令和6年能登半島地震の発災から2年を過ぎた現在も、災害支援・対策セクション(ER)ではサロン活動や訪問活動を継続しています。
Aさんにお会いしたのは、2024年11月。在宅酸素を使用しながらも生活は自立してお元気でしたが、疾患的に今後病状が進行していくことが予測されたため、地域の保健師さんにご連携の上、医師も含め定期的に訪問を続けていきました。

仮設住宅での訪問風景(※写っている方はAさんご本人ではありません)
その後、Aさんは呼吸状態が徐々に悪化して臥床時間が増えたため、保健師さんとご相談し作業療法士によるリハビリ訪問も併せて開始しました。
座位で行う下肢運動や呼吸苦を引き起こさないような動作指導などの関わりを続けていきました。
また介護負担増加を懸念し、仮設住宅の見守りを行っている連携団体に情報共有してAさんの状態や奥様の介護負担に悪化がないか、定期的な見守り支援を依頼しました。
その後も呼吸状態と体力の低下が進まれ介護負担が増加してきたため、保健師さんと連携し介護申請を実施、車椅子やシャワーチェアのレンタルが開始となりました。
食事時にむせ込まれるようになったため誤嚥予防のアドバイスを行ったり、ほぼ寝たきり状態となられたため室内の環境整備を行うと共に、ポータブルトイレや介護用ベッドなどの福祉用具の導入を提案しました。
しかし、2Kの仮設住宅内でご夫婦と息子さんと3人暮らしのためスペースが限られ、Aさんたちご夫婦は毎日コタツで寝ている状況で導入は困難でした。
広いスペースを確保するため、同仮設団地内で世帯内別居も検討されましたが家賃負担が倍になるため断念。
バリアフリー居室の空きがある別地域の仮設団地に引っ越す選択肢も提案されましたが、Aさんは「生まれてからずっとここで暮らしてきた。小さい時からの顔見知りもいるからここで暮らしたい」と仰り、引っ越しは希望されませんでした。
その旨を保健師さんや連携団体の方とも共有し、Aさんの思いを尊重して関わっていくよう方針を統一しました。

仮設住宅での訪問風景(※写っている方はAさんご本人ではありません)
2025年の冬を迎える頃には救急搬送や短期入院も見られるようになってきました。
ほぼ寝たきりで床ずれも見られてきたため、体位変換や肩呼吸で強ばってしまっている肩の筋肉をほぐすマッサージをアドバイスするなどの関りを続けました。
また食事動作で呼吸が苦しくなり、食事量が激減・体重減少が起こってきたため高カロリーゼリーなどの介護食を提案、導入してもらいました。
この頃には酸素流量も5Lを超え、自宅での入浴は困難になっていました。
保健師さんとはAさんの安楽とご家族の介護負担軽減のために、介護ベッドと訪問入浴を導入できたらと話していましたが、なかなかAさんの同意が得られない状況が続いていました。
しかし、根気強く訪問を続け、少しずつお話を重ねたり、訪問入浴の写真をみてもらったところ、「寝ながら入れるのか。ずっと風呂に入れてないし、それなら有難いからお願いしたい」と同意が得られました。
保健師さんにてベッドの導入も同意を得て、2025年の年末には介護ベッドと訪問入浴を利用されることになりました。

仮設住宅での訪問風景(※写っている方はAさんご本人ではありません)
年が明けてAさんの病状は急激に悪化、在宅酸素の機械2台を使用して酸素流量は10Lになっておられました。
起き上がることもできない状態でしたが、
「ベッドがこんなに楽だと思わなかった。年末に息が苦しくなって酸素を増やしたから、やっぱりベッドがあって良かった。」
「訪問入浴も寝ながらだから苦しくない。久しぶりにあったかい風呂に入れて本当にじんのびやわ~。(*)」と、Aさんはお顔をクシャっとされ良い笑顔でお話ししてくれました。
(*)じんのび:「ゆったり」「のんびり」という意味の石川県の方言
保健師さんをはじめ、他職種メンバーでAさんの思いを尊重し、安楽に過ごせる環境に整えることができて本当に良かったと感じました。
2週間後、Aさんは緊急入院され、間もなくご逝去されました。
先日、Aさんの奥様にご挨拶に伺いし、以下のお言葉をいただきました。
「お父さんはここが好きだったから。左官だったから仕事で金沢に出たこともあったけど、戻ってきて50年以上ずっとでここで暮らしてきたからね。田んぼや畑も回り近所の人たちと助け合ってやってきたからね。周りに知ってる人たちがいて安心だったんだと思う。」
ケアマネージャーさんからも「住み慣れた場所でご家族と生活を続けられて嬉しかったと思う。本当にありがとうございました」と感謝の言葉をいただきました。
Aさんが「ここで暮らしたい」とずっと仰っていたことが蘇り、その気持ちを尊重した関りができて本当に良かったと感じました。
地震が起きても故郷を愛する気持ちは変わりません。
不便や苦労があっても「ここで暮らしたい」という方々の思いに寄り添いながら、これからも私たちにできることを続けていきたいと思います。
災害支援・対策セクション(IER) 枡田 眞弓

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