を活用した歯磨き指導を行い、正しいケア方法を伝えています。最後に、カレンダーとシールを使って記録をつけることで、日々の継続をサポートしています。

まだ2回目の実施ではありますが、すでに歯磨き習慣が身についてきている子どももおり、カレンダーがすべて埋まるほど継続できているケースも見られます。
一方で、習慣として定着するまでに時間がかかる子どももいます。それでも、1日2回の歯磨きを続けられるようになった子どもが増えており、全体として少しずつ変化が生まれています。
また、当院で口腔ケアのプロジェクトが行われるのが初めての分、スタッフにとっても、その意義の理解や主体的な関わりをより深めていくことが今後の課題です。子どもたちにとっても、口腔ケアを日常の習慣として根付かせることは簡単ではありません。今後も、無理なく続けられる仕組みづくりや、楽しみながら取り組める工夫が求められます。

本プロジェクトに中心的に関わっている三丸看護師は、次のように話します。
「口腔ケアに関する指導に対し、子どもたちは真剣に耳を傾け、積極的に取り組んでいます。ICUのような環境でも、『歯磨きを頑張っているよ』と自ら見せてくれる場面があり、その積み重ねが少しずつ力になっていることを実感しています。
こうした子どもたちのひたむきな姿は、私たち医療者にとって大きな励みであり、この取り組みを続けていく意味とやりがいを改めて感じさせてくれます。」
また、継続的に参加し、毎日3回歯磨きができるようになったリアクサちゃんも、自身の変化について次のように話してくれました。
「このプロジェクトに参加して、自分の歯の状態を見直す良いきっかけになりました。教えてもらう前は正しい磨き方が分からなかったけれど、今は理解して実践できています。毎日続けることで自分の健康につながると感じているので、これからも続けていきたいです。」

本プロジェクトに中心的に関わっている岸医師からも、本取り組みに対する想いについてコメントをいただきました。
「日本では小児がん患者に対する口腔ケアが周知されてきていますが、カンボジアではまだその重要性が認識されていないのが現状です。免疫力が低下している子どもたちにとって口腔ケアが感染症予防のためにいかに重要であるかを知ってもらえればという想いを込め活動しています。
スタッフへのレクチャーでは皆真剣に耳を傾けてくれ、参加できなかった人からも「私も参加したかった!次はオンラインでやってほしい」と言われ、その熱意に胸を打たれました。背伸びをしてようやく届くか届かないかの洗面台に向かって一生懸命歯磨きをしてくれている子供達を見かけると、なんとも言えない感情が湧き上がり、より一層真摯に向き合おうと思いました。
口腔ケアが定着するまではまだまだ時間がかかるかもしれませんが、1人でも多くの患者さんのお役に立てられればと願っています。」

本プロジェクトは、口腔内の健康を守るだけでなく、子どもたちが自分の体を大切にする気持ちを育てる機会にもなっています。
今後も現地スタッフと連携しながら取り組みを発展させ、子どもたちの生活の質の向上と、将来の健康につながる意識づくりへとつなげていきます。
▼プロジェクトの詳細はこちらから
https://www.japanheart.org/tag/cambodia/